表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/106

魔術の訓練、再び

 謎を解こうとすると新たな謎が湧いてくるいつもの流れを経て、最終的に俺の回路の件は放置される事となった。

 現状は実害無いし、腕輪を解析しないと何一つわかんないからね。仕方無いね。

 ……緋竜の件が片付いたら本気で軍の施設を探そう。


 レティシアの件はと言うと、こちらは俺がクリスに魔術の訓練をするよう促す事となった。

 緊急時でも無いのに化身して、無理矢理パスを開いて──ってのは、やはりどうなんだって話である。

 レティシア自身もクリスに苦痛を与えるのは本意ではないし、秘儀による化身や人化も、クリスと二人でしっかり話して、了承を得てからしたいとのこと。


 ……このリス、すげー思慮深いな? いやまぁ俺の時は他に方法が無かったからだし、リシアやクロエが思慮深くないって言ってる訳じゃないんだけどね? ……今、何か引っ掛かったような……まぁいいか。

 あと自身が魔術を扱える事も、その時までは告げない方向で行く(ハイライトの消えた瞳でバラしたら殺すと脅された)らしい。

 当然ながら誰一人として異を唱えるものはいなかった。

 これはクリスとレティシアの問題だから。

 ってのは無論建前で、何より死にたく無かったよね。

 イロハによればリシアよりナノマシン適応が高いとの事なので絶対に逆らいたくない。そしてこの話を聞いてもう一つ思ったのは、レティシアが軽率でなくて本当に良かったって事だ。

 最悪の場合、クリスは俺以上の頭痛を味わう羽目になってたんですよね、これ。親父さんよりは劣るだろうが、それでも常人には耐えられないレベルの痛みに襲われてたんじゃなかろうか……。


 まぁそんな感じで早朝の密談を終えて、完全に日も昇った今、朝食の準備をしているクリスにどう話を振るか考えている。

 ちなみにクリスが起きる前にイロハは離れた位置に待機させたし、リシアは当然人化を解いている。


「それにしても、リシアちゃんとクロエちゃんが無事目覚めて良かったですね」


 何と言おうか迷っていたらクリスに機先を制された。

 いや何でバトルみたいに言ってんだよ。

 あくびを噛み殺している二匹に目を向けながら答える。


「あぁ、クリスも心配してくれてありがとな」

「いえ……それくらいしか出来ず申し訳無いです」


 そう力無く告げるクリス。

 何というか、とことん善人って感じだなぁ。レティシアがベタ惚れなのも頷ける。

 っと、そうだ。本題を忘れかけてた。


「そいやクリスに聞きたいことがあるんだけどさ」

「はい、何ですか?」


 鍋をかき混ぜながらこちらに応じるクリス。

 しかし敬語云々は辞めても物腰が丁寧なせいか、クリスの方はそれほど変化無いんだよな……。昨日の口調に関する提案はこちらのための物だったのではと思う。


「クリスって魔術とか使えたりする? コトノハの魔術で気配を消してた俺達に気付けた理由が気になっててさ」


 もちろん俺はクリスが魔術が使えないと知っている。レティシアとイロハの話で確証が取れてるし。これはあくまで前振りだ。

 しかし場所まではわかっていなかったとはいえ、こちらの存在に気付けた理由は何だったのか。そう思って、ついでに聞いた訳だが、


「残念ながら魔術の心得は無いですね。レストさん達に気付いたのは、実は僕じゃないんですよ」


 考えてみれば簡単な話だったか……。

 クリスは自身の肩に乗ったレティシアに視線をやりながら続ける。


「レティシアは何かの異常を感じると、服を引っ張って教えてくれるんですよ。そのお陰で今まで何度か命を助けられてます」

「そういうことか……」

「やはり小さくても獣、ということなんでしょうね」


 そう相棒を誇るように語るクリスに相槌を打ちながら思う。

 レティシアさん、完全に護衛獣になってますね。

 恐らく危険な生物を前以て排除したり等、他にも色々手を貸していたと思われる。よく今までバレなかったな……。


「それは凄いな。でも、そればかりに頼りきりってのも問題じゃないか?」


 そう言った瞬間、謎の威圧感をレティシアが放ってきた。

 言いたいことはわかるが誰のためにこんな猿芝居してると思ってんだ! バラしてやろうかこいつと思いながら睨み付ける。

 そんな俺とレティシアの水面下のやり取りに一切気付かずクリスは答える。


「一応剣の心得はあるんですが、一人旅ですし、やはり危ないですかね……」

「剣だけだと複数を相手にするとき辛いだろうし、良ければ魔術の手解きでもしようか?」


 クリスは俺のその提案を受けて一瞬目を輝かせるも、


「えっと……残念ながらそんなに手持ちが……」


 そう言って力なく項垂れた。


「手持ち? ってあぁ。いや、金なんて取らないから」

「いいんですか……!」


 え、何この食い付きよう。こちらとしては好都合ではあるが流石に過剰反応では?

 そんな風に戸惑う俺に、コトノハが魔術による耳打ち? で、


「魔術って大金を積んで、誰かに師事して覚えるものなの」


 かなり重要な情報を寄越してきた。

 ……いやもっと早く言えや!!


「あー、あれだ。一宿一飯の恩みたいな?」

「野宿ですし、全く釣り合ってないと思いますが……」


 ぐぬ……仕方ない。

 恩を貸し付けるようで気が引けるが……。


「じゃああれだ。俺がいつか困ったとき手を貸してくれ」

「……わかりました。レストさんの好意に甘えさせて頂きます」


 やれやれ。とりあえず丸く収まったか。

 そんな感じで朝食を取り次第、魔術の訓練をする事となった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ