(9)15時 大学女子学生寮
ミフユの方が少し早く質問を終えた。教室内で邪魔にならないところで待っていると数分後にマミも質問を終えてうん、うん、と言いながらミフユの方へ来た。
「さあ、ラストの寮の見学!」
「もうひと頑張りしますか!」
空元気でも元気は元気。そう思いながら自分に気合いを入れるミフユ。二人は朝貰っていたパンフレットに挟み込まれていた構内図の紙に載っていた女子学生寮への道筋を確認した。
「ここから10分もかからないのかあ。今時サボりなんて無理だよーって大学に入った高校の先輩には言われているけど寮だと尚更ってなりそう」
マミは相談コーナーで聞いた話をミフユに伝えた。
「てっきり入寮が規則かと思ったら今は自由だって言っていたよ。私は自宅から通うかも。その方が都合いい面はあるんだよね。お父さんは好きにしろって言いそうだけど」
「そうなんだ。私は家が神奈川だから寮費も安いし合格できたら入寮前提かなあ」
そんな事を言いながら高架道路の下を通る歩道橋を渡って山が見える方へ歩いて行くとほどなく女子学生寮に着いた。
寮では女子学生寮の自治組織の人達が説明対応に当たっていた。
ミフユとマミは一緒に部屋も見学した。トイレ付き個室でお風呂は大浴場を使う事になっていた。マミが感心して言った。
「へー。とてもきれいですよねえ」
寮の空き部屋を開放していて、そこの質問に対応してくれている1回生で制服姿の女子学生が答えた。
「整理整頓清掃は旧商船大学の流れを汲んでいるから厳しいのよね。先輩達から引き継がれてきた指導、自治活動のおかげだね。女子学生寮が出来たのは震災後だったから最初から個室。男子学生寮は昔4人部屋だったって。流石に改装されてそう変わりない個室になったとは聞いてるよ」
ミフユは頭によぎった事を聞いた
「あ、ところで食堂ってどうです?」
「朝と晩、贅沢ではないけど美味しいよ。少なくとも私の舌には合ってる」
「安心しました。合格して入寮できるように頑張ります」
「楽しみにしてるね」
そういって先輩になるかもしれない女子学生は二人を激励してくれた。