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宿屋の部屋でミナトの帰りを二人は待っていた。
「……遅いわね」
「……」
「なんか、あったとか……」
「……」
「……。あんた、なんか喋ったら?」
「痛みがまだある。分かるだろ」
「あんた、嫌われてそう」
「そうだったかもな。今じゃ聞けないから分からないが」
「ミナトとはどういう関係だったの?」
「いじめる側といじめられる側」
「……最低ね」
「報いがあったんだ、いいだろ」
「許すかどうかはミナトが決めるんじゃないの?」
「どうかな。生きてるか分からないんだから」
「っ!あんた!」
フリルは手から水の魔法を出そうとする。
「辞めた方がいい。怪我するぞ」
「片足と片腕ないあんたに何が出来るの?」
「俺は外のモンスターを倒せる。意味が分かるだろ?実力が違う」
「……噓でしょ?逃げて来たんじゃないの?」
「身体強化魔法、神眼から教わった。他にも特殊魔法は使える。勝負になるか?」
「……」
フリルは手を降ろす。
「……賢明だな。お前も、あいつも」
「え?」
ガチャと音が鳴った。
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数十分前。
カウンターに座りラーメンを待つ。爪が剝がれた部分と、手に開いた穴を見る。
これだけで勝てたのだ。いい方だと言っていい。
「ほら、食べろよ」
「どうも」
「いただきます」は言わず目の前に出てきたラーメンを食べる。
「リュウは死んだんだよな?」
ユースケはそう言う。
「はい」
「それで、裏カジノに行く理由は?」
「時戻しの水晶……。それを手に入れろって」
「は?リュウが言ったのか?」
「言ったっていうか、書いてあったというか」
「そうか……」
ユースケは手を組んで考え出す。すると、冷蔵庫が開いてバルベルがやって来た。
「おい、指輪はいくついるんだ?」
そう言った彼女は指輪をいくつか持って来ていた。
「え?」
「仲間がいるんだろ?」
「3つ、です」
「そうか。ほら、やるよ」
「どうも」
無造作に投げられた3つの指輪を拾う。
「……はっ。さっきとはまるで違うな。一回の勝ちを味わい過ぎない方がいいぞ?」
「……敗者は黙ってた方がいいんじゃないですか?」
「っち。キモイな」
「あの、ユースケさん」
「なんだい?」
「リュウさんとはどういう関係なんですか?」
「……転移者仲間だよ。あいつの方が遅く来たんだが、世話になったな。この店も元々はバルベルが違法取引するだけの場だったんだが、それをあいつが俺の店にしやがった」
「……僕だけじゃなくてリュウさんにも負けてたんですね」
「気分わりぃ、あたしは戻るからな」
バルベルはそう言うと暗闇へと戻っていった。それを確認して、ユースケはゆっくりと話し出す。
「さっきの話」
「はい」
「時戻しの水晶だが……。それはこの国のおとぎ話に出てくる代物だ」
「おとぎ話?」
「ああ」
「どんな内容なんですか?」
「すまない。客が飲んで話してたくらいのやつだからそこまでは……。ただ」
「ただ?」
「そんなものは存在しない、はずだ」
「存在しない?」
「ああ。時間を戻すなんて代物はない。例え魔法であったとしても、だ」
「……そう、ですか」
時戻しの水晶は存在しない?
じゃあ、あいつは噓をついてるのか?
だとしても、今頼れるのはその水晶以外ない……。
「とりあえず、気をつけろ。その裏カジノってところも相当まずいからな」
「はい」
「困ったらここに来なよ。俺は力になれないかもだが、バルベルならどうにか力になるはずだ」
「……分かりました」
あんまり頼りにはしたくないんだが……。
まあいいか。
「じゃあ、失礼します」
「おう。また来な」
「はい」
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部屋の扉を開ける。
中にはこちらを見ている二人がいた。
「指輪は手に入ったんだな」
「……うん」
「あんた、その手どうしたのよ!」
「いや、まあ……」
事情を二人に僕は話し出す。ただ、時戻しの水晶がおとぎ話であるという話はしなかった。
「金棒って、私聞いたことないわね」
「そっか。じゃあ、リュウさんがフリルに出会う前ってことになるのかな?」
「たぶんそう。でもよく生きて帰ってこれたわね。力でどうにかされるかもしれなかったのに……」
「バルベルの優しさかな。たぶん」
「……心配はもういいだろ。それより、服を買いに行くべきだな」
「え?」
「神眼で得た情報通りなら裏カジノにはドレスコードがある。俺の持ってるゴールドは後200ゴールドだが、お前らは?」
「……」
その問いかけに僕とフリルは黙った。
「一文無し?噓だろ?」
「だって、無理やり追い出されたわけだし。それに持ち出しが許されたのもノートだけだったから」
「……はぁ。っち。とりあえず、ここから出るぞ」
三村の一言で僕らはその宿を後にした。
一難去ってまた一難……。それでも、前には進めている。
そんな僕らを、これから先に待ち受ける壁は嘲笑っていたのだろうか。




