(3)10時15分 研究室訪問ツアー 航海マネジメントコース
多くの人は午前中に行われる大学練習船の体験航海の方へと流れていた。ミフユは去年も見にきていてその時練習船は体験済みだったので午後、空き時間に一昨年知り合いになっていた船長さんに挨拶兼ねて行こうと頭の中のでメモした。
申し込み時に決めていた予定は次の通りだった。
(10:15ー11:30)研究室訪問ツアー 航海マネジメントコース
(11:30ー12:15)研究紹介 グローバル輸送科学科(航海マネジメントコース)
(12:30ー13:10)学部・入試説明会
(14:20ー15:00)学科・コース別説明会
この他に教員・在学生による相談コーナーが開会中設けられていたので空き時間に立ち寄るつもりだった。
今日のオープンキャンパスは16時までなので時間はあるようでない。学食でランチは楽しみ……って思っていたけど考えてみたらお昼食べてる暇あるのかな。ミフユはそんな事を考えながら貰ったパンフレットに挟み込まれていた構内図を見て研究室訪問ツアーで指定された集合場所の教室へ足早で向かった。
ミフユは50人ほど座れそうな教室に入った。3人掛けの机と椅子3列あって何人かまばらに腰掛けている。出入り口寄りの廊下列の最前列左側の席に座ると正門で隣にいた子が右側の座席の方に来て話しかけて来た。
「一緒の人とかいないなら、ここ、いい?」
「もちろん、どうぞ」
「じゃあ、ありがとう」
そういうとその子は右側の席に腰掛けた。
研究室訪問ツアーの航海マネジメントコースは定員20名。定刻の10時15分に教室に集まった高校生のうち8名が女子だった。
ほどなく20代後半ぐらいの白衣に学生証をぶら下げたクマみたいな男性が同じような服装の女性と一緒に入ってきた。クマさんは左腕の高級そうな時針式の腕時計をチラッと見た。院生にしてはやけにいい時計していたけど防水ではなさそう。
「研修室訪問ツアー航海マネジメントコースにようこそ。みなさんの案内役を仰せつかったここの院の修士2年の稲山です。もう1人修士1年の最上さんと2人でガイドするのでよろしく」
最上さんもみんなに軽く会釈していた。少し茶の入った髪の毛をお団子結びにしている。目付きは鋭いのに意外に可愛らしい感じの人でピンクのデジタル腕時計をしていた。耐久性が売りのブランド。実用本位。
「今日は輸送研究室と航行研究室を見学して貰うんだけど部屋、狭いから10名ずつ二手に分けます。……えっと、廊下側ちょっと多いから後ろの2人は窓側に移動してくれるかな。……ありがとう。窓側は最上さんにお任せっと」
最上さんがわかったという風に手を振った。
「じゃ、廊下側のみんなは俺についてきて」