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山道を少し歩くと、小さな町工場が見えた。
「んっ…?」
しかし何か違和感を感じる。
思わずジッと見ていると、工場の中から数人の作業員が出てきた。
おそらく休憩時間になったんだろう。
タバコを吸う場所に集まり、険しい表情になっている。
「もうこの工場、怖くてたまんねーよ」
「ああ、例の首…また出たんだろう?」
「あの注意報聞くたびに、背筋が凍るよ」
…どうやら怪談めいた話があるようだ。
確かにこの工場、黒いモヤが溢れている。
というより、凝り固まっている。
ここで不幸な死に方をした者がいるんだろう。
「だがこの土地は…」
ちょっとおかしい。
まるで人成らざるモノの棲み家だ。
妙な気配が工場を覆いかぶるように存在していて、気配の中からモヤがあふれ出している。
コレでは人死には減らないな。
一定の期間を置いて、気配の主が人を喰らう。
喰らわれた人間もまた、人成らざるモノへと変わる。
そうしてこの土地に棲み続けているのか、気配の主は。
「まっ、私には関係ないことだな」
歪んだ土地神がいる場所など、数え切れないほどある。
ここに工場が建ってしまったのも、不幸な出来事だとしか言いようがない。
私には関係のないこと。
だから歩き出した。