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22.女王候補選別試験

盛大に国名と人名を間違っていました。人物表見ながら書いてたのに…泣 修正しました。

 十一年前、ブリタニカ王国、女王執務室。


「困ったわエド…。ついに私もあと二年で三十になってしまうわ…」

 女王であるシャロンは執務室の机に肘をつき頭を抱えていた。執務室内のソファに腰かけるエドワードに向かって情けない声を出す。

「そうだね。でも三十になろうとしても君は相変わらず美し…」

「あほんとそういうのいいからエド」

「相変わらずのツンだな…たまにはデレてくれてもいいんだけどな」

 エドワードがしょぼんとする。

「デレてるじゃない。たまには」

「本当にたまにだよね???あんまり愛の言葉とか囁いてくれないよね?」

「話を戻すんだけど、私、あと二年で三十じゃない?」

 エドワードの抗議をさらりと無視してシャロンは言葉を続ける。

「でね、逆算すると、あと二年以内に女の子を産まないともう私赤ちゃん産めないじゃない?」

 さらりというが、その言葉が意味するものを瞬時に悟り、エドワードは眉を顰めた。ここブリタニカは女王制だ。絶対に女王の御身に何かあってはいけない。そのため女王は三十過ぎての出産は禁じられていた。

「あなたと十九で結婚して、二十歳でアース。二十二でカールとヘイリーが双子で生まれてきてくれて、本当にそれは嬉しくて、幸せだったんだけど…」

「ああ、そうだね…私も幸せだったさ。でも…」


「男の子だからねぇ…」

「男の子だからなぁ…」


女王と王婿の声が揃う。

「面白いくらいにその後赤ちゃんはできないし、うちの子男の子だし女の子欲しいし女の子欲しい…かわいい女の子欲しい…」

「願望が口から出てるよシャロン」

 シャロンはふう、とため息を吐いた。

「本来なら、私が女の子を産めれば一番よかったんだけれど、こればっかりは授かりものだから仕方がないわ。でも、次期女王はそろそろ選んでいかなきゃならないの」

 シャロンの言葉にエドワードが頷く。

「私もあなたも、そしてきちんと宰相もいる。アースはちょっとおバカだけど、教育を施せば使い物にはなるでしょう。カールとヘイリーも他国に婿に行く必要もないわ。教えられることを教えられるだけ教えて女王を支える体制をきちんと整えておきましょう。この国を支える地盤を盤石なものとしなければ」

 そうだな、とエドワードも頷く。

「となると、女王の器を持つものを探して、アースの伴侶として召し上げなければならない。私が五十くらいで女王の座を譲るとするなら、少なくともその十年前、つまり私が四十の時には共に玉座を並べて座っていてもらわないとならないのよ。そうなると、女王教育に十年。つまり私が三十になる前にはその候補を見つけておかなきゃならないの。もう時間がないわ」

「候補者選別はどうするんだい?」

「…抜き打ちで国内外血筋問わず一定以上の身分の貴族令嬢に審査と試験を行いましょう。そうね、年齢は五歳から十歳の間で。女王候補を探すといってしまったら貴族間で諍いが生じるでしょうから、表向きは次期淑女としての認識の国勢調査、とでも名目を打っておきましょうか」

「ちょっと待て、国内外の血筋を問わない貴族だって!?他国の王族ではなくて?」

 エドワードは驚いた。近親とは言えないほど遠縁でありながらも王族の血が流れる貴族や、他国の王族の女性を選ぶのが通例だ。他国の王族ならいい。王族としての血が流れているのだから。だがそんなものと全く関係のない違う血を入れるなど前代未聞だ。

「もちろん、他国の王族の令嬢もその中にいれるわ。でもわたしはね、エドワード。王族の血なんか、ほんっとどうだっていいの。だって、言い方は悪いかもしれないけれど、アースだって、私とあなたの血半分こじゃない?それを言ってしまえば、私なんかも母上と父上の血、半分こじゃない?純粋な王族の血なんて、初代女王だけなのよ」

 確かに一理あるとエドワードは思う。だが、貴族…主に元老院あたりが許すだろうか。

「それよりも、この国を守る、より良いものとする器のある女性を選びたいわ。教養、知識、作法、なによりも人間性。すべてを兼ね添えた女性をね。本来なら養女として迎え入れたいところだけど、さすがにそれだと元老院あたりから批判が来るでしょうから、アースの伴侶として迎え入れるのが最善よ」

「なるほど。でもそれを言うならレイも同条件じゃないかい?正直…親としてはこういうのもなんだが、王婿になれる器はアースよりレイだ」

 エドワードの言葉にシャロンはふふふ、と笑う。夫も同じことを考えていたのだと、本当にこの国のことを考えてくれているのだと思う。

「そうね、でもレイは、だめ。あの子は今の生き方を楽しんでるもの。あと四年して堂々と外に出てもよくなったら身分を隠して交渉団に入るんですって」

「そうなのかい?」

「ええ、私のせいで五歳から存在を秘匿し続ける生活を送らせてしまっているんだもの。…あの子には頭が上がらないわ。そんな生活にも不満ひとつ言わずいつでも朗らかに過ごしてくれている。そんなあの子に私がこれ以上何かを要求してはいけないわ」

 国のことを考えると、レイが最適なのは私も同意見よ、とシャロンは笑う。

「息子にこんなこと言っちゃあれだけど、アースだからこそ、有能な女王が必要だわ。それじゃさっそく宰相を呼びましょう。試験についてまとめ上げましょう」

 ブリタニカ建国以来初めての女王候補選別試験が始まろうとしていた。



――――――



「エドワード。信じられないことが起きたわ」

 数か月後、試験は国をあげて大々的に執り行われた。第一次試験はここブリタニカの国の遍歴。第二次試験はいきなり難易度を上げて、この国についての王政や他国の情勢についての試験だった。難易度が高いといっても高位の令嬢なら成人になるまでに学ぶことだった。

 人払いを済ませた女王の執務室に、シャロンはエドワードと宰相サングリットを呼んでいた。

「どうしたんだい?憂う君も本当にきれ…」

「ほんと今それどころじゃないから。…サングリットあれを」

「はい、シャロン様。…エドワード様、これを。今回二次試験で一定数の点数をクリアした令嬢の一覧です。」

 そう言ってサングリットは一枚の集計表をエドワードに渡した。さらりと目を通していたエドワードだったが、ある一点のところで目の動きを止めた。その瞳が見る見るうちに開かれていく。

「これ…は。信じられない。こんなことがあるのか?」

 二次試験に残る令嬢たちだ。それなりに全員が高得点だったが、その中でも一人だけ抜きんでて。

「…満点、だと…」

 エドワードは声が出ない。しかも満点を叩き出したのは。

「五歳、だと?何が起きている?」

 エドワードはサングリットに問いかけるがサングリットも訳が分からない、と言った風に首を振る。

「確かに、令嬢が受ける教育ではあるが、中には何点か高等機関で学ぶような問題も入っていたはずだ。五歳の少女がどうして答えられる?」

「さっぱりわからないわ。でも、令嬢の名前を見て」

 シャロンの言葉にエドワードはもう一度目を落とし、令嬢の名前を読む。

「サラ、…!ヘンリクセン!!」

「そう、ヘンリクセン公爵の一人娘よ。あれほど富と権力を持っているのに人格者との噂しか流れてこない、あの清廉な公爵家の一人娘よ。それだけでももうほとんど決まったようなものだわ」 

「あとは…サラ嬢がなんというか、だな」

「そうね、断られてしまったら元も子もないわ。それに外部の人間を王族に入れるのはやはり元老院の反発は免れないでしょう。でも、この満点の解答をみせれば、口を閉ざすでしょう。状況は有利よ」

 シャロンは考える。


 ―――サラ・ヘンリクセン。幼いながらにその器量の良さは王族の耳に入るほどだ。


「~~~~~~~~!!!!!かわいい女の子…っ!だめもう!!!考えただけで鼻血出そうっ!!!」

 暴走しそうになるシャロンをエドワードは慌てて止めるのだった。


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