第46話
酒場から天幕に戻ってくると、ファンデルは羊皮紙に何かを書き始めた。
「ファンデル殿、それは何を書いているのですか?」
「これは、ヴァッフェ殿の行動記録ですよ。これを元に文官・武官の方たちが、疑わしい行動をしたかどうかを判断するので、詳細を記録しておかないといけないのです。」
「なるほど。しかし、半日程度の行動記録で、疑いが晴れるのかは疑問に思ってしまうのですが、そこはどうなのですか?」
「たとえ半日だとしても、文官・武官は疑わしい行動をすれば、それを問題として貴方の同行を拒否できると思っているのですよ。」
はた迷惑な話だ。俺の『ギフト』がないと、他の軍団に銃を卸せないのに、その俺の行動を監視して、あわよくば同行を拒否しようなんて、他の軍団に迷惑がかかるだけなのにな。
しかし、何故ここまで邪険な扱いをされないといけないのか疑問ではある。
ファンデルに聞いたところで、明確な回答が出るはずもないので、心のうちに留めることにした。
ファンデルが羊皮紙に行動記録を書き終えると、羊皮紙を丸めるめてこちらに振り返って話をしてきた。
「ヴァッフェ殿、本日の予定は以上でよろしいですか?」
「そうですね。この後どこかに出掛けるつもりもないので、後はこの天幕でゆっくりしているつもりです。」
「それでは、私は今回の行動記録を提出してくるので、ここを離れないでください。外には監視の兵士もいるので、もし離れるのならその兵士に何処に行くのか報告してから、行動してください。」
「分かりました。よほどのことがない限りここにいるので、大丈夫だと思いますよ。」
「分かりました。それでは、私は提出してきますので、少し離れます。」
そう話すとファンデルは、先ほどの羊皮紙を持って天幕を後にした。
特にすることもないので、おとなしく天幕で待ってのもつまらないので、『スキル・武器商人』を起動して、新たに何か購入できる商品が増えてないか確認することにした。
すると、迫撃砲のほかに、自動小銃が追加されており、次はここら辺を薦めるのもいいかもしれない。
しばらくの間、一覧を確認しながらゆったりとしていると、ファンデルが戻ってきた。
かなり早い帰りだったので、驚いたが特に気にすることなく、迎え入れた。
「ファンデル殿、お早いお帰りで驚きましたが、提出は無事に終わったのですか?」
「記録は無事に提出を終わりました。その際に、ヴァッフェ殿に怪しい行動が無かったのか言及されたのですが、そんなもの無かったと説明して早々に帰って来ました。」
「そうですか。しかし、文官・武官の人達は私を同行させることに、かなり難色を示しているようですね。」
「その通りですね。しかし、今のところ何も問題が無いので、文官・武官達も同行させることに同意するしかないと思っている頃でしょう。」
「そうなるといいですけど。何で最初から同行を許可しなかったのかが疑問に思われるのですが、ファンデル殿はどう思いますか?」
「そうですね。私も同意見ですね。ありもしない疑惑をいつまでも捜査してないで、協力を要請していれば、もっと早い段階で、銃の戦場配備が決定していたかも知れないのにと、そう思いますよ。」
「そうですか。そう言ってもらえると助かります。とりあえずは、文官・武官の人達の決定を待つこととしますよ。」
そう話していると、外から夕食を持ってきたと二人の兵士が入ってきたので、この議論を棚に上げて、二人で夕食を食べることにした。