第61話
渡された針で、左手の人差し指を少し刺激させてやる。
するとすぐに血が滲み出始める。
エクスラヴはそれを確認すると、奴隷の首輪に指をあてがう。
すると、首輪に幾何学模様がゆっくりと首輪全体に広がっていく。
そのまま待機すること5分、首輪全体に模様が刻まれると、中心にあった宝石が輝きだした。
それが治まるとエクスラヴは首輪から、俺の手をどけると何かを確認し始め、確認が終わるとこちらに向き直り話はじめた。
「これで、登録者の変更は終わりました。続けて他の奴隷の首輪の更新を続けます。」
「よろしくお願いします。しかし、本当に少量の血でことが終わってしまうのですね。」
「そこは、魔道具作成者の腕の見せ所でしょう。あまりにもお粗末な物だと、苦情が増えるでしょうからね。」
「なるほど。追加の奴隷を手に入れる時は、そこも注意しないといけないですね。」
こうして、奴隷の登録者更新の儀式は滞りなく終わり、最後にエクスラヴから忠告のようなことを告げられる。
「奴隷を多数いらぬ疑いをもたれることもありますので、その点は十分ご注意くださいませ。」
「分かりました。これ以上奴隷を雇うつもりもありませんが、十分注意することにします。」
そうして、奴隷を引き連れて店を後にする。
取り急ぎ自分の天幕まで戻ろうとすると、大勢の奴隷を引き連れているのが、珍しいのか好奇な目線で眺められていた。
そんな視線に耐えながらも、無事に天幕へと戻ってこれた。
ミルコフ達に帰還の報告をしようかとも思ったが、それは後回しでもいいかと思って、とりあえず奴隷の全員を天幕の中に入れることにした。
エクスラヴの店から俺の天幕に移動する際にも、一言も喋らない奴隷に少し疑問が残ったが、この後の行動方針を奴隷達にも守ってもらわないといけないので、些末な問題として今は気にしないようにした。
「これからの行動方針を伝えるが、その前にお前達の服装を整える。それが終わった後、役割を決めることになる。その時に自分の前職を話してもらう。その時は、包み隠さず話すようにしてもらう。ここまではいいか。」
そう話しても、奴隷から一言も声を漏らさないので、まさか発言の許可も出さないといけないのか、と思い発言の許可を出すことにした。
「発言の自由を認める。何か気になることがあるのならば、自由に発言していい。」
そう言うと、一番最初に180cmありそうな偉丈夫が発言をした。
「ご主人様よ、俺達を購入してくれたことは感謝するが、何のために購入したのか理由を教えてもらいたい。」
「それは、俺の護衛をしてもらうために購入した。最悪、盾として動いてもらえれば、それだけで助かるからな。」
「そのためだけに購入するなら、女の盾なんて必要ないように思えるんだが。」
「そこは、身の回りの世話役として購入した。他に質問は?」
質問に答えていると、奴隷の中の女性奴隷が手を上げた。
「身の回りの世話とは、どのようなことをすればいいのでしょうか?」
「難しく考えなくていい。食事と洗濯などの必要最低限の行動で大丈夫だ。」
「それなら、俺からも質問がある。何処でどんな商売を始めるのか聞いてみたい。」
「それはおいおい説明するつもりだったが、共和国を離れ帝国に行って武器を販売する予定だ。」
これを聞いた奴隷達は、いきなり帝国に向かうと言われ混乱し始めたが、特に取り乱すこともなかったので、そのまま話を続けることにした。
「帝国に向かう前にいろいろとやることがあるから、それまでの間は奴隷兼従業員となってもらう。これに反論は認めないから、そのつもりでいるように。」
こうして次の段階に進むための従業員兼護衛を作ることに成功した。