第4話
宿に戻ってくると、相変わらず閑古鳥が鳴いているような状態で暇そうにしている受付の女獣人。特に苦も無く部屋の鍵を受け取ることが出来た。そして、部屋に戻ってくるとすぐさま自分の所持金を確認し始める。残りが銀貨4枚と銅貨が数十枚。これだけの資金で商売を開始しないといけないのはいささか難題ではあるが、致し方がない。
「さて、初めて『スキル・武器商人』を使ってみるか。どのような仕様かはまだ分からないが、使いにくい仕様でないことを祈ろう。」
ベッドに座りながら『スキル・武器商人』の使うため呟く。そうすると目の前に黒縁で武器の一覧が書かれたウィンドウが出現する。一覧を流し読みしていると、どのように購入するのか説明が載っていない。試しに1つ武器を選択すると、武器の詳しい説明欄とその横に投入口と分かりやすく記載されていた。
「これは便利だな。しかし、本当に誰にも見えていないのか疑問が残るが、明日の販売用にいくつかの武器を購入してみるか。」
そう呟きながら、銀貨を投入口に1枚入れると、購入可能商品が一覧で出てきた。その中からダガーと短刀をそれぞれ2本ずつ選択すると、投入口のすぐ近くに決済ボタンが出現する。そのボタンを押して購入を完了させると目の前に魔方陣が出現して購入したダガーと短刀が鞘に入った状態で落ちてくる。
「好都合だな。鞘無しで出てくると思っていたが、そこらへんは配慮してくれたのか?」
他の武器にも同じことがあるかは分からないが、今はよしとしよう。しかし、試し切りをしようにも、周りには試し切りの材料がかと思えた。
「そう言えば、携帯用の食料が袋の中に入っていたな。それで試し切りをしてみるか。」
最初の恩賞で貰っている携帯食料が手付かずのまま袋に入っているのを思い出した。試し切りにはちょうどよい物が無い今、それを使ってみることにした。取り出した干し肉に刃を入れてみると、何の引っ掛かりも無く綺麗に切ることが出来た。これなら、売り物としては上出来だろう。使った短刀は綺麗に拭いて、翌日の準備は完了した。
「これで、明日の準備は完了かな?後は麻のござと試し切り用の巻藁でも用意できれば上出来かな?」
ある程度の準備が完了すると、朝から何も食べてない腹がなる。今試し切りをした干し肉を食べながら、日も高い今のうちに明日に必要なものを買いに行くことにしよう思い、もう1度出掛ける準備をして部屋を後にする。
「なんだい、また出掛けるのかい?」
「ああ、ござと巻藁を買いに行くつもりだ。どこかいい雑貨屋を知らないか?」
「そのぐらいなら使い古しが両方店の倉庫にあるけど、買うかい?」
「いいのか?店主に知らせずにそんなことをして。」
「何言ってるんだい?私が店主なんだから、いいに決まってるよ。」
こうして店主の好意により、明日買う予定だった物をそろえることが出来た。しかし、その他にも雑貨が必要だったので、帰ってきてから購入すると断わりを入れて、大通りにある雑貨屋を目指すことにした。
到着すると、周りの店舗より二周り大きい店舗で所狭しと商品がおいてあり、お目当ての物が見つけられるか不安になるところだった。
「これは、欲しい物を探し出せるのか?」
「いらっしゃいませ。本日はどのようなものをお探しですか?」
入り口で戸惑っていると、制服を着た店員が声をかけてきた。そこで、刃物を拭く用の布と値札のための木材があるかどうか聞いてみることにした。すると、布地は手拭いかハンカチほどの大きさのものしかなく、木材も加工してある物しかないとのことだったので、ハンカチ2つを購入する。値札用の木材は、製材所にあると聞いたのでそちらに出向いて手にすることが出来た。
その帰り道、道の端々ではある噂話でもちきりだった。その内容は西の共和国に帝国が宣戦布告をした話だ。その話を詳しく聞こうにも皆噂程度にしか知らず、噂でしかないと言われた。しかし、その噂が本当であるなら、西の共和国に赴けば武器販売も成功するかもしれないと思った。
「こうなれば、明日出店を開く時に情報収集も平行してやらねばならないな。」
こうして、翌日やることは決定したので、急ぎ宿に戻ることにした。