プロローグ
三色ルーレットで泣いている僕には向こうの世界での思い出が頭の中に流れていた。
僕の高校生活は酷いものだった。
友達はいない。そして自分が何かのめり込めるものも無い。
何よりいじめられていた。全く酷い高校生活だ。
そんな僕は、惹かれるかのようにアニメを見たりライトノベルを読むようになった。
アニメとライトノベルの世界の主人公はとてもかっこよくてそれが楽しそうでたまらなかったんだ。
だから、僕も異世界に転移したなら……。そう考えて眠るのが僕の日課になっていた。
「おい、バカ。今日も便所飯か?」
「ちょっとやめなよw。かわいそうじゃん」
「そうだよ、いじめみたいだろw」
クラスメイトから罵声を浴びせられる。
「ハハハ」
少し笑いながら僕は、教室から出ると、トイレに向かう。
教室に居場所はなかった。
トイレで弁当を食べる。
「またいるわ、便所マン」
「大便詰まって流れなくなってるんじゃね?」
「じゃあ、水がいるよな?」
上から水が降ってくる。
弁当と制服がビショビショに濡れた。
「流れたんじゃね?」
「いやー人助けって気分いいわー」
外で男子生徒が騒いでいる。
髪から水が滴り落ちる。
「おい!なんか反応しろよ!」
トイレの扉を蹴られる。
「……」
「おもんな。いこうぜ」
「そうだな」
彼らがいなくなる。
僕は、濡れたご飯を口に入れる。
「ゴホッ。うっ」
入れた物は喉を通らず、口から吐かれた。
「……、なんで、僕だけ」
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こんないじめが始まったのはあのテストの後からだった。
「今回のテストは平均点がすごく低かったぞ」
先生がそう言う。クラスメイト達は興味なさそうにその言葉を聞き流す。
「でもな、一人100点のやつがいた」
「えっ!」
「絶対、三村じゃん」
「俺じゃないと思うけどなー」
いけ好かない返事を返す彼は、三村 勇気。
頭が良くて、顔もイケメン。それでいてスポーツもできる。
僕とは全く別の存在の人間だった。
「三村くんだよ、絶対」
「イケメンで頭いいって、やばすぎ!」
先ほどまで興味なさそうだったクラスメイト達は急な盛り上がりを見せていた。
「じゃあ100点の奴から返すぞー。
えーと、”笹路 港”!」
「えっ?」「誰?」
クラスメイトがざわざわしだす。
「笹路?早く取りにこい」
先生にせかされて立ち上がる。
クラスメイトの視線が冷たい。
僕は、テストを受け取る。
「いやぁ、すごいな。2位とは30点も離れてるぞ」
「はい。まあ」
てきとうな返事を返す。
「っち」
誰かの舌打ちが聞こえた。
「誰だよあいつ」
「空気読めよまじで」
小さな陰口が聞こえた。
この日からだった。いじめが始まったのは。
三村を中心にした男子達から嫌がらせを受けるようになった。
女子からもキモイ奴をみる目で見られた。
それから僕は、テストで力を抜くようになった。
赤点になるよりも、今のいじめが止まること方が重要だった。
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しかし、いじめが終わることはなかった。
もう死んでしまおうか。ある日、そう思いながら授業中窓を見ていた。
そんな時だった。あの光が僕らを包んだのは……。
その時、何かが変わる気がしたんだ。
読んでいただきありがとうございます。感想お待ちしております。