三色ルーレット 2
「本番やりましょうよ!」
俺がそう言うとフリルは一度不敵な笑みを浮かべて
「ええ、そうですね」
と言った。
第一回転。
僕が賭けるのはもちろん水色と黄色だ。
だがいきなり五枚ずつ練習と同じように賭けるわけにはいかない。
とりあえず一枚ずつだな。
「よろしいですか?」
「ああ」
「では、回転スタート!」
ルーレットが竜巻のようにまわり始める。
「球を投入します」
フリルはまたスイッチを押す。
球が落ちる様子がモニターに映る。
そして見えなくなった。
「ストップ!」
大声で叫ぶ。また徐々に回転が遅くなる。
目で追える速度になるとまた球は一つのマスで止まっていた。
「当選は黄色となります!おめでとうございます!」
「やった!いきなり五倍!」
「それでは五枚のチップになります」
「ありがとうございます」
これで13枚。フリルはチップを渡すとルーレットに近づき球を透明なトングで回収した。
二回転目。
「あのこれって一枚も賭けないというのは…」
「それはなしとなっています」
「ですよね。ならここで」
黄色に一枚だけ置く。
「よろしいですか?では、回転スタート!」
ルーレットがまた回りだす。
スイッチを押して球が投下される。
球が落ちて見えなくなる。
「ストップ!」
またルーレットが遅くなる。
マスは…。
「ピンクになります。残念でした」
「まあ、三分の一だしな。」
彼女はまた透明なトングで球を回収した。
第二回転目と同じように次の回も賭ける。
第三回転目。
「ピンクになります。残念でした」
また同じように賭ける。
第四回転目。
「水色になります。残念でした」
そして、第五回転目。
ここだ。今俺が持っているのは10枚。
正直4回目で勝負すべきだったのだろうがひよってしまった。
だが、最強の戦法水色と黄色に賭ける作戦で行けば当たるはずだ。
俺は水色に一枚、黄色に一枚賭けた。
「よろしいですか?では、回転スタート!」
もうお馴染みとなった竜巻が起こる。
スイッチが押されて球が投下される。
大丈夫。三分の二で当たるんだ。それにピンクはもう二回出ている。
確率的に三回でるのは薄い。
「ストップ!」
徐々に回転が遅くなる。目で追える速度になった。
球があるマスは…。
あ、。
「ピンクになります。残念でした」
「くっそ」
「では、転生者のバングルをもらってもよろしいですか?」
「はい、こんなんなくてもあっても一緒ですよ」
フリルに転生者のバングルを渡す。
「…。バカだなお前」
「えっ?」
フリルの口調が汚くなる。
「このバングルの価値も知らないで追い出されたの?
可哀想に。ほらみて」
彼女は袖をめくる。そこには転生者のバングルがついていた。
「えっ?どういう、」
「可哀想だから教えてあげる。
私も元転生者だから。いい?女王様に勇者だのなんだの言われたかもしれないけど、あれは噓だから。お前らは使い捨ての兵として呼び出されたの」
「使い捨ての兵?」
「この国、ミカエル王国は魔王城に一番近い国なの。
だから魔族が止まらず押し寄せてくる。それもかなり強い奴らが」
「でも、水晶のやつではみんな強いって感じだったのに?」
「あれは魔力が100あれば割れる安物。
あれで自信を付けさせる。それで外に出た連中は魔族に速攻で殺される」
「殺されるなら、兵として意味ないんじゃ?」
「そう思うでしょ?だけど、転移者の中には1、2人かだけ本当に強い奴がいる。
そいつで魔王軍を壊滅させようって根端なの」
「なるほど、それでじゃあこのバングルはむしろいらないものなんじゃ?」
「バカね。いい?強い奴が1、2人でるって言ったでしょ?
あいつらの旅費はこの国の金で出されているの。
そして、その旅費を申請するのに必要なのが、このバングルってわけ」
「えっ、じゃあ僕は?」
「ザ・エンドね。あ、バカだから英語分からないか。
終わりだよ、終わり。」
「終わり?」
バングルがないとお金を申請出来ない。つまり僕にはお金がない。
ということは……飢え死?
「い、嫌だ!」
バングルを取り返えそうと彼女に近づく。
「おっと!」
フリルの目が赤くなる。
「もう一つ言い忘れてた。転移者は特殊技能を一つもってる場合がある。10人に一人の確率でね。
私はその一人。「束縛の魔眼」をもっている」
「体が、動かないっ」
「取り返すのは不可能だわ。諦めなさい」
「イカサマだ!こんなのおかしい!」
「はあ?自らギャンブルしたのにイカサマだなんて恥ずかしい。
お前に知識が!お前に運が!お前に知能が!なかっただけよ」
「ぐっ、うっ。ヒック」
涙が出てくる。こんな異世界転移知らない。
なんで俺がこんな目に合わなきゃいけないんだ!
異世界転移ってもっと…もっと…楽しいものだったじゃないか…。
「泣かないでもらえる、男なのに。
じゃあ一つだけ褒めてあげる。あの最初に書かせようとした契約書あったわよね。
あれ書いてたらあんたもっと辛いことになってたわ。
あれ、ここの地下で労働するための契約書なの。
あんたよりアホなやつはみんな契約書を書いて地下にいった。
ルーレットの回転あるでしょ?あれは地下の奴らの魔力で発動させてるの。
魔力ってのは男においてこの世界でゴールドの代わりになる唯一のものだからね。
お前が女なら体ってのもあったけど」
「ふー。ふー。」
鼻息が荒くなる。
「泣き方きもっ。首吊りロープ代くらいならあげるけど?」
「もういっ、もういっ」
何とか言葉を振り絞る。
「はあ?泣いてて何言ってるかわからないんだけど?」
「もう一回!もう一回、やらせろ!」
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