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132.やらかし…た?!

短めです

 夕食が終わって、湯浴みも終えてから俺はロベルトの自室に呼ばれた。


 部屋に入ってまず俺を迎えたのは大量の本、本、本だった。ロベルト・ヘンリクセン。城勤めをしているのだけは知っていたし、何回かすれ違うことはあったけど、何の仕事をしているかまでは知らなかった。

 聞けば、城に送られてくる書簡の管理をしているという。最重要国家機密から色文に至るまでの全てに至るまでの総管理ということだから、それだけでも彼が有能で、信頼されている人物だということがわかる。

 しかもこの本の量と内容からわかるようにかなりの努力家。


「ヘンリクセン家の人間は本当に素晴らしい人々ばかりだな」

「王弟殿下にそのように言っていただけるとは何たる栄誉でしょう!」

 俺がぽつりと漏らした本心に、わざとらしくロベルトが返すから思わずジトリと睨んでしまう。

「冗談だよ冗談。ほんと、サラは見る目があるなぁ」


 苦笑しながらロベルトが言うもんだから俺は首を傾げる。戸棚から最高級のお酒を取り出しながら、ロベルトは笑った。

「権力を濫用する奴が大嫌いなんだよ。我が一族は。まぁ、王族に継ぐ権力を持ってる名家の人間が何を言ってんだって話ではあるんだけどな」

 俺の前にグラスが置かれて、とろりと上質なウイスキーが注がれる。

「権力なんて諸刃の剣だ。何かあればすぐに没落する。だが、その『権力』とやらの甘い蜜に酔いしれて我を忘れ、諸刃の剣だということを忘れる人間ばかりだ。この貴族社会は」

「…そうだな」

「そんな中で、王弟という最上級の権力を持ちながら、それを誇示しようともしない。そんなレイを見つけたサラの慧眼を私は誇りに思う」

「光栄だ」


 心から嬉しいと思う。サラ様の兄君に、こんな風に言っていただけるだなんて。

「飲もう!レイ!」

「ああ、飲もう」


 心から嬉しそうなロベルトの笑顔に釣られて、俺もめちゃくちゃ笑ってしまう。



ーーーーーー



「ひっさびさにこんな飲んだ…」

 俺はグラスに入っている水を一気に飲み干した。

「俺もだ」

「強いんだな、ロベルト」

「いや、正直もうギリギリだ。レイと話すのが楽しくてな。まだ眠りたくないという一心で粘ってる」

「ふはっ!」

 ロベルトの言葉に笑ってしまう。こういう素直なところ、ほんとサラ様そっくりだ。


「明日酒が残りそうだなこれ…エルグラントさんに怒られそうだ」

 そう、正直言ってこの感覚久しぶりだ。頭はちょっとぼーっとするし、足が少しふわふわする。

「私は完璧残る…ああ…明日も仕事なのに」

「えええ!?大丈夫なのか?!」

「なんとか平気だとは思うが。レイも明日は交渉団に顔を出さなければならないだろう?」

「俺は今日簡易的にではあるが出してきたから、多少遅れても全然構わないんだけど…そうだ、ロベルト、ちょっと聞きたいことがある」

「どうした」



「…サラ様って、正直どのくらいモテる?」

「毎日釣書五十枚来てる」

「嘘だろ!!!!!??????」


 釣書毎日五十枚?!聞いたことないぞ?!


「おいおいレイ。あの美貌だぞ?しかも、アース王子との婚約破棄は周知の事実。それに加えて先日サラは冤罪が証明された。清廉潔白のあの子に目をつける貴族と男がどれだけいると思ってる」

「交渉団に今日連れて行ったらたちまち男に囲まれて…あぁ、もう!!自分がどれだけ可愛いのかとか、人目を引くとか分かってないのがもどかしい!」

「あの子は天使だからもう仕方ない」


 あぁ、この人の前ではどんだけ惚気ても構わないんだよな。わかってくれるんだ。そう思った途端なんかのネジが外れるのがわかった。


「そうなんだよもう天使なんだよ…ほんっと可愛い。何してても可愛い。もう息するだけで可愛い…どうしたら良いロベルト…助けてくれ。可愛くて仕方ない。ほんとどんな男にも見せたくない。なんなんだあの愛くるしさは。人間なのか?ああああほんと抱きしめたい。話すと抱きしめたくなる」

「仕方ない。可愛いのは事実だ。なんなら今からサラの寝室に…」

「行かないからな?!」


 何を言っているんだこの兄は。

「構わないぞ?うちの両親はそういうところは大らかだ」

「構うにきまってんだろ!そんなこと出来るわけないだろ?!」

「そんなことって…俺はただそんな愛おしさが溢れてんならお休みのハグをしに行ったらどうだ?って言いたかっただけだが?何を考えてるんだ?」


 ロベルトがニヤニヤしながら言ってくる。

「なっ!!!にを!とか!お前わかって言ってるだろ!」

「さぁ?全然わからないなぁ?」

 完全にサラ様のネタで遊ばれてる。遊ばれてるんだけどなんだろうすごく心地いい。




 ーーーーそう、すっごく良い酒だった。ロベルトは会話が上手で。酒も美味しくて心地よくて、サラ様のことを存分に惚気られて。

 だから、本気で何年ぶりだろうというくらいのレベルで俺は酔ってしまった。


 ふわふわしながら部屋に戻り、めちゃくちゃ良い酒だったなぁなんて呑気に考えて眠りについた自分を、俺は本気で真夜中呪うことになる。



 ーーーーサラ様のベッドの上で。

 


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