第54話
魔法陣からあふれ出すように出てくる銃を兵士が大急ぎで数を数えていく。
それを傍観しながら、次の策を考えていると、エクセルキトゥスが近づいてきた。
「ヴァッフェ殿、何か新たな策を考えているようだが、あまりお勧めは出来んぞ。」
「エクセルキトゥス様。お勧めできない理由をお聞かせ願いたいのですが。何故私が策を考えていると思ったのでしょうか。」
「顔に出ていたぞ。それにそなたが考える策とは、先ほど馬車で見せた武器の紹介や販路を形成するためのものだろうと、考えただけだ。」
「なるほど。しかしそれだけでお勧めしない理由にはならないと思うのですが。」
「その理由は簡単だ。今回の銃の購入で資金のほとんどを使ったのだ。そんな中で、武器の紹介をしたところで、売れる見込みもない。だからこそ、今はおとなしくしておくことをお勧めする。」
なるほど、今回の仕入れで全軍団の資金の枯渇が危ぶまれているのかと、エクセルキトゥスの話で確認が取れた。
なら、共和国での仕事はここまでにして、新しい販売先を探すことに尽力してもいいかもしれない。
しかし、今ここでそんなことを言えば、拘束されることは目に見えている。
なので、今はおとなしく引き下がることにしよう。
「分かりました。それではおとなしく、この受け渡しを終わらせることに尽力するといたします。」
「そうしたほうが、懸命だろうな。ここでおとなしくしといたほうが、報酬は破格なのだから、変なことをする理由もあるまい。だから、尽力してくれよ。」
「分かっております。銃の受け渡しの後は銃弾の受け渡しになりますが、兵士のほうは大丈夫でしょうか。」
「それは、いらん心配だな。こんな単調な作業など普段の任務に比べたら、あくびが出るほど楽な物だ。これで音を上げるような柔な鍛え方をしているつもりはない。」
なるほど、これも兵士の訓練の一環としているあたり、この司令官達はしたたかなのだろう。
それに、兵士は急いで数を数えながら、自分達の荷馬車に積み込みをしているのを見ていると、どの兵士も疲労を感じさせない行動をしているのが見て取れる。
「そのようでしたね。この後は、銃弾の受け渡しですので、今以上に丁重に扱わないと爆発するおそれがありますので、そこはご注意ください。」
「分かった。それは後で、すべての兵士に通達させる。それ以外に注意する点はあるか?」
「今のところ気になる点は特にないですが、荷馬車の数は足りるのですか?」
「それは余裕をもって持ってきてあるから、いらん心配だな。」
エクセルキトゥスと注意点のことについて話をしていると、銃の仕分けが終わったのか、一人の兵士が近づいてきた。
「エクセルキトゥス様、商人殿、銃の仕分けが終わりました。」
「ご苦労。それでは、続きの銃弾を出してもらっても大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。すぐに準備に取り掛かります。」
そう言って、また『スキル・武器商人』を起動させて、今度は銃弾を必要数入力する。
すると銃と同じように地面に魔法陣が出現して、そこからケースに入った状態の銃弾があふれ出してきた。
兵士はあふれ出す銃弾のケースを大急ぎで回収している。
その姿を横目にしながら、早くこの受け渡しが終わることを祈りながら、静かにその場に座って待つことにした。