転校初日
それは僕がまだ彼を知らないときだった。
バンッ!バンッ!
「え?」
突然銃声のようなものが聞こえた。しかもこの音の大きさ的にこの近くだ。
銃声、か…行けば自分も撃たれるのだろうか?、そんなことを考えながら僕は音の発信源の方へあるき出した。
その音の発信源はあながちすぐに見つかった。そしてその音の犠牲者も見つけた。そこはくらい人通りの少ない道の側に建つ建物と建物の間の裏路地だった。そこには二人の男がいて、何やら話している。
「ったく…こいつ一体何者なんだ?何発撃っても倒れねーから全弾使っちまったよ…」冷静そうな男が多少息を切らしながら話している
「だーからこんなおおっぴらな所で取引はやめようって言ったのに!!
案の定見られちまったじゃねぇか!!」声を荒げてもう一人の男がもう一人に文句を言っている。
「大丈夫、このとおり始末したろ。」そう言って冷静な男が見る先には赤い水溜りのようなものがあり、その上には何か大きな物が転がっている。
「問題はそこじゃねぇ!!こいつが死んだってことはこいつの親だの知り合いだのがすぐに騒ぎだしてサツの野郎がすぐに嗅ぎ回っちまう!それが問題なんだよ!」
「安心しろよ、幸いここは人道理の少ない裏路地、死体を綺麗さっぱり片付けちまえば足はつかねぇよ」
話を聞く限り、彼らは人殺しだろう。そしてあの転がっている物は人だ。彼に銃で殺された、人。
(まったく、転校して登校初日にこんな目に合うなんて…でもあの人たちを無視するわけにはいかないな。何かやばい取引してるようだし、第一に人を殺している。あの二人を逃がすわけにはいかない。)
後で気づいたが、その時の僕はものすごく冷静だった。目の前で人が死んでいるのに。目の前に人殺しがいるのに。
やはり僕は…
「おい待て、誰だ!?」
人殺しの二人のうち一人が僕の存在に気がついた。
仕方ないので僕は隠れていた壁からゆっくりと彼らの前に歩み出た。
「お前、いつから見てた?」
どうせどう答えても殺してくるのは分かってたから「あんたらが人撃ってるとこくらいかな」と答えた。
「やっぱりこんな所で取引なんてするんじゃなかったんだ!」さっき文句ばっか言ってたもう一人のやつが言った。
「うるさい黙ってろ!」もう一人の冷静なやつが声を荒げて言った。そして「悪いな、見たものには死んでもらわなきゃいけない。君はまだ若いな、学生か?短い人生ご苦労様。」そう言いながら銃を装填しそのまま僕に向けてきた。あと数秒くらいで撃たれるだろう。痛いんだろうな。
僕は"また"死ぬのか…
「はーいそこまで〜」
彼らの後ろから声が聞こえ、次の瞬間
「グァッ!?」銃を僕に向けた男が後ろから首を腕で締められた。男は苦しそうにもがくが腕が緩まるわけもなく、そのうち男は気絶してしまった。
「え?」もう一人は何が起きたか理解できず、倒れたもう一人を驚きと恐怖が入り混じった目で見つめていた。
「おいこっちだ、こっちを見ろ」倒れた相棒に釘付けだった目を声の主の方へ持っていきその姿を見た。僕もその声の方を見た。そして驚きのあまりに僕は声が出なかった。
「お、おおお前!なぜ…なんで!?殺したはずなのに!!」そう言いながらたじろぐ男に対し、その"殺されたはず"の男は「あ?俺を殺す?できるもんならやってほしいね」そう言って男を殴り、気絶させてしまった。
何が起こっているのか…いや、何が起きているのは分かっていた。ただ一つ分からないことがあった。それは、なぜ彼が生きているのか。