第42話
ようやく自分の天幕に戻ってくることが出来た。それからは以前出した、剣や槍を隅っこに片付けて、広い空間に毛布を敷いて、食事も後回しにして寝ることにした。
しばらく寝ていると、食事の準備が出来たと起こされた。天幕の外に出て、いつものように食事をすると、また毛布に包まって寝た。
腹が減って起きると、翌日の昼間になっており、牢屋で熟睡できなかった反動なのか、ぐっすり眠ってしまっていた。
天幕の外に出ると、他の人達は誰もおらず、この後の予定をどうしようか迷ったが、勾留されている間、情報屋の情報収集が出来なかったので、これから市場に向かって話を聞くことにした。
市場につくと、以前と同じように活気があるが、一部商店では商品が品切れをおこしているところも見受けられる。
しかし、以前話を聞いたときも、ここら辺にいる商人達に話を聞いたところで、詳しい話など出るはずもないと思い、どうしようか迷っていたら、周りの天幕より二周り以上大きい天幕が張られている場所を発見した。
そこが何をしているのか、気になって中に入ってみることにした。
すると、そこは酒場になっており、兵士や傭兵達が酒を飲んでいた。ここなら情報を聞き出すことが出来るかもしれないと思い、中に入ることにした。
中に入って、あたりを見渡し、相席できそうなところを見つけると、そこに向かう。
「すみません。1つ話を聞きたいことがあるんですが、いいですか?」
「うん?話を聞きたいなら、何をするか分かってるよな?」
「もちろん。一杯ご馳走しますよ。」
「分かってるじゃないか。それで、何が聞きたいんだ?」
「それは、このあたりで噂になっている、情報屋のことについてです。」
こうして相席をした傭兵から情報屋についての話を聞くことに成功した。しかし、この傭兵達も噂程度しか聞いたことが無く、むしろ探しているみたいなことを言っていた。
その中で有力な話が聞けた。
「その情報屋だけど、ここが酒場になったからか、姿を見せるようになったって店員が言っているのを聞いたことがあるぞ。」
「そうなんですか?それは何処で?」
「そこまでは知らんが、何でもある時間帯になると、カウンター席でいつも同じ酒を注文する客がいるらしくて、その人物にある言葉を投げかけると、情報を販売してくれるって話だ。」
これは新しい情報だ。しかし、その時間帯は分からないそうで、しかもどんな言葉を話せばいいのかも不明なままだった。
しかし、今まで噂程度しか話を聞けなかったが、ここに来て具体的な話を聞くことが出来たので、一歩前進したと思うことにした。
話を聞き終わると店を後にして、今後の行動をどうしようか考えながら天幕に戻ると、そこにはいつかの衛兵が俺の帰りを待っていた。
何事かと思い話を聞こうと声をかけた。
「衛兵殿、誰かお探しですか?」
「うん?ああ、商人殿、貴方を探していたのです。」
「私を?何故探していたのか気になるところですが、用件は何でしょうか?」
「実は、司令官から貴方を天幕に案内するように、指令を受けたので、ここで待っていたのですよ。」
司令官が俺を呼んでいる?何の用事か分からないが、ここで断わると後々面倒な事になりかねないので、おとなしく付いていくことにした。
司令官の待つ天幕に着くと、いつぞやの文官・武官が勢ぞろいしており、何のために呼ばれたのか不思議に思っていると、司令官に呼ばれてテーブルの近くに近寄る。
そこで、司令官から思いがけない提案をされるのであった。