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178.ホーネット家への手土産はなんにしよう?

約一年ぶりの再開です~。ほのぼのと完結までもっていきたいと思いますのでよろしくお願いします~



――――――――――――――

「そういえば…」

 と私は後ろを歩くエルグラントに向かって声を掛ける。

「エルグラント、ご実家へのお土産ってなんだったらあまり気負わせないで済むかしら?」

「んー?いいぞ嬢、そんな気を遣わなくても」

 エルグラントががははと笑うけど。

「そんなわけにはいかないわ。かといって、王宮の菓子職人に作ってもらったものとか、王都周辺の有名どころのパティスリーのお菓子を持っていくのも恐縮させそうだし」

 私の言葉にエルグラントは苦笑いしながら「違いないな」と零した。


「それならさ、果物とかは?」

 私たちの会話をレイが拾うが私は首を横に振る。

「野菜とか果物はホーネットご夫妻が作っているもの。しかもそこそこ大きい規模で。いくらどこかに出荷してらっしゃるとは言え、ご自宅で食べるものは山ほどあるはずだわ。農家の方に野菜や果物の差し入れは迷惑よ」

「そうなんだよなぁ…」

 エルグラントが顎を摩りながら困った顔を見せる。

「食べ物の類は、な。正直言って人に配るほど有り余ってるからなぁ…」


「それならばご提案ですが」

 今までそっと後ろをついてきたジェイが口を挟む。あら、めずらしい。

「…ホーネット家のご主人は腰をかばって歩いてらっしゃったように記憶しております。最近開発されて大人気を博している直接患部に貼るタイプの鎮痛薬はいかがでしょう。奥様は…そうですね。少々お手が荒れてらっしゃったので、今王都で流行りの手に塗るクリームなどはいかがでしょうか?」

「おお、そんなのがあるのか?そういうのがいいな」

「まぁ、あまりにも大人気なのでどこのお店に行っても手に入る可能性は低いですが…サラ様やレイモンド殿下であればその伝手で手に入るのではないかと」

「いくらくらいなんだ?」


 エルグラントから問いかけられ、ジェイの代わりに私が答える。

「貼るタイプの鎮痛薬は10枚で3千ペルリ。クリームの方は1個千ペルリよ。1個で1か月は持つわ」

「手ごろだな…そして詳しいな嬢」

 エルグラントの言葉に私はマリアと目くばせしあってふふふ、と笑い合う。

「だってそれ開発したの私だもの。ついでに投資も」


「「「は??」」」


 レイとエルグラントとジェイの声がハモった。


「お嬢様は最近平民向けにターゲットを絞って商品開発を進めてるのよ」

 マリアの言葉に私はうんうん、と頷く。

「今まで私が投資してたものが、あまりに貴族寄りの商品ばかりだったのよ。というより、私がそういうものしか知らなかったから、商品開発も価格設定もしようがなかったの。ただ貴族向けの商品でよさそうなものがあったら投資するだけ」

 でもね、と私は言葉を続ける。


「国外追放を経て、一般の金銭感覚を身に着けて、地に足をつけて働いている人たちを直に見て考え方は全く変わったわ。国を支えているのは貴族じゃない。言い方は嫌だけど平民の方々だわ。そんな方たちの暮らしがもっと色づくように、そんな商品が作りたいって思うようになったの。投資ばっかりじゃなくてね。で、私の意見を聞いて商品開発をしてくれそうな商会と新たに契約して、今は平民向けの商品も作ってるのよ。ほら、レイと私の目の色を変えるアイグラスだって。これは衛生上使い捨てだけど、10枚入ってて、600ペルリよ」

「そんな安いのこれ!?」

 レイの驚く顔と声に私はふふん、と鼻を鳴らす。だって自信作だもの。

「普通の一般家庭の女の子がお小遣いで手を出せるくらいの価格設定なの。だって化粧品ってべらぼうに高いじゃない?でも女の子だっておしゃれしたいじゃない?今後は安いタイプの化粧品だって流通させるわよ」

 私の言葉にレイがんん、とうなる。


「でもさ、サラ。そうすると価格崩壊が起きない?」

 レイの指摘ももっとも。でも、問題ないわ。

「レイ、私が言った言葉思い返して。今市場に出ているそういったものは全部貴族向けよ。私は貴族向けに作っているのではないわ。一般市民向けに作っているのよ」

 そう。貴族向けの化粧品はあれど、一般市民向けの化粧品はない。すこしいいところの商家のご令嬢なら買えるかもしれないけど、一般の人間にはまだまだ敷居が高いのが実情。


「もっともっと一般の市民が過ごしやすく、楽しく、生きる意味を見出せるように。そして生活が豊かなものとなるように。私が、この国をそうしてみせる」


 堂々と言い放つ。私の言葉に皆が目を丸くして、そしてふっと笑みを浮かべた。まず口を開いたのはレイだ。

「…すごいな。本当に俺の婚約者は俺の、そしてこの国の誇りだ」

 そういって私の髪の毛を一房取り、口づけてくれる。

「愛おしい。誇らしくて、世界中に自慢してやりたい。こんな素敵な人が俺の婚約者でこの国の次期王なんだって」

 またこの人はこんな往来で…ぼんっと赤面しそうになるのを何とか堪える。


 次に口を開いたのはマリアとエルグラントだった。

「いつまでも付いていきます。お嬢様」

「人の目があるからあれだが…誰もいないなら、今嬢に跪きたい気持ちでいっぱいだ」


 で、ジェイとは言うと。

「うん、ジェイ。…やめて」

 私は苦笑しつつレイを窘める。深く深く私に向かって頭を垂れていたからだ。

「あなたの主人はレイでしょう?そんな軽々しく頭を下げるべきではないわ」

「私の主人が敬愛する御方に惜しむ礼儀などありません」

「うん、顔を上げなさい。ジェイコブ・ヴァンスクリト・オークフリト・デンヴァッファ・リンゲン・ケヴィン・バルトロウ」

 笑いながら言うと、ジェイはばっと顔を上げた。

「どうして…私のフルネーム…」

「どうしてって…貴族図鑑にも載ってるじゃない。ふふ、絶対フルネーム呼んだら顔を上げると思った」


 そんな私とジェイを見てレイがふはっと笑う。

「サラ、能力の無駄遣い。俺すら、たまにまだフルネームは間違うのに」

「あら、あなた従者をないがしろにし過ぎなのではなくて?」

「そんなわけないよ」


「お嬢様もレイもまぁ、そういう話はどうでも良いとして、ホーネット家に行くならそろそろお土産は買わないといけません」

 マリアから言われ、はたとお土産のことを思い出す。話が随分と脱線してしまった。


「ええと、じゃあその鎮痛貼り薬とクリームを手に入れに行きましょうか。ちょうど商会が近くにあるのよ。エルグラント。お土産はそれでいいかしら?」

「ああ、なんか悪いな。逆に気を遣わせてしまって」

「全然よ。むしろこちらが図々しくもポトフをいただきに行くんだもの。それくらいでいいのが逆に申し訳ないくらい」


 そうして私たちは近くの商会に出向き、鎮痛貼り薬とクリームをちょっと多めに手に入れた。会長さんはいろいろと私と話したかったみたいだけど、今日は大事な用があるので丁重にお断りする。



 そしていよいよさあ!エルグラントの実家へ!!

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