深夜、外から…
「相変わらず姉さんの周りには、人がいっぱい集まるなぁ」
マカの住むマンションの向かいの高層ビルの屋上に、1人の青年がいた。
黒尽くめの服装に、顔はフードで覆って隠している。
しかし夜の闇には、二つの赤い眼が光を放って見えた。
「あんまり守るものが多過ぎると、後で苦労してもしらないよ?」
マノンは楽しそうに笑いながら、マカの姿を見つめる。
マカにとって、マノンがこの世でたった一人、愛憎するものであるように。
またマノンにとってもマカは、強く愛憎を持つものなのだ。
「大分力も溜まったし、そろそろ再会しようか?」
ふわっと風にふかれ、フードが取れた。
色素の薄かった髪の色は、今は琥珀色になっていた。
ぼやけていた存在感も、今では大きな闇を背負って立ってもおかしくないほど、強くなった。
「ボクのこと、忘れちゃわないうちに、再戦といこうか」
マノンがスッと眼を細め、殺気を込めた視線をマカに向けた。
「っ!?」
ただならない気配を感じて、マカは突如立ち上がった。
「マカさん? どうしたの?」
レイラの問いにも答えず、マカはベランダに急いで出た。
冷たい冬の夜風に触れるも、構わず向かいにある高層ビルの屋上を見上げた。
しかしそこには誰もいないし、何の気配もなかった。
「…マカさま? どうされました?」
「風邪引いちゃうよぉ。早く中に入りなよ~」
カエデとモモに声をかけられ、マカは唇を噛み締めた。
「…ああ、すぐ戻る」
マカは踵を返すも、後ろ髪引かれる思いで、屋上を見続けた。
そして胸に湧き上がる1つの予感を感じた。
――逃れられぬ血の運命から作られた戦いを――
【終わり】