第28話
自分の天幕に入って、先ほど貰った書簡を改めて広げるとそこには、簡単な挨拶と共に今回披露した銃への評価が書かれていた。読み進めると、軍部ではこの銃の有用性を感じており、他の軍団の司令官にもこの情報は共有することになると書いてある。そして、可能であれば今日から3日後の昼間に他の司令官を揃えて、もう1度披露してもらいたいとのことだった。
かなりの高評価をしてもらったと受け取ってもいい内容だ。これなら、軍部に銃の販売は確実かもしれない。しかし、他の司令官がどのような評価をするかによって、また違ってくる。
書簡から目を離し、これからどうしようか考えてみた。
1つはこのまま書簡の通り銃の披露をして軍の保護下に入ること。これは最初の目標を達成できなくなる可能性が高くなるので却下。2つ目は銃の仕入れをすると言って戦場から離れる。この案だと、販路が形成できなくなるのし、下手したら軍から追跡されかねないのでこれも却下。3つ目は、銃の値段を吊り上げて、少量の銃を納品するだけにとどめるだけにすること。これも販路の形成に不利になりかねないので、これも却下。
こう考えると、どうしたら自分の正体を隠したまま販売できるのか、解決策が見つからない。今ここで悩んでもいい案は浮かんでこないだろう。そう考え少し外の空気を吸いに出ることにした。
外に出てからも、どうしようか悩んでいると、訓練が終わったのか団員達が戻ってきた。皆土塗れの姿だった。そんなに激しい訓練をしてきたのかと疑問に思ったが、俺が口を出す問題でもないので黙っていることにした。
戻ってきた団員に軽く挨拶をして、少しの間外出すると話すと、団長からはあまり遠くに行かないようにと釘をさされた。俺がやれることは少ないので、そんなに心配しなくてもよいのではないかと思いながらも了承の返事だけは返しておく。
近くを散策しながら、考え事をしていると市場まで来てしまった。
すぐに引き返してもよかったが、何か新しい情報がないか調べるのもいいかもしれない。そう考えたら、即行動に移すことにした。市場を歩き回りながら、暇そうにしている商人に声をかけることにした。
「こんにちは。すみませんが、一昨日この場所についてばかりで、あまり情報を知らないので、何か面白い話はありますか?」
「らっしゃい。いきなり情報がほしいって聞かれても情報がほしいのなら、自分の旅団にでも聞くのが一番だぜ。」
「私が所属している旅団に聞いても、戦線が膠着状態になった話しか聞けないので、他の人から何か聞けないかと思っていまして。」
「なるほど、それならうちらも同じような話しか聞いてないな。それなら、この市場に情報を売買している情報屋がいるって話だぜ。そいつを見つけ出せれば何か話しを聞けるかも知れんぞ。」
「なるほど。情報屋ですか。お金が掛かりそうですが、1度探してみるのもいいかもしれませんね。」
「ああ、噂じゃ軍部の上層部しか知らないような情報も扱ってるって話だぜ。」
「それは興味がありますね。しかし、この雑多な市場の中から、探すのは骨が折れそうですね。」
「まぁ、噂程度しか知らんが、もし見つけることができたら、俺にも教えてほしいぜ。」
「分かりました。見つけた時は紹介できるようにしてみますよ。」
「ありがとよ。しかし何にも買ってかないのか?」
「今は手持ちを持ってきてないので、申し訳ない。」
「しょうがねえな。ならまた今度にでも買いに来てくれよ。」
「分かりました。今度は購入するために来ますね。」
そう話、その場を離れることにした。
しかし、情報屋か。これは新しい情報が手に入ったな。この話が本当なら、俺が知らない情報も持っている可能性もある。
今すぐに探したい思いもあったが、時間がだいぶ経ってしまったので、今はおとなしく自分の天幕に戻ることにした。しかし、情報屋の話は団長やミルコフなら知っているかもしれないと思い、天幕に戻ったら詳しい話を聞こうと思いながら、来た道を引き返すことにした。