俺だけ無能!?
「あなた、本当に異世界転移者ですか?」
「はい。そうですけど、僕なんかやちゃいました?」
「”やちゃいました”どころではないです。
普通の異世界転移者はみんな魔力や武力を図るこの水晶に触れた場合、壊れるのが普通です。」
「で、僕の場合は…」
「割れるどころか水晶は残っています。
そして数値が0と書かれています」
「えっ、まあ、でもこれってなんか水晶の不具合とかそういうのじゃないんですか?」
「そうですね大抵の場合は、この後水晶がとんでもなく輝いて金色になったりするのですが…」
水晶を見つめる。水晶は輝くどころか、どんどん曇っていく。
「あれ?お、おかしいな?えーと、曇るのもなんかの能力ってことは…」
「ないです」
「ないですか?」
「ないです」
とてつもなく食い気味で回答が帰ってくる。
「僕ってどうなるんですか?」
「そうですね、ここを追い出されて野垂れ死ぬが可能性高いと思います」
「えっ。なんかお金とかっていうのは…」
「ないです」
「ないですか?」
「ないです」
その食い気味の返事と共に僕は城の外へと追い出される。
その様を高校のクラスメイト達は冷たい目で見ていた。
どうなってるんだ。異世界転移ってこんなのだったか?
自分の常識と違う世の中に驚きを隠しきれない。
なぜ、こんなことになったのか。それは少し前に戻る。
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高校。教室でつまらない授業を聞き流していた。
すると床からとんでもなく眩しい光が目に入った。
なんだ?と思った時には光はクラス全体を包んでいた。
そして、目が覚めると絨毯の敷かれた西洋風のお城の中のような場所にいた。
ような、ではなくお城だったわけだが…。
そして腕にはバングルのようなものが付けられていた。
「なんだこれ?」
「なにここ?」
「どうなってるの?」
クラスメイト達が驚きから声をだす。
「皆様、どうかこの突然の出来事を許してください。
あなた達は今異世界へと転移しました。
この世界では今新たな魔王の手によって支配されようとしています。
そこで皆様の力で魔王を倒して欲しいのです」
玉座に座った女性が僕たちにそう言った。
「その魔王ってやつを倒せば帰れるのか?」
一人のクラスメイトがそう言った。
「分かりません。ですが、過去の勇者たちは魔王を倒した後、自ら帰る方法を見つけて帰って行きました」
「それって自力で帰らなきゃいけないってこと?」
「そうなりますね。ですが、旅に関してのお金は私達が出すので快適な旅ができると思います」
「それって旅行みたいになるってことだよね」
「魔王を倒すのは男子に任せて私達観光しようよ!」
「魔王を倒すか、面白そう!」
クラスメイト達は盛り上がり出す。
「ですが!」
大きな声で盛り上がりが静かになる。
「その前に皆様の力を図ろうと思います。
私の前にきて水晶を触ってください。では、一番近くにいたあなたから」
僕のことを彼女は指さした。
「僕ですか?」
「はい。緑色の髪をしたあなたです。お願いします」
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そして、水晶を触ったらこれである。
バングルの説明も聞かされることなく僕は追い出されてしまった。
「噓だろ?なんで?」
あてもなくぶらぶらと城下町を歩きながらそんなことを呟く。
なにが悪かったのだろうか。というか、異世界転移ってこんな勝手に追い出される感じなのか。
意味わからん。
「そこの兄ちゃん」
僕なんかした?異世界になんかした?
異世界ってこんな冷たい奴だった?
「兄ちゃんってば、」
異世界のばか。異世界のあほ。異世界のおたんこなす。
「兄ちゃん!」
「えっ。はい」
「兄ちゃん転移者だろ」
「そうですけど」
「やっぱりな。転移者のバングルをつけてるからそうだと思ったんだよ」
はげた男は自分の手首を見せる。
はげた男の手首にはバングルはついていなかった。
「これって転移者のバングルっていうんですね。知らなかった」
「なんだい。女王様から説明受けてないのかい?」
「ええ。まあいろいろあって」
「そうかい。そんな転移者に耳より情報があるんだよ」
「なんですか?」
「あそこのでかい店見えるか?」
「ああ、なんかキラキラしてるところですか?」
「そう。あそこで転移者にだけ特別にお金を稼げるギャンブルがあるのよ」
「ギャンブル?」
「そう。ルーレットなんだけどな。転移者だけしかそのギャンブルに参加出来ないんだよ」
「いや、でも僕お金が…。」
「大丈夫、大丈夫。国からお金が貰えるから。
それにあそこのルーレットはすごい当たるんだよ」
「は、はあ」
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男につられるまま、カジノに入る。
カジノなんて来たことないんだが…大丈夫だろうか。
はげた男は受付に話しかける。
「こいつ、転移者の奴よ」
「転移者様ですか。かしこまりました。転移者様こちらに」
受付の人に案内される。
変な扉の前には転移者様専用と日本語で書かれていた。
日本人がいるのか?
扉が開かれる。眩しいっ。徐々に目を開く。
目が慣れる。前には大きなルーレットが置いてあった。
「こちらになります。これが当店の転移者様限定ギャンブル、
三色ルーレットとなります!」
「三色ルーレット!?」
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