第58話
司令部で貸してもらった、奴隷商人の一覧が書かれた羊皮紙を片手に、市場へと急ぎ足で向かった。
一覧には名前と何処で店を開いているのか事細かに書いてあったので、探すのに苦労はしないだろうと思ったが、名前の横に記号がついている人物が何人かいる。
何のための記号だろうと、考えていると羊皮紙の下のほうに、記号の意味が書かれていた。
それを読むと、優良か劣悪か判断してあることが分かった。
それなら優良な店で奴隷を手に入れたいので、一覧の中の優良な店の場所を確認して、そこに向かうことにした。
たどり着いた場所は、司令部のすぐ近くに店を構えており、灯台下暗しとはこのことだろうと思いながら、天幕の中に入るのであった。
中に入ると、奴隷は一人もいなくて、品の良い机と椅子に座る一人の人物しかなかった。
本当に奴隷を販売しているのか、疑問に思いながらも椅子に座る人物に近づいていく。
「いらっしゃいませ。エクスラヴ商店店主のエクスラヴです。本日のご用件をお聞かせいただけますでしょうか。」
「武器商人のヴァッフェと申します。本日は奴隷を購入しようと思いここに参ったしだいです。」
「なるほど。奴隷の購入ですか。今紹介できる奴隷は数がすくないですがそれでもよろしいでしょうか。」
「大丈夫です。しかし、何処に奴隷がいるのでしょうか?」
そう言うと、エクスラヴは椅子から立ち上がると、入り口とは反対側のところから外に出ようとしたので、後をついて行く。
すると、少し離れた場所にもう1つの天幕が用意されており、その中に入ることになった。
その中には、首輪をつけた男女6人ほどの人物が床に座った状態でいた。
「今ヴァッフェ殿に紹介できる奴隷はこちらの6人しかおりませんが、それでも大丈夫でしょうか。」
「小さな少女もいるみたいですが、ここにいる奴隷は違法性がない奴隷なのでしょうか。」
「もちろんでございます。ここにいる者達は、借金や口減らしのために売られた者で、犯罪を犯した者達は、また別の場所に入れておりますので、ご安心してください。」
「なら、ここにいる全員を購入しようと思ったら、いくらかかる?」
「全員でしょうか。それでしたら、金貨200枚と言ったところでしょうか。いかがなさいますか?」
6人で金貨200枚か、一人当たり30枚相当という事か。
人間一人の値段としては安いかもしれないが、今の俺に支払えないことはない。
それに次の仕事をするときに役立つだろう護衛をこれで買えると思えば、安い買い物なのかもしれない。
そう考えたら、即座に行動に移すことにした。
「では、全員購入します。代金は自分の天幕に保管してあるので、それを取って来たいと思うのですが、大丈夫でしょうか。」
「大丈夫です。しかし、こんな売れ残りで大丈夫なのですか?何なら後数日で新しい奴隷が来ますので、それを見てからでも遅くはないと思うのですが。」
「ここで会ったのも何かの縁でしょう。なので、大丈夫ですよ。」
「分かりました。それではこちらの手続きを進めさせてもらいますので、代金の支払いをお待ちしております。」
こうして、奴隷の購入が決まったので、大急ぎで自分の天幕に戻ると、もらった報奨金のうち200枚を数えると、それを新しい袋に詰めて、エクスラヴの待つ天幕まで持って戻ることになった。
戻ってくると、奴隷全員は先ほどまで、着ていた貫頭衣から、しっかりとした服装へと変わっていた。
エクスラヴは机に書類を広げて待っており、持ってきた代金と共に契約をするために、話をはじめることにした。