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金棒

 宿屋の外に出る。外には水たまりが出来ていた。

「行こう」

三村の神眼から得た情報によれば、裏カジノに行くには会員用の指輪を手に入れる必要がある。そして、その指輪の居場所に関してリュウのノートからそう言ったものが集まりそうな場所があった。


「何か高価なものを手に入れたい場合、お金があまりなければ城の裏側にある中華の飲食店『金棒』に行ってみてください。それでメニューを頼む際に『特製ラーメン』を注文すると良いでしょう。場所が分からないということはありません。向こうの世界と似たような看板であり、日本語でそう書かれていますから」


城の裏側、こっちの中世っぽい建築に似合わない場所でかつ日本語の看板なら見つけるのは容易いはず。そうして、僕はその店を探すため町へと繰り出したのだった。


30分程経っただろうか。割と広い町をある程度歩き回って僕はその店を見つけた。

「ここか」

躊躇することなく店へと入る。もちろん、一文無しで。

「いらしゃい」

店に入ると中には太っているベビーフェイスの男がいた。

「えっと」

「ああ、席ならてきとうに座ってよ。まあカウンター席しかないけどさ」

「はい」

奥行きがあるように見えたからテーブル席もあると思ったんだが……。カウンターの席に座りメニューをみる。やっぱり読めない文字で書かれてるな。

「あ、申し訳ないね。こっちのメニューに見て」

「え、どうも」

「ごめんね、バングルに気づくの遅くなっちゃった」

優しそうなおじさんから日本語で書かれたメニューを貰う。この人も転移者ってことなのだろうか?

「えーと」

メニューをひたすらに読むが「ラーメン」という文字列はない。

「あれ?食べたいものない?」

「いや、その、ラーメン」

「ラーメン?ああ、作れるよ」

そう言うと男は後ろを向いてネギを切り出す。

「あ、あの、普通のじゃなくて」

そう言った瞬間、包丁の音が止む。静かな店内で

「……特製かい?」

と、先ほどまでとは違ったトーンの声で男はそう言った。

「は、はい」

「名前は?」

「ミナトです」

「ミナト。聞いたことないな。誰からそのことを?」

「リュウさんから」

「……そうかい。ミナトくん。厨房入ってきて」

「え、」

「いいから!来いって言ってんだよ!」

紛れもない怒号。逃げ出したくなる気持ちを抑えて厨房へと入る。

「ミナトちゃん、怪我無く帰れるとは思わない方がいいよ」

「どういう意味ですか?」

「何を欲しいか知らないけどね、君が相手するのは後先ない終わってる連中さ」

「……後先ない終わってる連中」

「怖気づいたなら帰った方がいい。最悪の場合、死ぬよ」

「……」

最初に誘われた場所が、あのカジノでなくここであったら逃げ出していただろうな。

「終わってるなら僕も負けてないですよ。魔力0で一文無しですから」

「……へー。リュウが見込んだだけあるね。入りな」

厨房の冷蔵庫を男は動かす。すると暗い部屋が見えた。中からこちらを見る人々は体のどこかが無くなっている。

「俺の名前はユースケ。出た時覚えてたら普通のラーメン出してやるよ」

「……」

ゴクッと唾を飲んで足を踏み入れた。後ろから僕を照らしていた光が徐々に少なくなっていく。やがて見える光は室内にある蠟燭だけになった。

3時くらいにもう一つ投稿します。

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