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商談
あまりにもあっさりと皇太子に言われ、キーツは現実を受け入れられなかった。教会だけ神が授けたはずの神聖な絹糸が、大して信心深くもない下っ端貴族の手の中にある。どうして。皇太子は目を白黒させるキーツをおもしろそうに眺めている。
「絹も、この世に存在する以上はただのモノだ。それに適当な伝説をでっち上げてありがたがっているのが、教会だ。教会の権威は人間を破門できることと、絹の存在だ。むしろ、絹の存在によって教会は神の実在を人間に信じさせ、破門された者を人間ではないものとして人々に扱わせることに成功している、ともいえる。そんなくだらない事にかかわずらなけらばならない世界を、私の絹とあなたの商才で変えてみないか?」




