異世界じゃんけん 1
「異世界じゃんけん!?」
「そう異世界じゃんけん。ルール説明してあげる」
僕らはカジノの入り口から少し離れた人通りの少ない路地に移ってフリルから説明を受ける。
「まずあっちの世界のじゃんけんはグー、チョキ、パーの三すくみルールっていうのは当然よね」
「はい」
「こっちの世界のじゃんけんは出せる手が5つあるの」
「5つ?」
僕がそう聞くとフリルは手のひらをこちらに向けた。
「うわっ!」
さっきのことから顔をとっさに腕で庇う。
「ビビるなよ、なんもしないから」
「いや、でも……」
そう言って彼女の指を見るとそれぞれの指の上に色の違う小さな球体が浮いていた。
親指から赤色、水色、緑色、茶色、白色の球体が浮いていた。
「これって……?」
「これが異世界じゃんけんで出せる手ね。
親指から、炎、水、風、土、光の魔法になってるわ」
「魔法ってこんな小さな球体に出来るだな」
「そうよ、まあ魔力0のあんたはできないけどね。
こっちの世界のこどもでも出来るのに」
彼女は鼻で僕を笑った。
イラッときたが我慢する。
「この5つの魔法って属性みたいなもん?」
「そうね。この5つの魔法は魔力さえあれば誰でも出せるわ。
これ以外の属性魔法もあるけど、まあ今は後回しで。
それでこの5つの魔法にもそれぞれじゃんけんと同じく勝ち負けがあるの」
「はい」
「まず、炎は水と土と風に弱い、水は風と光に弱い、風は土と光に弱い、土は光と水に弱い、光は炎に弱いって感じ。それ以外の組み合わせはあいこね」
「えっと、ってことは全部で15通り組み合わせがあって、
あいこが5通り、勝敗がつくのが10通りある感じか」
「へー、理解早いじゃん。そういうこと。
であともう一つルールがあって一回しかそれぞれの魔法は使用しちゃいけない」
「なるほどな。……うーん」
「なに?」
「いや、なんでもない」
「なら、うならないできもいから」
「……」
何かもう一つこのゲームの重要な点をこいつは説明してないな。
何かは分からないが……。
「ではそろそろ始めますか?」
「ああ、いいぜ」
こうして謎を抱えたまま、はげた男とリュウさんの異世界じゃんけんが始まった。
一回目。
「「じゃんけん!」」
「ほい」「……」
はげた男は光、リュウさんも光。
「あいこですね」
「あいこか」
はげた男は残念そうにする。
まあそうだよな。この勝負において光はほぼ最強。
これであいこになるのはいやな展開だ。
二回目。
「「じゃんけん!」」
「ほい」「……」
はげた男は水、そしてリュウさんは……火。
「よしっ!一勝目!」
「……」
リュウさんは口を手で抑える。
「はは、このじゃんけんなら運ゲーだし、俺にも勝ち目があるってもんだぜ!」
はげた男は得意げに笑う。
リュウさんは口を手で抑えたままだ。
「これって……」
「気づいた?」
フリルは不敵な笑みでこちらを向いた。
そうか、なるほど。気づくのに時間がかかったがそういうことか。
ならリュウさんはなんで光を最初にだしたんだ?
三回目
「「じゃんけん!」」
「ほい」「……」
はげた男は火。リュウさんは水。
「さあ、ここからだな!」
はげた男は勢いづいている。
四回目
「「じゃんけん」」
「ほい」「……」
はげた男は土、リュウさんは土を出していた。
「なんだ、今回は勝負が決まらないな」
はげた男はそう言った。
「そうですね。ではもう一度やりましょうか」
仕切り直しになる。
「これってリュウさん勝てたんじゃ?」
「そうね。あいつの性格の悪さが出なければ勝てたかもね」
「よし、二回目やるぞ!」
「分かりました」
そして2人の異世界じゃんけん2回戦目は始まった。
読んでいただきありがとうございます。ルールが分かりにくいなどありましたら感想にかいてくれるとありがたいです。