(8)14時20分 相談コーナーと制服
14時20分、後ろ髪を引かれつつも船を降りて学科・コース別受験説明会でAO入試、推薦、一般入試について説明を聞いた。一般・推薦入試では1回生終了時にコース振り分けがあるという説明があった。
説明会終了後、大学生活について学校及び在学生が説明しているなんでも相談室的なコーナーの教室へミフユとマミと一緒に向かいながらどのコースで受けるかという話に及んだ。
ミフユはもう心に決めていた。
「私は船長になりたいから航海マネジメントコースでAO入試かなあ。狭き門だけどこれで入ったらコース変更はないから安心だし」
マミはそういうミフユの決意、確信を眩しく感じた。
「私もそうしようかなって思っているけど、輸送研究室も面白かったし造船関係も興味あるんだよね。もう少し考えようかなって思ってる」
AO入試と一般入試と二段階で受ける手もある。このあたりはちゃんと戦略考えないとだめかなあと思うマミ。
相談コーナーが置かれた教室はいろんな見学を終えた高校生と保護者が質問のために集まっていて賑わっていた。ミフユとマミは10分ほど待った上でそれぞれ大学の先生と在校生のいる席に案内された。
ミフユは寮の話を聞いた上で制服について質問をした。
「海事科学部は制服があると聞いたんですがユニセックスタイプだったりしますか?」
若手研究者らしい男性教官と4回生らしい髪の毛をお団子結びでまとめた制服姿の女子学生は目を見合わせた。女子学生が言葉を慎重に選んだ。
「私の着ているのが実際その制服だけど見ての通りスカート。男女別になっているけど」
「私の学校、女子はスラックスも選択可能なんです。で、気になって」
「なるほどね。高校もそういうところ増えてるもんね。そういうのいいよねえ。船だと制服で勤務なんて案外しないし作業服だとパンツルックだから気にした事なかったけど、そういうのなら私もそうしたかったかも」
「制服を着る機会ってどんな時です?」
「乗船実習の上陸日とか公式行事の時。今日のオープンキャンパスや入学式、卒業式とかかな。通常の講義受講時は着ないから」
男性教官は何か思うところはあったみたいだけど特段口を挟む事はなかった。
マミは大学の女子学生寮について質問をしていた。
「家の関係で平日自宅に戻りたい日もあるんですが」
「お家近いの?」
マミの質問の対応で入っていた北見朱理と名乗った頼もしそうな先輩学生が確認の質問をした。
「はい。電車で数駅なんです。寮に入ったとして父の様子を見に帰りたくて」
「外泊届けは当日お昼までに事前申請。ネットでも出せるから。あと昔は2回生まで入寮原則だったけど今は自由になってます。だから自宅から通うのも問題ないですよ」
「あー、そうだったんですね。お父さんがここの卒業生で寮は必須だからって思っていて寂しがってしまって」
北見朱理は感じた疑問を口にするような事はなく黙って頷いていた。