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これもある種の因果応報

 目覚めてまず目に入った物。それは子犬の肉球だった。

 テシテシと顔面を叩かれている。

 何この状況……あれ、結局俺はどうなったんだ?

 意識を失う直前の記憶探り狼の餌5秒前だった事を思い出す。

 どうやら喰われたりはしなかったようだ。生きてるって素晴らしい。

 しかしデカかった。あんなもん地球に居るわけないし、やはり異世界か! いやUMAである可能性が微粒子レベルで……なんて考えてる間も叩かれ続ける。

 とりあえず顔面攻撃をやめてもらうべく起き上がろうとするが、


「痛った!?」


 全身に激痛が走り、無様に倒れる。

 やっぱ筋肉痛きたかー。森を歩き回った上に、リミッターオフと言わんばかりの動きしたからな……さもありなん。ただの筋肉痛にしては妙な痛みもあるが、努めて気にしない方向で行こう。ロクな予感がしない……。


 全く動けないので、とりあえず見える範囲の状況を確認する。

 まず顔面を殴打していた子犬だが、俺の声に驚いたのかひっくり返っている。

 すまん、悪気は無かったんだ……。

 昨日は暗くて色までは分からなかったが、子犬は新雪を思わせる真っ白な毛並みをしていた。とても野良とは思えない。飼い犬だったのかと考えるが、ひとまず保留。


 首だけ動かして辺りを見回した所、俺は洞窟っぽい場所に横たわってるらしい。

 ジメジメしてないし小綺麗な感じで想像と違うが、壁も天井も土だし多分洞窟だろう。光が差し込んでいるので、恐らく入り口近くだと思う。

 時間はどれくらい経ったんだろう……明るいってことは今は日中だし、少なくとも半日は寝てたか?

 と言うか、何でこんな場所で寝てるんだ。

 状況から考えると、デカイ狼の巣に運ばれた感じだろうか。

 ……もしや子犬共々狼の保存食エンド?

 そうだ子犬と昨日、脳内会話(?)出来たんだし、どういうことか色々聞けばいいのか。

 そう思い立ち声をかけようとするも、その前に子犬が起き上がってこちらを一瞥すると、止める間も無くどこかに走り去ってしまった。

 ……動けないから追いかけることも出来ない。


「見知らぬ場所に一人取り残される俺……超心細いんですけど」


 このままじゃ嫌な想像で精神が先に参る! 何か建設的なこと……まぁ昨日の反省でもするか……。


 正直初っ端から酷いな。俺は何処に辿り着くべく彷徨ってたんだ。

 思い返せば明確な行動指針みたいなものがまるで無い。やってることは徘徊老人と一緒じゃねえか。

 わがままを言わずに夜が明けるまで、ジッとしてるべきだった気もする。


 子犬への対処にしても、もう少し慎重にやれば噛まれなかったんじゃないだろうか。

 まぁ直前にわざとではないにしろ蹴ってしまっているので、何らかの報いは受けたかも知れないが。


 そして極めつけは冒険者風のおっさんに取った行動だろう。今更ながらもっと他に方法があったように思う。

 でも多分これは、何度繰り返しても似たような結果になる気がする。

 恐らく俺は本能的に、人間のいる場所に連れて行かれるのを忌避したのだろう。

 だからこんなワケのわからない状況にも関わらず、躊躇なく敵対行動を取った。子犬の為ってのも嘘では無いが、理由の半分は多分これだろう……。

 混乱状態でも安全より人間嫌い優先という辺りに、自身の闇の深さを痛感する。

 いや待て。言葉は通じないし、ついていっても危険な可能性あったし!

 うん、俺は間違ってないな!

 ……間違ってないことが正しいこととは限らないが。


 それ以降については特に反省点はない。

 正直そこからは完全にルート分岐も選択肢も無い一本道だった。動けないから詰んでたし。

 因みに憑依に関しては、考えても分かるわけないので考えない。


「ガウガウッ」


 俺が反省という名の自己正当化に勤しんでいると、子犬の声が聞こえた。

 痛まないように慎重に、首だけ動かして目をやると、熊みたいな狼を先導する子犬が見える。

 明るいところで見てもやっぱり物凄く大きかった。

 てか狼の方も真っ白か。実は親子だったり? でも体格差が……。SSと3Lくらい開きがある。サイズ差補正無視つけなきゃ(使命感)……いやそうじゃない。

 何故連れてきてしまうのか……。

 いやまぁどの道逃げられないし(痛くて動けないというか全快でも多分逃げ切れない)遠からずご対面と相成ったろうが、せめて覚悟完了しておきたかった……。

 狼が軽く唸ると子犬はまた何処かに駆け出して行った。

 おい待て一人にするな! 俺を守ってくれるんじゃなかったんかい!


「グルル……」


 睥睨される俺。威圧感が凄い。ジッと目を覗き込まれる。

 そいやVRゲーもこんな迫力だったのかなー、やってみたかったなー。なんていつもの現実逃避をしていると。

 何やら狼が百面相を始めた。

 怒ったかと思えば笑い、呆れ、驚き、コロコロと表情を変える。感情表現豊かですねー。ちなみに最初の怒りで死を幻視した。

 後、最後にした可哀想なものを見る目が凄く気になる……頭痛を代償にしてでも問い詰めたいまである。この狼も憑依出来るかは知らんが。


「結局今の行為にどういう意味があったんですかね……」


 一応聞いてみたが、返答があるはずもなく。

 おっと百面相は終了かな? これから俺はどうなるんでしょ……と思ったが、どうやら喰われるらしい。

 大型犬でも丸呑みに出来そうな口を開いて迫ってくる。

 よく見ればこいつも牙長いなー。

 せめて一瞬で絶命出来ますようにと、ささやかな祈りを捧げていたら咥えられた。

 あ、昨日はこうやってここまで運ばれて来たんですね。

 そのまま洞窟を出て、森の中を運ばれること数分、そろそろ三半規管へのダメージが深刻になって来た頃に不思議な感じのする泉に着いた。幻想的で泉の精とか出て来そうな感じ。


 ここが目的地か? 何をするんだろう。そう思っていたら、突如自由が訪れた。

 どういう事かと言うと、ぺって感じに吐かれた。ついでに言うと落ちた先は水中だった。


「ガボゴボゴボ!?」


 全身痛くて動けない人を泉に叩き込むって、鬼畜過ぎやしませんかね!!?

 溺死は苦しそうと言うか、現在進行形で苦しいから勘弁なんだけど!

 俺は必死にもがいた。もがくことが出来た。

 あれ? 体の痛みが少し引いてる? 全快には程遠いが大分マシにはなった。そして少し落ち着いて見れば、ここ……普通に立てるわ。水位は腰くらいまでしかない。


「ゲホッ!ゲホッ!ハァハァ……あー、死ぬかと思った」


 しかし何故急に痛みが引いた? 癒しの泉的な回復スポットだったとか? いや足の傷はそのままだから違うな。

 状況が一向にわからない。

 もしやこの狼は俺を助けてくれたんだろうか。やり方は乱暴の一語に尽きるが。

 俺が若干恨みがましい目で狼を見ていると、子犬が何かを咥えて走って来た。

 さっきも走っていたが、足の怪我は平気なんだろうか。拷問器具じみたトラバサミに挟まれてはずだが。

 いや、よく見ると若干走り方が不自然か。後ろ足を庇いながら走っている風に見える。


「あんまり無理すんなよー?」


 そう声をかけた瞬間、盛大に子犬が転けた。咥えていたものを撒き散らし、そのまま泉に落ちる。

 ドジっ子か! って溺れてたらヤバイ! 俺にとっては浅くとも、子犬にして見れば十分深い!


「大丈夫か!?」

「グオゥ!?」


 何か狼の慌てる声が聞こえたが、今は気にせず痛む体を無理矢理動かし子犬を抱え上げる。何が起きたか分からないという顔をしてらっしゃる……。天然かな?

 全く驚かせやがって! と、前を向くと狼の顔が目の前にあった。無論驚きはさっきの比ではなく、危うくショック死するとこだった。

 硬直した俺を無視して狼は子犬の無事を確かめると、さっさと泉から上がってしまった。


 しかしこの狼、慌てたような声を上げてたし、心配して飛び込んで来た感じか?

 やはり親とかなんだろうか……サイズ差のせいで、理解は出来ても納得はしかねるが。

 そんなことを考えながら自身も泉から上がると、狼が一瞬こちらを見て、ついてこいと言うように歩き出した。

 もう咥えて運ぶのは無しらしい。楽ではあったが酔うのもキツイので助かった。

 狼についていこうとすると、抱えていた子犬が腕の中から抜け出し、さっき撒き散らした何かを集めだす。よく見れば昨日の薬草的な物のようだ。

 俺のためにまた取ってきてくれたのかな。

 集め終わると何を思ったのか、人の体によじ登ってくる。なにしてんのこの子。

 ……狼もはよこいって感じの目で見てるし。

 登れないと分かると、今度は足を前足で叩き出した。これはアレか、抱えて運べってことか。


「はいはい、仰せのままにお姫様」


 正直懐いてくるのは嬉しいので、全然構わないけどね。

 てか昨日の声的にメスでいいんだよ、な? いやどっちでもいいっちゃいいが。

 薬草を咥えてフガフガ言ってる子犬を抱え、狼について行くとさっきまでいた洞窟に着いた。

 子犬が手を叩いてきたので、降ろしてやると昨日にように、俺の足の傷に薬草をつけ始める。

 今回は痛くない……学習している! ただのドジっ子じゃないんだなぁ。と、生暖かい目で見てたら強めに押し当てられた。

 考えを読まれたらしい。賢い。そして痛い……。

 一応これで治療は終わりのようだ。自分のはいいのかと思ったが、見ればほぼ傷が塞がっていた。歩き方からして本調子ではないのだろうが、それにしたって回復力が高過ぎる。やはり普通の子犬というわけではないのだろう。憑依の件もあるし。


 その様子を眺めていた狼が、子犬に向かって一声上げて、洞窟の奥に消える。

 そう言えば子犬から事情聴取するの、完全に忘れてたな……百面相とか溺死の危機x2とかでそれどころじゃ無かったので仕方ないが。

 やっと説明回かと思って子犬の方を見ると、何か集中している。

 次の瞬間、特大の頭痛に襲われる。

 そうだね、これがあったね。話くらい普通に出来ても……と嘆きながら俺は子犬の言葉を待った。





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