第39話
大量の銃と銃弾を卸してから、自分の天幕まで道すがら情報収集をしながら帰る事にした。そうすると、先の戦闘で負傷した兵士や傭兵は、戦線から離れ後方の街で傷を癒すことにしたらしい。
その代わりの兵士や傭兵もこの野営地に続々と集まっており、以前のように活気が溢れ始めていた。
そんなことを肌に感じながら、自分の天幕に戻ってくると、外にはミルコフが待っていた。
「ヴァッフェ殿!ようやく開放されたか!無事でよかった。」
「ミルコフ殿、無事に疑いもはれたので、開放されましたよ。」
「それは、よかった。しかし、こんなに早くに開放されるとは思っていなかったぞ。」
「それに関しては、司令官が早めに銃の性能確認をしてくれて、その場で疑いを晴らしてくれたので、こうして戻ってくることが出来たのです。」
「なるほど。しかし、司令官が早めに確認したところで、他の文官・武官達が反論しなかったのか?」
「司令官が発言を抑制してくれたおかげで、特に反論なく開放されたんですよ。」
「そうか。しかし、司令官が発言を抑制すると、後から不満が出てくる可能性もあるのに、よくそんな対応をしたもんだな。」
「そればかりは、司令官の考えなので、私としては何も言えませんよ。」
ミルコフの話には、確かに言える部分がある。今回の性能確認の際に、文官・武官の発言を抑制していたし、何なら司令官の独断で裁定を下したようにも思える。それをしたら、後から不満が出てくる可能性もあるのに、何故抑制したのか疑問が残る。
そんなことを考えていると、他の団員も顔を出してきて、そちらにも無事に帰ってきた報告をした。しかし、やはり一軍の人達は俺が戻ってきても挨拶1つ無かった。それほど、嫌われているわけでもないはずなのだが、こればかりは仕方が無いことなのだろう。
そうこうしていると、団長まで外に出てきており、こちらに向かってくる。
「商人殿、無事に帰ってこれてよかった。知らせを受けていたが、こんなに早くにこっちに戻ってこれて安心した。」
「団長殿、この度は心配をおかけして申し訳ない。今後はこのようなことがおきない様に注意します。」
「今回のことは、何も商人殿のせいでは無い。帝国がまさか銃を持っているとは思ってもみなかったからな。」
「そう言ってもらって助かります。しかし、今回は私が判断を間違えた結果だと思うので、次からはもっと慎重になって判断をしたいと思います。」
そう、今回は自分の『スキル・武器商人』を周りの人達に秘匿していたせいで、いらぬ疑いをかけられたと思う。なので、次からは出来るだけ少数の人達だけにでもいいから、スキルのことを話して疑いを向けられることを避けたほうがいいと思っている。
そんなことを考えていると、団長は何かを思案する顔をしていた。
「団長殿、何か悩み事でもあるのですか?」
「まぁ、多少なりとも悩みはある。しかし、今ここで話す内容でもないから、よかったら天幕の中で話さないか?」
「大丈夫ですよ。二軍の人達には、帰還の挨拶はしたので、この後は特にこれといった用事もありませんし。」
「そう言ってもらえて助かる。じゃあ、天幕の中に入ろうか。」
そう話して、団長に促されて天幕の中に入っていく。天幕の中には一軍の人達もいて、どんな内容の話をされるのか身構えていると、団長に促されて隣の席に座ることになった。
「申し訳ないが今回の件で、一軍の皆には商人殿の『ギフト』の話はしてある。事後報告になってしまったが、改めて謝罪をしよう。」
「大丈夫ですよ。いずれは知られる能力だったので、気にしていません。しかし、何故一軍の皆様が集まっているのかが理解できていないのですが、どういう事でしょうか。」
「それなんだが。今一軍の連中の武器の消耗が激しくて、次の戦闘までには新しい武器を仕入れなければならない。だから、商人殿の『ギフト』で皆が納得できるような武器が無いか相談しようと思ってここに呼んだのだ。」
なるほど、今回は一軍全員の武器の更新をしたいから、俺に何か武器を紹介しろ、と言うことなのだろう。これは、簡単な話ではないが、納得してもらえるように武器を紹介していこうと思い、『スキル・武器商人』を起動するのであった。