神眼
「……!」
起きた時に僕はベッドの上にいた。
「ノート!ノートは!」
手元にないそれを思い周りを見る。
「ここにある。何も書かれてないけどな……」
三村がそう言ってノートを左手で見せてくる。
「何も書いてない?そんな訳……」
立ち上がって、違和感を感じた。
「どうした?」
「……三村。どうやって僕をベッドに移動させたんだ?」
「まずはありがとうじゃねぇのかよ」
「答えろ」
「……っち、魔法だ」
「魔法?どんな魔法だ?だって三村もこっちに来て3日のはずだろ?」
「……『神眼』だ。俺は『神眼』の能力で3日生き抜いた。この腕はその代償なんだよ」
「どういうことだよ!」
ノートのこと、何も教えてくれそうにないことに無駄にキレてしまい大声を出す。辺りが一瞬静寂になった中で
「それ、本当なの?」
フリルが喋った。
「起きてたのか。ああ、本当だ」
「……あんたの神眼って代償を払って情報を得る能力じゃない?」
「そうだが……。なんだ?有名なやつなのか?」
「……」
フリルはおもむろにベッドから立ち上がると三村の方へと向かう。
「揃いも揃ってなんなんだ?」
三村の文言に応えることなく、フリルは胸ぐらを掴むと
「リュウを……、リュウを取り戻す方法を教えなさい!!!」
そう言った。昨日の死んだような彼女からは想像も出来ない声の大きさが出ていたと思う。それに対して三村は面倒くさそうな顔をしていた。
「いいか。神眼は代償がいる。それは俺の一部だ。誰だが知らないやつのために犠牲にするつもりはない。それに、俺が本心から望まない限り、神眼は能力を発揮しないからな」
「何よ……、それ」
説明を聞いてフリルはうなだれてしまう。
「……ノート返してくれ」
「ああ」
ノートを三村から受け取り、流し読みをする。確かに白紙だ。昨日の雨でインクが落ちたのか?いや、そもそも何でこのインクは書かれていたんだろうか?
「……フリル。このノート、見たことあるか?」
「……」
「ないか……。くそ。昨日は文字が書いてある気がしたんだが……。何か文字が現れる条件があるのか?」
ひたすらに考え込む。何故昨日は文字が書いてあると思ったんだろうか。
受け取った時はそう感じたわけじゃない。
何か、きっかけがあったんだ。
「ねぇ、それ、リュウが渡したんだよね?」
フリルが声を出す。
「え?うん」
「あんた、これに文字が浮き出るような感覚になったから書いてあるって思ったの?」
「そうだけど……」
「分かった。ならきっと、こうすればいい」
そう言うとフリルは水魔法を出してノートにかけた。
「ちょっ!何を!」
「ほら、文字が出た」
「え?」
ノートを見る。開かれたページには文字が浮き上がっている。
「手品みたいだな。リュウってやつはマジシャンかなんかか?」
「……」
三村の発言を無視して内容を目に通す。書いてあるのはこの世界に関してばっかりだが今はそれじゃない。僕らにこれを託したのは何か別の理由がある気がする。
ひたすらにページをめくってその何かを探す。
「あった」
最後のページ。そこには書かれていた。
「私が死んだ場合、時戻しの水晶を探してください」
「時戻しの水晶……」
その言葉を聞いた僕らは恐らくそれの意味を理解した。いや、理解というよりかは希望的観測の下でその水晶がどういうものかを捉えていたのだろう。
「三村って言ったっけ?これ、探せないの?」
「……手に入れたら、戻れるんだよな?」
「そうじゃなかったら名前になってないでしょ。そうに決まってる」
「……」
三村は戸惑いつつ、こちらを見て
「笹路、俺の足になれよ」
そう言った。直後に彼の白目が黒くなる。それに共鳴するように三村の左足も黒い靄に覆われた。
「ああああああああああああ!!」
苦しそうな悲鳴が部屋に響く。その悲鳴に心配の言葉をかける暇はなく、一瞬で、かれの左足は消え去った。
「あああああ!うぅぅぅ!」
バランスが取れないのだろう。床へと三村は崩れ落ちる。
「三村!大丈夫か?」
「……はぁ、はぁ、はぁ。裏……だ」
「え?」
「裏カジノだ。城の地下にある裏カジノ、そこに、ある」
「城の地下……」
神眼が示した先は、何の因果か僕らの始まりである城の地下だった。




