(2)10時 大学正門前
正門前に集まったオープンキャンパス参加者を見ていると私服で保護者連れでもない女子が一人いた。ジーパンに青いシャツ姿。ショートの軽そうな髪型の子だった。向こうも保護者なし・私服の女子という条件に周囲で合致するのがミフユだけだと気付いたようでちょっと目があったので会釈しておく。
通用口から半袖ワイシャツでネクタイ姿の人が出てきて手持ち式の拡声器で軽く咳払いした。
「10時に開門しますので門の前に1列2人で2列に並んで下さい」
ミフユは適当に右側の列に並んだ。先程目が合った子が隣に来ていた。蒸し暑い中、立って待ってるのは好きな人はいないだろう。早く10時にならないかなあとチラチラとスマフォを見てしまう。するとメッセの着信でスマフォが振動した。画面を見たら陽子ちゃんからだった。
陽子:暑中見舞い申し上げます。冬ちゃん、今日は神戸でオープンキャンパスだったっけ?
メッセージと一緒に私が大ファンのアニメ映画の「バードさんの日本旅行記」主人公であるイザベラ・バードさんが笑顔でスイカと風鈴で囲まれているスタンプを送って来てくれてるところはさすが親友。
ミフユ:正門前で入場待ち。今日の神戸はとっても蒸し暑いけど頑張ります。
あえて正月に雑煮を頬張るバードさんのスタンプを付けて返信。
陽子:うわあ、何、この季節外れのスタンプ。こっちだって暑いのに。冬ちゃんのイケズ!!!な〜んてね。冬ちゃん、倒れない程度に頑張って。私も受験勉強頑張ります。
思わず笑ってしまう。
10時。定刻ジャストに大学の人と守衛さんの手で正門が開門された。大学の人がプリントアウトされたオープンキャンパスの入場券やスマフォのメールを確認している。
ミフユはスマフォの万が一のバッテリー切れを嫌って神奈川の自宅であらかじめ印刷しておいた入場券を見せた。となりの子はスマフォの画面を見せているのか、ふーん。地元の子なのかな。
確認が済むとオープンキャンパスのパンフレットなど入った大型封筒を手渡されたのでお礼を言って構内に入った。封筒の中にどこかの企業のPRが印刷された丸い厚紙のウチワが入っていたので取り出して思わずパタパタさせた。気休めだけど涼しくは感じる。