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159.久しぶりのレイと王宮の侍女たち

 まだ日が明けぬうちに到着してくれたマリアとエルグラントと共に、そのまま馬車に乗って王宮へと向かう。王宮ですべての支度を行わなければならない。

「いよいよね」

 まだ外は真っ暗で夜の形相だ。からからと回る車輪の音がやけに響く。

「緊張してらっしゃいます?」

 マリアが尋ねてくれる。私は車窓から外を見ながらぼんやりと答える。ふと上を向くと月が追っかけてきていた。

「そこまでは。…でも、なんだか不思議と覚悟は決まったわ。あ、違うのよ?拝命するとお返事した時も覚悟がなかったわけじゃないの。でも、より現実味を帯びた覚悟というか。もう前を見て進むしかないんだわって思う」

「…ご立派です、お嬢様」

「そんな立派なもんじゃないわよ」

 笑って見せる。

「私がこのまま進んだとしても、二人ともついてきてくれる?」


「勿論です」

「当たり前だろ」


 二人がいい笑顔で返事をしてくれる。ふふ、なんて心強い。


 やがて馬車は王宮の門前に到着した。御者が私の名前を衛兵に伝えるとすんなりと通される。

 この城に関係する人達は、レイの王弟発表があった後に私が次期女王として正式に継承権をシャロン前陛下から賜ったことを陛下から通達されて知っている。もちろん正式な今日の発表までは箝口令が敷かれていたけど。

 

 陛下やレイが住んでいる王宮の前に馬車が到着する。てっきり出迎えは数名の侍女のみだと思っていたのに、馬車の窓から見える彼の姿に私は思わず声を上げた。


「レイ!!!????」


 マリアとエルグラントも驚いた顔で窓の外のレイを見る。レイの後ろに数人の侍女がいる。ジェイの姿もある。

 御者が扉を開けるより先にレイが動いた。いつもの彼からは想像もつかないくらい焦ったような切ないような顔をして、レイが馬車の中に飛び込んできた、と同時に。


「サラ…っ!!!」

 ぎゅううううっと私の体は彼の腕の中に抱き込められた。

「レレレレレレレイっ…!!!皆、皆さん見てらっしゃるわ…っ!」

「どうせ今日発表するんだから大丈夫。侍女たちにも説明してる」


 ちがーーーーーう。気にするとこそっちじゃなーーーーい!!レイが出迎えに来てる時点でおそらく侍女さんたちには説明がいってるんだろうって想像はつくし、ジェイは元々知ってるし。

 私が言ってるのはこの皆の目前で抱きしめられてることなんだけど!!!!

 ほらだって皆さんの目が生暖かいというかめちゃくちゃ優しいというか。とにかく恥ずかしいじゃない!!


 ―――そう抗議しようとしているのに、抗議できない。だって。

 

 …涙が止まらない。



「…泣かないで。ごめん。本当にごめん、でも、今日でもうカタが付くから」

「今日…っ!皆の前に顔をださない…っいけ、ない、…っに、!!…ばかっ…!!!」

「ごめん、会いたかった。…会いたかったサラ」

 そういって少し体を離したレイの唇が私の唇に降ってくる。

 

 皆見てるのに。皆いるのに。

 ―――抗議してやりたいのに、できない。だってずっとずっと寂しかったんだもの。こうして欲しかったんだもの。

 …愛してる。…サラが足りなかった。…会えなくて気が狂うかと思った。そんな言葉の合間合間に口づけが降ってくる。

 ああ、だめ。会えたら文句言ってやろうとか、寂しかったとか色々伝えたいのに、だめ。何も言葉が出てこないわ。頭がぼぉっとする。



「…あー。なんだ?その。そんくらいにしとけ、レイ」


 エルグラントの言葉に私ははっと我に返り、ばっと顔を離した。けど、レイは抱きしめる腕の力を弱めてはくれない。

 いろいろ一瞬で冷静になり、私はぼっと赤面する。

 ああああああ!!!!皆の目の前でやっちゃった…。恥ずかしいいいいいいい!!!!


「ええとな、まぁ、俺らはな、そんな構わないんだけど、一応な?」

 そういって苦笑しながらエルグラントが視線だけで馬車の外を見るように言う。恐る恐るそちらを見ると。

 


 …顔を真っ赤にして、大興奮の侍女さんたちがいた。

「あっ!大丈夫です私たちは!続けてください!!!どうぞどうぞ!!」

 いやなんでそんな嬉しそうなの。

「続けて良いって言ってますけどエルグラントさん…」

「レイ!?」

 何言ってるのあなた!?この状態で続けるつもりだったの!!!???私は思わず脳内でつっこむ。

「自重しとけ。メインの嬢が使い物にならなくなるぞ」

 エルグラントがくっくっくと笑いながらレイを窘める。


 面白くなさそうな顔をするレイを見て、私の隣でマリアがはぁ、と呆れたようにため息を零すのだった。



――――――



「ほんっとうにあの男は…」

 ぶつくさと言いながら、マリアは私をソファに座らせて支度道具を部屋内に運んでいる。


 あれからレイは私を全然離そうとしてくれなかった。結局私の支度部屋に着くまでお姫様抱きで連れてこられ。長い回廊を歩く間も何度も何度も口づけが頭やら額やらに落とされ。

 支度部屋についても、全然私を離そうとする気配がなくて。

 ジェイに「いい加減行きますよ。あなたの準備も山盛りあるんですから」と首根っこを掴まれてやっと部屋から退出していったのだった。ん?なんかちょっと見ない間に主従関係面白いことになってない?ジェイはもっと忠実な臣下!って感じだったけど。


「まあまあマリア様。いいじゃないですか。あんな素敵な殿方にあれだけ愛されて羨ましいわ、ねえ、皆」

 ええ、ええ、そうですわね。と六人ほどの侍女たちがにこやかに返事をしてくれる。

「様はやめてくださいな。こちらこそ、王宮の侍女様たちの間に入ってしまい申し訳ございません」

 マリアが簡単に謝罪すると、侍女さんたちはとんでもない!と首を振った。

「そういえば、自己紹介をいたします。私が女王付き筆頭侍女であるマリア様の次の責任者になります、ロゼリアと申します。ロゼ、とお呼びください。こちらの五名は…」


 んんんん????なにか今私の知らない情報が一つ入ってたわよ!?思わずマリアを振り返ると、マリアも驚いた顔をしている。

「ちょ、ちょっと待って?ロゼ。…マリアが女王付き筆頭侍女!?」

「?陛下からそのように仰せつかっておりますわ?」

「マリア、知って…ないわよね?」

 私の言葉にマリアはぶんぶんと首を横に振った後に、色々察知したようではぁ、と溜め息を吐いた。

「エドワード…また勝手に。まぁ、願ったり叶ったりではありますが」

「マリア!マリア!敬称!!!」

 私は慌ててしまう。マリアと陛下が旧知の仲なのはいいけど、呼び捨てにされてるだなんてここの侍女の誰かからバレたら、不敬罪だのなんだと騒ぐ人間が出てくる可能性だってある。 

 

「構いませんわ、サラ様。陛下からマリア様が陛下と旧知の仲だということも知らされております。私たちは、侍女たちの中でも陛下直々に選んでいただいた人間です。皆がそれなりにできると自負が御座いますわ。秘密は厳守いたしますし、信頼していただいて大丈夫です。…なんなら私共の目を見てくださいませ」

「あら、陛下からそれも聞いてるの」

「ええ、嘘偽りなど一切サラ様には通用しないと」

「なるほど、だからあなたたちが選ばれたのね」


 そう。一番最初に出迎えに来てくれたときから思っていた。

 この人たち、レイに対して色目一つ使わない。というかむしろ私との関係を大歓迎している空気。それに、私やマリアに対しても最初から尊敬と畏敬の視線を隠しもしない。陛下が直々に選ばれたというのも納得だわ。通常なら統括侍女の一存で選ぶでしょうに。よほど信頼できる人物なのでしょう。

 

「…信頼するわ。ロゼ。これからよろしくね。それからあなたたちも。まずは名前を教えてくださる?」

 私はロゼ以外の五人の侍女にも声を掛けた。

 王宮では基本的にこの人たちと過ごすことになる。うん!仲良くならなきゃね!!!


忙しくて…なかなか書けない…

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