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58.お邪魔します。

いつもありがとうございます!ブクマ、ポイントなどありがたく思ってます。まだまだ中盤なのであともう少しお付き合いください(✻´ν`✻)

 クーリニアの王都から馬車で三時間ほど揺られた先にあるアルプスの麓の小さな町ジット。その町のさらに外れの方にエルグラントの家(別荘?)はあった。


 町の中心を外れると、どこまでもどこまでも草原が広がる。背景に壮大なアルプス山脈が見える草原の中にぽつんと一軒だけエルグラントの家が建てられていた。家の目の前に小さな清流が流れている。山からの水で、そのまますくって飲めるとエルグラントは教えてくれた。

 イランニアで借りた家よりも小さかったけれど、二階建てで、外壁は白く、屋根は赤く塗られている。煙突もあるということは暖炉も作られているんだろう。なんだか絵本の中に出てくる家みたい。この家にあのいかにも男性!と言わんばかりの風貌のエルグラントが一人で住んでるんだと思ったらなんだかおもしろい。それくらいかわいい外観の家だった。


 馬車から降りて、そのお家を目の前に私はうきうきが隠せない。

「エルグラント!なんて素敵なお家なのかしら!本当にお邪魔してもいいの?」

「ああ、だが食い物も女性が必要な物も何もないぞ。あとで買い出しに行くか。町に馬も預けてあるから取りに行かないといけないしな」

「馬!?エルグラント、馬を飼ってるの?」

「あぁ、旅に出るには馬が必須だし、馬車より動きやすい。退団と同時に一匹貰い受けた。俺が交渉団に入った時からのパートナーだ。今年二十歳になる老馬だが、なかなかまだ動くんだよこれが」


「嘘でしょ!?シオン??!!」

 エルグラントの言葉にマリアが大きな声をあげた。目をキラキラさせている。

「あぁ、そうか。正直俺よりマリアに懐いてたもんなぁあいつ」

 エルグラントが笑う。

「あとで会ったら挨拶してやってくれ。町で女性用の乗馬服も買うか。帰りに乗ってやったらいい。シオンも喜ぶだろ」

「いいの??」

 マリアが目をキラキラさせている。そうよね、マリアは交渉団にいたのだもの。乗馬なんてお手の物よね。

「後日でいいので、俺も乗せてください!」

 と、いきなりレイも声を上げた。驚いてレイを見ると、ものすごく目をキラキラさせている。

「馬に乗るのってそんなに楽しいの?レイもマリアも目をキラキラさせるほど…?」

 私が聞くと、三人とも頷く。

「爽快だよな?」

「ええ、とにかく最高よね。疾走感が堪らないんです」

「見える景色が違いますもんね」

 そ、そんなに…?羨ましい。私はごくりと喉を鳴らした。


「いいなぁ…私も乗ってみてもいい?」



「ダメだ」

「「ダメです」」



 ーーーーお、語尾の言葉遣いの違いで【ダメ】しかハモらなかったわね。



ーーーーーーー



 エルグラントのお家の中は、キッチンや皆が集まってくつろげる広間、それらを除いても部屋が五つあり一人で住むには十分すぎるほど広い家だった。

 そして、


「驚くほど荷物がないのね…エルグラント」


 エルグラントが自分の部屋を見せてくれて、私はそのあまりにも殺風景な風景にびっくりした。

 入っても?と伺うと、鷹揚に頷いてくれる。

「失礼します…」

 ベッド、のみの部屋。

 なんだかとてつもなく胸が苦しくなった。この部屋で一人マリアを想い、一人で生活して、一人で過ごしていたエルグラントを想像して。


 そんな私の思考を呼んだかのようにエルグラントがそっと言葉を出した。


「…家を留守にする方が多かったからな。マリアと行った任務先や、過去にマリアの話に出た場所なんかを少しずつ回ってたから、ここには数週間に一度程度帰ってくるだけだったんだ」

「…本当にマリアに会えてよかったわね」

「あぁ、心からそう思う」

「マリアも、こんなに愛されて幸せね。ね、マリア」


 そう言ってマリアを振り向くと、なんだか泣きそうな顔になっている。最愛の人がそこまでして自分を探してくれていたんだもの。嬉しいし、感動しないわけがないわよね。

「…あなたたちが再び会えたのは強く想い合ってたからよ。そういう人たちは遅かれ早かれ絶対に出会えるわ」


「…ありがとうな、サラ嬢」

「ありがとうございますお嬢様」


 エルグラントとマリアが笑ってくれる。そのことがとても嬉しい。

 …よかった。二人が再び出会えて共に生きることを選んでくれて本当によかった。





 ーーーさて、と。まぁ感傷に浸るのはこのくらいにして。


「ちょっとお邪魔します!」


 そう高らかに宣言して私はベッドの下に何かないか覗き込んでみる。

 即座にマリアの突っ込みが入った。


「お嬢様、それは流石に下品です」


「だって…気になるじゃない?!こういうところにはそういうものがあるって定番だと大衆雑誌に載っていたんだもの。私はそういうもの見たことがないから、少し見てみたいわ…と思って」

 私の言葉にエルグラントがガハハと笑って言った。

「おいおいサラ嬢。流石に俺ももう若くねえからな?そんなの持ち込まねえよ。レイくらい若ければそういうのも楽しい時期だろうがなぁ」

「ちょっと!俺に矛先向けるのやめてください!」

 レイが慌てている。んー、気になるわね。ちょっと聞いてみようかしら。


「レイはどんなのがお好みなの?」


 ゴホッとレイが盛大に咳き込んだ。真っ赤になって目を白黒させている。

「なにを!仰ってるんですか!あなたは!」

「そんな大きな声で慌てなくても…変な意味はないわよ?ただレイのお好みを聞きたかっただけよ」

「そんなの聞いてどうするんですか!」

「ただの情報収集よ」

「マリア殿!止めてくださいよ!なんでニヤニヤしてるんですか!」

 レイがマリアに助けを求め出した。あ、それは卑怯だわ。

「お嬢様、…流石にっ…ぅくっ…!失礼しました。流石に、そういうものを男性に聞くのは野暮というものです。レイがとてつもない趣味を持っていたらどうするのです?」

「とてつもない趣味…?そうなの?レイ…」

 私が驚いてレイを見ると、レイの大声がエルグラントの部屋に響いた。





「俺は、どノーマルです!!!!!」


 




 続いて、マリアとエルグラントの大爆笑が部屋にこだましたのだった。



ーーーー



「さて、それなら買い出しに行くか。町まで二十分ほど歩くがサラ嬢は大丈夫か?帰りは荷物も大量にあるから馬車を使うが…もし、無理そうならレイ、町まで行って馬車を呼んできてくれ」

「そ!そこまでしなくていいわエルグラント!いくらなんでもそのくらい歩けるわ!」

 私は慌てて手をぶんぶんと振る。どれだけ貧弱だと思われているのかしら。

「そうか?キツくなったら言えよ?俺が抱えてやるから」

「そのときは俺がサラ様を連れて行きます。エルグラントさん」

 エルグラントの言葉に被せるようにレイが言い切った。んん?だから大丈夫だと言っているのに二人とも!


「「ブッ」」


 そのときエルグラントとマリアが急に噴出して私はびっくりしてしまう。


「ど、どうしたの二人とも…」

 今の会話のどこに笑う要素があったというの。レイは顔をほんのり赤くさせているし、エルグラントとマリアはおかしくて堪らないと言ったふうに笑っている。

「なんでもありませんわお嬢様。狭量な男に引っ掛かりませんよう祈っています」

「そこは応援してくださいよ!?」

 マリアにレイが突っ込んでいる。えええ、もう全然話が読めないわ。なんか最近このパターン増えたわね。三人だけで話が進んで、私が置いていかれるパターン。


 まぁ、いいけど。三人がとても仲良さそうだから。それを見てるだけで幸せな気分になるわ。



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