第26話
団長と話しながら天幕に戻ってくると、団員は全員外出したのか誰もいなかった。団長はため息をはきながら二軍の連中が戻ってきたら先ほどの話をするように言うと、自分の天幕へと戻っていく。
俺も自分の天幕に戻ると、これからのことを少し考えてみた。
今回の銃のお披露目会は、想像していたよりはるかに上の評価してもらったが、箝口令を厳命するほどの評価とは考えもしなかった。それだけ銃の有用性が発揮できたと思えばいいのかもしれないが、逆に軍に束縛されるような感じがした。
この結果から推察すると、今後軍の管理下に置かれるだろうと思われる。しかし、それでは最初の計画とは異なる事態になりかねない。そう考えると、どこかの機会でこの戦場とはお別れをしないといけない。しかしその機会を逃すと、永遠に共和国に支配されかねない。
考えることは山ほどあるが、今はこの戦場に銃を普及させなければならない。そのためにも軍資金が必要になってくる。もし、軍に配備されるのなら価格設定や前金の要求などしないと、大量販売することは難しいだろう。頭を悩ませることは沢山あるが、今心配しても始まらない。
そうこうしていると、外から声が聞こえ始めた。出入り口から外に少し顔を覗かせてみると、ミルコフや他の団員達が戻ってきていた。
ちょうどいい機会だったので、ミルコフ達二軍の人達を天幕へと呼んだ。休息時間だったためか、全員が酒を飲んで顔が赤らんでいる。酒を飲む以外やることが無いのだろう。そう思うとどこか納得のできる状況だが、今から重要な話をするのに大丈夫だろうかと心配になってくる。
二軍の全員が天幕に入ってくると、床に円形に座ってもらい話を始める。
「今回、二軍の皆様に集まってもらったのは、先に紹介した銃のことに関する話です。」
「何だ、ヴァッフェ殿。銃の評価が悪かったから俺達に買ってもらおうって魂胆か?」
「違います。むしろ高評価してもらいました。そこで、軍の司令官から銃の情報に関して箝口令がしかれることになりました。よって先に紹介した二軍の皆様は銃の情報などは外部に話すことを禁ずると言う内容です。」
「それはまた、結構大事になっているじゃないか。」
「情報統制をするって事は、軍部でもかなりの高評価だったて事か。」
「そうです。なので、今まで見てきた銃の情報は他言無用でお願いします。」
そこまで話すと、二軍の全員が真剣な目つきになった。それもそのはず、自分達以外は銃のことなど分かるはずもないのだが、その情報がどれだけ大切なのかも理解できたはずだ。下手したら、軍から監視の目をつけられる可能性すらある。その考えにいたったのかは分からないが、全員の目が本気になった。
少しして、ミルコフから質問された。
「ヴァッフェ殿、情報統制するって事は、俺達も軍から目をつけられると言うことか?」
「そこはまだ分かりません。近く司令官から何か指示があると思いますので、それまではくれぐれも銃の情報を話さないようにお願いします。」
「分かった。ここにいる全員情報の漏洩をしないように心がけよう。今のところはそれでいいか?」
「大丈夫ですよ。また詳しいことが決まり次第教えますので、それまでは十分注意をしてもらえればいいです。」
話が済むと、全員真剣な目つきのまま天幕を出て行く。これだけ釘をさしとけば問題ないだろうと思う。
しかし、ここまで大事になるとは思っていなかったが、これで一段落ついた。
とりあえずは今できることはすべてした。この後はやることが無いので、自分の天幕で連絡が来るまでおとなしく待っていることにしよう。そう思ったら眠気が襲ってきたので、毛布を床に敷いて寝ることにした。