王の骸 2
第一ゲーム。
サイコロを右手でテーブルの下へと移動させ、面を選ぶ。
「決まったらサイコロを握ってテーブルに置きな。それで確定だ。変えようとしたらペナルティ……。分かるよな?」
「……」
ルールを聞いた限り同じ面は二回出せない。引き分けも勝利と考えて一番勝率が高いのはこっちは5になる。それは向こうも同じで、まあ5を出せば向こうは引き分けか一勝を得れる。そして、向こうはドクロの面で引き分けも入れて四通り、4の面は5通り勝ち筋がある。三回向こうに勝たれたら終わりだからこの内の一つは必ず潰さないとならない。僕にとっては4と5の面が切り札と言っても過言じゃないだろう。
「決まったか?」
「ああ」
まずは様子見。異世界じゃんけん同様こういうゲームは負け方も重要になる。であれば最初に出す面は一択だ。
ドンっと音を立ててテーブルに手を置く。女は僕に負けじと大きな音を立てて握った拳をテーブルに置いた。
「それではバルデル姉御と……」
「ミナト」
「ミナトのサイコロをオープンしてくだせぇ」
パッと手を開いて互いに面を見せる。僕は5、相手は……。
「ドクロ!?」
「おいおい。馬鹿正直な一手だな」
「なっ。いや、予想通りだ」
「噓つけ、馬鹿が」
「……」
まずい、まずい、まずい!!!最悪だ!切り札を最初に切って相手の力量を図るリュウさんのやり方をやってみたかったのに!いや、まあ、それだけじゃなくて勝率的に一番最初に出さないと腐るってのもあるが……。
「おい、やれ」
「えっ」
考え事をしていた合間にその準備は整っていた。
「ぐっあああああああああああああ!!!!!」
親指の爪を剝がされる。信じられない痛みが体を襲う。
「完全に取れてねぇじゃんかよ。仕方ねえな」
「ぐっ!いっったぁぁぁっぁあああああああああ!」
ぐりぐりと上向きに向いた爪をゆっくりと彼女は引っ張る。一思いにやってくれたらどれほどいいだろう。ほんの数秒のその拷問は永遠のように感じた。
「はぁ、はぁはぁ」
「さて、第二ゲームをしようか」
第二ゲーム。
5が無くなった今、ほぼ負けと言っても過言じゃない。このバルデルとかいう女が5、4と強い順に出してくれば、1で負けて4で引き分け、そこから読み合いに持っていけるが……。
「どうした?」
口元に手をやり彼女はこちらを見る。やっぱりどう考えても、そんな馬鹿には見えないよな。
「あたしは決まったが、お前は?」
「待ってくれ」
「嫌だね。10秒だな。決めな」
「っち」
勝ち確だからって余裕綽々すぎんだろ。
「10、9、8、7」
「おらよ!」
「それでは、第二ゲーム、両者オープンしてくだせぇ」
僕は4、バルデルは4。
「ひ、引き分け!?」
「……チャンスあげちゃった。ほら、あたし優しいから」
慢心し過ぎだろ!何だ?ふざけてるのか?
「では、第三ゲームに……」
「おい、まてまて。ルールだ。やれ」
「は?おいドローだろ?」
男たちが爪剥ぎの道具をもって近づいてくる。
「あのなぁ、あたしのさじ加減でいつだってルールは変えられるんだよ!今の勝敗からドローとあたしの勝ちの時は爪を剝ぐ。そうすることにした」
「いや、お前!い!うおおおおおあああああああああ!!!!」
人差し指の爪が剝がれる。ただ、少し上向きになっただけ。だが、それがまずい。
「おい!辞めろおい!」
「嫌だ。威勢のいいやつ嫌いだから!」
「ぐああああああああ!!!」
バルデルは楽しむように僕の爪をゆっくりと上向きにする。血がゆっくりと外へと出ていく。ガタガタと体を揺らすも釘で固定された腕のせいでその場を離れることが出来ない。あまりにも無様な僕を彼女は金色の歯をキラリと輝かせて笑っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ。っ!」
まだ痛む。指が、手の平が、じんわりと蝕む毒のようだ。
「第三ゲームだ」
第三ゲーム。
サイコロを膝元に移動させて面を選ぶ。
明らかに遊ばれている。いや、だとしても余裕過ぎるな。
やっぱり、イカサマがあるって考える方がいい。
リュウさんは言っていた。「負けから学ぶ」のは良くないと……。
最初から考えられる可能性をひねり出すべきだった。
ただ、異世界である以上通常通りの思考は捨てた方がいい。魔眼、魔法、道具……。なんでもありなんだから……。
「おい、決まったか?」
また、挑発……。口元を隠すのはこいつの癖なのか?
「……待って、ください」
「おっ。いいね。自分の身分がようやく分かったみたいだ」
「じゃあ」
「は?待つわけねぇだろ。馬鹿が」
「っっ!」
こいつ!絶対僕より辛い目に合わせてやる!
「3、2、」
「ほら!これでいいだろ!」
「では第三ゲームオープンしてくだせぇ」
互いに面を見せる。僕は3、相手は1。
「よ、よし!」
「ふっ。馬鹿だな。お前。考えろよ」
「……あっ」
しまった。まずい。
「そうだよ。王冠の勝率をお前は売ったんだ。それで」
「撲の残り手札は1、2、王冠。お前は」
「2、3、5。3と5。どっちから先に出しても勝ち確定ってわけだ」
「……」
いや、これ。痛みで思考が冷静じゃなかったから気付かなかったが
「第三ゲームまででほぼ勝敗が確実に決まるじゃねぇかよ!」




