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予期せぬ戦力低下

「ふむ……レスト君がそうすべきと思ったのなら、こちらとしては構わないよ」


 イブキさんに連絡を取り、クリスに遺物を貸与する許可を求めたところ、あっさり了承された。


「助かります」

「レスト君に連絡を取りたい時は君が今使っている遺物──腕輪の方に繋げばいいんだね?」

「はい、今後はそちらにお願いします」


 俺がそう言うと腕輪の向こうから何かを操作する気配が伝わってくる。多分着歴からのアドレス登録みたいなことをしているのだろう。

 完全に携帯の番号が変わったときのやり取りだなこれ。

 しかしスムーズに話が進んで良かった。俺は今、小用と偽って連絡を取っているので長時間の会話は避けたい。


「よし完了っと。さて遺物の件は、まぁいいんだけど……」


 これで話は終わりと思っていたら、何やら歯切れの悪い物言いをされる。

 あ、凄い嫌な予感がする。


「実はレスト君から中々連絡が来ないせいで、冬眠前の熊みたいに落ち着きなく辺りを徘徊してた友人がいてね……」

「……」


 予感は確信に変わった。


「今は力尽きて寝て──」


 イブキさんがそこまで言ったところで、突如何かが駆けてくる足音と強烈な衝撃を受けた物体が吹き飛び、壁か地面に激突したかのような轟音が鳴り響いた。

 どうしよう……見えてないのに向こうで何が起きたのか、手に取るように分かるんだけど。

 今すぐ通信を切りたいまである。が、それをすれば間違いなく後の災禍となるので耐える。

 ……既にそうなっている気もするが。

 俺は覚悟を決めると、先ほどの轟音により少し痛む耳から腕輪を離して、来るべき衝撃に備える。


「レスト!! 襲撃を受けたと聞いたが大丈夫なのか!? リシアはどうしている!!」


 予想通りの展開。

 親父さんが腕輪の向こうから凄まじい勢いと声量でもってまくし立ててきた。


「えっと……かなり危ない橋は渡りましたが、何とか無事に凌げました。リシアは今、少し離れたとこで寛いでます。……イブキさんから何も聞いてないんですか?」

「無論聞いた。が、本人から直接聞かねば安心は出来ん! 本当はこちらから連絡を入れたかったが、奴が向こうから連絡してくるのを待つべきと言って聞かぬせいで散々焦らされたわ!」


 なるほど。イブキさんが気を使ってくれたらしい。

 しかしこの剣幕から察するに相当骨を折ったのではなかろうか。なんならたった今、物理的にも折れてそうだし……。


「連絡が遅くなってすいません……」

「全くだ! しかし遺物を操作出来ないのがこんな形で響くとは……」


 あ、今まで強引な手段に出られなかったのはそういう訳か。

 機械音痴……というよりは恐らく巨躯のせいで細かい作業が不得手なのだろう。……本を読むのが苦手なのはその辺もありそう。

 いやそんなことより、とりあえず今後の方針を伝えよう。


「これもイブキさんから聞いてるでしょうが、俺たちはこのまま緋竜の山を目指します」

「そう、だな……。基本的に戦闘が不得手な金狐族の村に戻るよりはその方がよかろう。……これ以上迷惑をかけるのも憚られるしな」


 その点は俺も気になっていた。一応向こうの要求は飲んだが、それで相殺出来ているとはとても言えないと思う。


「彼らは外部への干渉を良しとしないので難しいかも知れんが、もし可能そうであるなら協力を仰いでみるといい。緋竜族は単純な膂力に関してなら、我より優れている者も多い故な」


 群れを統べる長──即ちその群れの中で最強──の親父さん以上のやつがごろごろしてるのか……。

 あ、ヤバイ。大事なことを聞き忘れてた。


「彼らの遺跡に対するスタンスはどんな感じなんですか?」


 まぁ協力を仰ぐように勧めてきたくらいだから、恐らく平気だと思われるが念のため聞いておく。


「みだりに触れるべき物ではない、といったところだな」

「……微妙なとこですね」


 真正面から対立とまではいかないが90度くらいズレている。

 てか待て。これって金狐族と正反対じゃねーか! まさか連絡取れなくなったのって、単純に絶縁されたからだったりしないだろうな……。

 などと思っていると、


「まぁ上手い具合に交渉して体よく利用してやればよい」


 親父さんがさらっと酷いこと言い出した。

 丸投げな上に凄まじく腹黒い! しかも交渉って、その役が務まるのはどう考えても俺だけなんだが。いやコトノハなら……とも思ったが、あれは詰めが甘いからやっぱ無いな。


「善処します」

「何故だろうな……。前向きな発言であるはずなのに、誠意のような物が欠片も見当たらなかった気がするのだが」


 あんな発言に対して誠意ある返答を求められても困る。


「気のせいです。じゃあそろそろ──」


 俺がそう言って連絡を終えようとしたところ、


『レストさん! レーダーに感ありです!!』


 イロハから回線に割り込む形で連絡が入った。


「……!!」

『凄い速度で接近して──あ、今見えました! ウサギもどきっぽいです!』


 イロハの報告を聞いて、とりあえず安堵する。

 ウサギもどきと言えば俺が一人で倒せた程度の相手だ。リシアやレティシアがいるのだから楽勝……。そこまで考えて、気付く。


 クリスに事情を伏せたまま撃退するのは難儀なのでは?


 リシアとクロエは普通の獣ということになっている。魔術の使用は勿論だが魔獣を物理的に倒したとしても、確実に普通でないとバレるだろう。


 唯一コトノハは全力で戦闘可能だが、本人や親父さんの言からして戦闘が得意だとは思えない。前衛型でないのも明白なので角による猛攻を凌げるかはかなり怪しい。


 こうなるとクリスとレティシアしか残らない訳だが、クリスの剣の技量が不明なのと、レティシアがサポートした場合、魔術の訓練の影響で正体が露見するリスクがある。


 なにこの縛りプレイ。死ぬほど面倒過ぎる……。

 こちらの正体だけでも先に明かしておくべきだったか。

 ってそんな思考は後だな。急いで向かわねば!


「親父さん! ちょっと緊急事態なので失礼します!!」


 俺はそう言って通信を終えるとすぐさま元来た道を駆け出した。



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