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162.補給

久々にいちゃこいてる!!

「レ、レイ…もう離して?」

「嫌だ」


 即答かい!私は思いっきり脳内で突っ込んでしまう。

 あれからソファに座ったけれど、横抱きにされたままずっと私はレイの膝の上で彼に抱きしめられている。

「いい加減重いでしょ?」

「全然。もっと食べなきゃ」

「ほら、今日のドレス陛下が式典用にくださったものだから皺になると…」

「大丈夫。この後の昼餐会とダンスのドレスは俺が選んでるから着替えればいいし」

「いつの間に!?」

 驚いてしまう。そんなの知らなかったわ。

「だから、着替えの時間含めてもあと一時間くらいしかこうやってサラを補給できないんだよ…俺に抱っこされるの、嫌?」

 やめて至近距離でそんな甘く囁かないでこのイケメン!!!!


「い、や…じゃないけど」

「ならよかった」

 レイがくしゃりと笑って私に口づけを落とす。最初は触れるだけのそれが、どんどん艶を増していき、やがて呼吸もままならないほど深いものになる。

 頭がぼおっとする。金色の薄い膜が頭に張ったみたい。胸のあたりが愛おしさでぎゅううっと苦しくなり、なんか変な気分になってしまう。自分が自分じゃないみたい。ようやくレイの唇が開放してくれたとき、私はとても惚けた顔をしていたと思う。

「…かわいい」

 そう言って私の顔を見たレイは額に軽い口づけを落としてくれた。

「…やっと会えた。今日の準備のためとはいえ、会えなくて本当に寂しかった」

「私もよ。とてもとても寂しかったわ」

「ごめんね?」

 鼻と鼻がくっつきそうな距離でお互いに話す。ああ、久しぶりのレイの蒼い瞳。こんなに美しかったかしら。


 レイの謝罪に私は首を横に振る。

「さっきもらったプレゼントですべて帳消しになってしまったわ。私ってとっても単純だったのね」

「プレゼント?」

「…あなたが制定してくれた『婚約の儀』」

「プレゼントになってた?なら嬉しいなぁ。さっきと同じこと言っちゃうけど、俺、サラとの婚約を口頭だけで反故にできるようなそんな不確かなものにしたくなかったんだ」

 レイの手が伸びてきて、私の頬を撫でる。その手に甘えるように私もまた頬をすり寄せた。


「三年近く前のこと蒸し返しちゃうけど、あの場であんなに手ひどく婚約破棄を言い渡されて、傷つかないはずがないんだよ。いくらそうなるように誘導したとはいえ。だから、婚約の儀をすることであんな思いを二度とすることはないんだっていう確信を持ってほしかった」

「私の為…よね。ありがとう」

「半分はそう、でももう半分は俺の為」

 レイの言葉に首を傾げる。傾げると言ってもさらにその手に頬をすり寄せただけになっちゃったんだけど。

「…俺からサラを手放すことは絶対ないけれど。あれだけ大勢の前で婚約の儀しておけばサラが仮に俺から離れたいって思ってもそうそう簡単に離れられないでしょ?」

 大真面目に微笑みながら言うもんだから笑ってしまう。

「あなた…腹黒いのねぇ!」

「あたりまえだよ。この国の次期女王を手に入れるんだよ?生半可なことしてたら他の男に勝てない」

「あなたに勝てる男性なんていないわよ」

 私の言葉にレイは困ったように笑った。


「そうでもないよ…体力だけでいけばエルグラントさんのほうがあるし、尋問術なんかマシューのほうがすごいし。アースとかカール、ヘイリーのほうが年齢的にはサラに合ってるし。知ってる?俺もう二十六歳だよ」

「知ってるわよ」

 笑ってしまう。この人、一体どれだけ自分がすごい人か全くわかっていないんだから。

「…でもね、レイ。仮にほかの男性がどれだけあなたより優れていたとしても、私がこうしたいと思うのは世界中であなた一人だわ」

 私はそう言ってレイの唇に口づけを送った。軽く触れるだけのそれをあげると、レイはたちまち嬉しそうな顔をしてくしゃって笑う。ああああ、もう可愛い可愛い大好き!


「初めて想いを分け合った時、これ以上の幸福はないって思ったんだ」

 レイが鼻先を私の鼻先にすり寄せてくる。ふふ、じゃれてる子猫みたい。

「ええ」

「でも、すぐに足りなくなった。サラに触れたくなっちゃって」

「ふふっ、ええ」

「で、それもすぐ足りなくなった。将来の約束がしたくなって」

 額が合わさる。もう、くすぐったいったら。

「ええ」

「で、将来の約束をしたらしたで、また次のものが欲しくなった」

「なぁに?」

 意図せずに甘えた声が出ちゃう。ふふ、本当に子猫になっちゃったみたい。

「早く結婚したい。同じ家で暮らして、毎晩サラにおやすみって言って毎朝サラにおはようって言いたい」

「遠くない未来だわ」

「…そうだね、でも、待ちきれない」

 まるで最初からわかっていたかのように唇と唇が合わさる。たちまち多幸感に包まれてしまう。


「あまり深いのしちゃうと、次が欲しくなるからやめておくね」

 そう言ってレイは触れるだけの口づけをしてすぐ私から離れた。

「次?」

「まだ先の話。その時まではきちんと紳士でいるから安心して」

 レイのぼやかしたような表現に私は首を傾げる。そんな私を見てレイがふはっと笑った。



――――――


 やっとのことで私はレイの腕から解放されたけど、それでもぴたりと体をくっつけて隣に座り合っている。

「これからは少しは会えるの?」

 私の問いにレイはうん、と頷いてくれた。


「むしろこれからは結婚式が控えているから、打ち合わせで会う回数は確実に増えると思うよ。もう公表したから時間を限定してお忍びで行く必要もないしね。俺の方はこなさなきゃいけないのは交渉団の仕事と、王婿教育かな…少しゆっくりになると思う。大抵の挨拶は済ませたし、王族の教育に関してはもうおさらいみたいなものだったし。公務もサラと婚約した以上、サラを同伴できるしね」

「交渉団はどうするの?団長であり続けるの?」

「マシューとも話したんだけど、団長になれそうな器のやつがいなくて。マシューは絶対に団長にならないっていうし。…しばらくは団長かな。王婿業務や公務があまりにも忙しくなって、団に迷惑を掛けそうになったら考えなきゃなぁ、とは思ってる」

「そうなのね」


 小さな頃からの憧れだった交渉団。せっかくそれに入って団長まで登り詰めたのだから、できればこのまま継続して欲しいとは思うけど…


「ま、それはまだ先のことだから。まずは結婚式のことを考えよう。できれば半年以内には形にしたいと思ってるんだけど?」

「最初からそのくらいって言ってたものね。大丈夫よ」

「…ドレス姿、楽しみだなぁ」

 レイが蕩けた笑顔を見せる。

「私も。あなたの正装楽しみだわ」

「男のほうは面白みはないよ。…やっぱりその日の主役はサラだから。その日は好きなの何着でも作っていいからね。一生に一度のことだから、勿体ないなんて言わないで」

 笑ってしまう。

「あなた、私を甘やかす天才だわ。最初からそんな甘やかしていたらだめよ」

「甘えてよ」


 再びレイの唇が私の唇に落ちてくる。たわいない会話が楽しい。やりとりの間の口づけが嬉しい。


「…やっとサラを補給できた」

「私も。やっとあなたを補給できた」


 もう一回唇を合わせる。ふふ、大好き。


「そろそろだね。マリア殿たちを呼ばないとサラの支度が間に合わない」

 名残惜しそうにレイがいい、私も頷く。まだまだこうしていたいけれど、仕方ないわ。今日の主役は私とレイだもの。




 でもうちの侍女はとても出来る人なので。私たちが呼びに行く前に時間だと扉の向こうから知らせてくれた。

 で、私の唇の紅が完全に剥げ落ちて、レイの唇に若干移ってるのをマリアにがっつり指摘されました。

 は、恥ずかしかった…!!!


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