『バケモノの子』
昔も昔、この世に 妖 や 魍魎がいた時代
稲荷山にバケモノ達の里があった。
そこに、1つのバケモノが生まれた。
他のバケモノと違い その身は、とても美しくあった。
真珠のような体毛、瞳は大きく七色、爪は金色、牙は黒曜石の輝き。
狐のように見えて、狐ではないバケモノだった。名を白珠とつけられた。
山で、他のバケモノ達と遊んでいると、白珠は兄弟に訪ねた。
「なぁ、あの、山から見える あの場所はなんだい?」
「あぁ、人間と言う、恐ろしいモノが住んでいる所だ。」
「あんなに、綺麗な場所に恐ろしいモノがいるのかい?」
「あぁ、決して近づいては ダメだよ。白珠は、美しく目立つから、余計に気をつけてなくてはならないよ。」
「う、うん。わかった。」
そうは、言われても まだ幼い白珠の好奇心は、怖いもの見たさで、京の町の近くまで来てしまった。
「うわ。なんて綺麗な所だろう。」
白珠に声をかけるモノがいた。人間だった。
「わぁ、なんて美しい生き物だろう。これ、迷子かい?」
白珠は、身構えをし、警戒をした。
「ご、ごめんなさい。」
人間は驚いた。
「あれ、この子、しゃべれるのかい? 仏様の所から来たんだね。おいで。」
やさしく、白珠を抱きかかえた。
「かわいいのぉ」人間は自分の住まいに白珠を連れていってしまった。
次の日のは、京の町中が白珠の話題で持ちきりだった。
その噂は御所まで届き、
武家の1人が白珠を捕まえた人間から、金で白珠を買ったのだった。
「おー、まことに美しい。人語を話せるとな?名をなんと申す。」
「……白珠」
「おー、よき名じゃ。」
「なぁ、オレをここから出してくれないか?」
白珠は、逃げれないよう囲いに入れられていた。
「んー、バケモノじゃからな。」
「オレは、この美しい町が気に入っている。大事にしてくれるなら襲ったりしないよ。」
「おー、そうか、そうか。町が気に入ってとな。そちの美しさに ぴったりの町よの。逃げぬか?」
「約束する。逃げない。」
白珠は囲いから出れた。背を伸ばして、辺りを見回した。
「ここも、美しい場所だな。気に入った。しばらくやっかいになる。」
「そうか、そうか。なにか食べたい物はあるか?」
「……肉だな。もう、ネズミやネコは食べたくない。」
「そうか、そうか。」
とても、とても高価なガラスの碗に入れられた肉を食べ始めた。
「うん。旨い。 なんの肉だ?」
「鴨じゃ。鴨」
「うん。もっと食べたい。」
「そうか。そうか。」
上質な肉を食べた白珠は、体が少し大きくなった。
白珠の抜け落ちた真珠色の体毛は貴族の着物などに含ませたり、研いだ爪は、金粉に、涙は香になったりした。
皆が寝静まり、丑三つ時辺りに、白珠の部屋に訪問するモノがくる。
「白珠、白珠。迎えに来たよ。帰ろう。」
「逃げよ。」
里のバケモノたちだった。
「また、来たのかい?」
「何度でもくるよ。」
「オレは、好きでここにいるの。帰らないよ。」
「白珠、帰ろう。」
「いやだよ。もう、ネズミや、木の実なんて食べていたくないよ。ここで、美味しいもの食べて、美しいモノをたくさん見るんだ。」
「白珠帰ろう。」
「しつこいな!」がぁぁぁぁ!!!起き上がり威嚇した、白珠は、里のバケモノたちよりも倍以上大きくなっていた。
颯爽と逃げる、バケモノたち。
「あはははは。もう来るなよ。」
「今日の肉は何?美味しいね。」
「牛、牛だよ。」
「もっと、牛食べたいな。」
しかし、しばらくすると、
「牛、飽きた。他の肉はないの?」
そして、
「この肉、美味しいね。何の肉?」
「馬だよ。馬。」
「もっと、馬食べたいな。」
「そっか、そっか。」
また、しばらくすると、
「馬、飽きた。他の肉ないの?」
武家の者たちは、困っていた。
「もう、与える肉はないのか?」
「鳥、猪、鹿、ましてや、牛や馬まで与えたんだぞ。これ以上は…」
「町の者に新たな肉を探させよう。白珠が食べる肉なら褒美をだすと。」
町の者は褒美欲しさに さまざまな肉を献上したが、どれも食べる事はなかった。
「ど、どうする。白珠が だんだんと小さくなってきてるではないか?真珠の糸は?金は?どうするのじゃ!」
町の者は肉を持って来なくなり白珠は、とうとう京に来た頃の大きさまで戻ってしまっていた。
「つまらなくなったな。帰ろうかな?」
そこへ、肉を持った者が現れた。
「さぁ、白珠、新しく見つけた極上の肉だよ。」
「本当に?」もう、白珠は信用していなかった。
ひと口、口に運んだ。
「なにこれ!美味しい、美味しい。もっと、もっと、頂戴。」
「よかった。白珠 いっぱいあるから、沢山お食べ。」
「うん。」
数日もたつと、白珠の体は、小さくなる前より大きくなっていた。
「美味しい、美味しい.。」
「沢山食べて、もっと大きくなりまさい。」
「美味しい、美味しい。これ何の肉?」
「おぉ、この肉か? 町の者が山で見つけてな。」
「どこの山?」
「おぉ、ここから東の お山、稲荷山じゃ。」
「稲荷山……う、うげぇぇぇぇぇ」白珠は、嘔吐した。
はぁ、はぁ、「よ、よくも。父様を、母様を、兄弟をオレに喰わせたな!!!!!」
「あ、あ、うわぁぁぁ」
白珠は、この世ではない恐ろしいバケモノに変化し、武家の者たちを殺していった。
『マダ、足リヌ。コノ怨ミ。我ガ血ト肉トナッタ 一族ヨ。コノ京ノ町ニ災イヲ起コソウゾ。』
白珠達が京の町から消えた その年734年、畿内七道地震が起こり、翌年、735年から京の町に疫病がはやり、町の3割りの人間が死んだ。
読んで頂き誠にありがとうございます。
今日のTwitterトレンド『バケモノの子』です。
いいんです。バケモノだから、最後理不尽なのですw
これから見るぞ~( *´艸`)
なので、今日はここまでw
それでは、またお会いいたしましょう(._.)ペコッ