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3

山に入ると、後は獣道しかない。


まるで時が止まったかのように、森の中は静かだ。


しかし私は迷うことなく歩く。


しかし…寒い。


バックから買ったココアの缶を取り出し、飲んだ。


あたたかさと甘さにほっと一息。


これから向かう所は、とても寒いからな。


30分ほど歩いて、私は山の中の古びた社にたどり着いた。


「リン! いるのか?」


社に向かって声をかけると、袴姿の女の子・リンが中からひょっこり姿を現した。


「マカ先輩! お久し振りです」


リンと共に、この山の神々であるコムラとミトリが出てきた。


「約束の物は用意できたか?」


「もちろん! はい、コレをどうぞ。父からです」


リンはそう言って、大事そうに抱えていた物を私に差し出した。


私は受け取り、表面の紙を丁寧に外して、中身を確認した。


―丸い鏡―


一転の曇りもない、美しい鏡だ。


手のひらサイズで、装飾は銀。派手ではないものの、細かくて、キレイだ。


そして―強い力が込められている。


「…確かに、注文通りだな」


「ええ。おかげで父は疲れて、眠っちゃいました」


困ったというように、リンは肩を竦めた。


彼女は私の学校の後輩だった。


でもコムラに恋をし、そしてこの山神の子孫であることから、学校を転校し、ここへ引っ越した。


リンの言う「父」とは実父のことではなく、山の主のことだ。


今では神々と人間の橋渡し役を頑張っている。


…その頑張りを、血族共にも見習わせたい!


「マカ、そっちはどう?」


コムラに声をかけられ、現実に戻る。


「まあまあ順調だな。そっちは慌しいみたいだな」


「そうね。でもまた人間達に触れ合うことができて、ちょっと嬉しいかも」


ミトリがはにかみながら言う。


リンの動きは大したものだ。


頑なだった神々と、人間の心を通い合わせているんだから。


…そのうち、何か礼をしなければな。


この頼み物も、リンがいたからできたことだし…。


「…とと、あんまりゆっくりは出来ないんだった」


慌てて鏡を包み、バックに入れる。


「リン、コムラ、ミトリ。悪いが今日はここまでな。礼はまた後日、ゆっくりたっぷりするから」


「分かったわ」


「気を付けて帰りなよ」


「また遊びに来てね!」


笑顔の三人と別れ、私は山を下りた。


今日は予定がつまっている。


ゆっくりは出来ないのが、少しさみしいな。


しかし電車の時間が迫っていた。


少し急ぎ足で山を下りる。


山の冷たくも清浄な空気が体に満ち、少し浄化されたようだ。


…ここんとこ、疲れていたからな。



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