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人の武を借る狐

「鎮守の森に、妙な魔獣が居着いちゃってねぇ……」


 そう、目の前にいる3本の尻尾を持つ狐が切り出した。

 コトノハだ。リシアに人化を解くように言われて、今は元の姿に戻っている。

 親父さんは相変わらず彫像のまま。イロハはメンテナンス中、理由は推して知るべし……

 俺はと言うとこれ以上揉められないように、子狼に戻ったリシアを膝に抱えながら説明を受けている。


「その魔獣をレストさんに倒して欲しいってのが本題よ」 


 聞き終えたリシアが間髪入れずに突っ込む。


「何故レストなの? はっきり言って、レストはそんなに強くない。多少は戦えるようになったけど、それでも金狐族の大人には、全く歯が立たないと思うし、里の者がダメなら父さんだっている。レストである必要性が解らない」


 本当にはっきり言うなぁ。分かってはいたが精神に来るものがある……

 まぁリシアは悪気あって言ってる訳でなく、俺の身を案じているだけなのだろうが。

 身体能力が上がり、腕や脚を変化出来るようになっても所詮は人間、獣とは比べるべくもない。


「はいはい今から話すから、そんなに怖い顔しないの。それと、リシアちゃんの発言で地味にショック受けてるみたいだけど、いいの?」

「……!! レスト、ごめん……えっと、そういう意味じゃなくて」


 指摘されて自身の失言を悟り、慌てて俺に向き直るリシアが可愛い。

 分かってると伝わるように一度抱きしめてから、目でコトノハに続きを促す。


「これは手強そうねぇ……っと、説明説明。森の中では魔術が使えないのは、リシアちゃんも知ってるわよね?」

「覚えてる。魔力も回復しないんだっけ……」

「そうそう、森と言えば二人で探検に行って、大目玉を食らったのが懐かしいわぁ」

「ちょっと……! レストの前でそういう話はやめて!」


 ……完全に姉に過去を暴露されて狼狽える妹の図だな。

 微笑ましいのは結構だが、どうあっても迅速な説明が望めない事がわかった。

 気長に行こう……親父さんは恐らく、最初からこうなる事がわかっていたんだろう。

 だからあんな仏のような安らかな顔をしているのだ。


「続きをですね……」

「えっと、どこまで話したかしら?」


 近所の話好きのおばちゃんかな?

 俺は溜息を吐きながら「魔術が使えないってとこです」と教える。

 ふと外を確認すると、夜の帳が下りつつある。

 本当に今日中に終わるんだろうか……


「魔術の使えない森の中での魔獣退治は大変なんだけど、放って置くわけにもいかないから討伐隊を出したのね? そしたら見事に返り討ちにあっちゃって……」

「そんな魔獣に、レスト一人で勝てるの……?」


 正直言って話を聞く限り、俺の手に負え無さそうだと思った。

 討伐隊と言うくらいだから、複数で挑んだのだろう。

 俺より強い奴が数人がかりで倒せない相手にソロで挑む。

 これはもう自殺行為というか、自殺そのものではなかろうか……


「討伐に向かった里の者が言うにはあまり強くはなかったらしいんだけど……妙な臭いのする煙を出してきて、それ以上戦えなくなっちゃったらしいの」

「その煙は毒なの?」

「毒ではないみたいなんだけど、嗅覚の優れる私達じゃ、近くで嗅いだら多分一発で気絶するくらい強烈って……」

「顔を何かで覆うとかは?」

「遠くで嗅いだだけで、鼻を切り落としたくなったそうだから、まぁ無駄でしょうねぇ」


 大体分かった。 

 魔術の使えない森で、あまり強くはないが、狼や狐に対して極めて効果的な技を持つ存在。

 確かに俺が適任だろう。鼻の利かない人間なら、致命傷にはならない……はず。

 親父さんの件もあり、断れそうにもないので魔獣退治を請け負う覚悟を固めていると、彫像が動き出す。


「レスト、すまぬが頼めるか」

「大丈夫です、軽く捻ってきますからゆっくり休んでいて下さい」


 親父さんに頭を下げられるが、こちらとしては今までの礼も出来るので願ったりである。

 まぁ軽くハメられた感じではあったが、世話になったのも事実だしな……

 そう俺自身は納得していたが、リシアが食い下がる。


「コトノハ……化身すれば「そうしたらレストさんの鼻も利くようになるんじゃないの?」

「むぅ………」


 そうなのだ。それ故俺一人でやるしかない。まさか強化される事がデメリットになるとはなぁ……

 げに恐ろしきは特攻武器よ。アーマーキラーやハンマー持ちは絶許。


「レストさん、お願いします。鎮守の森は金狐族にとって聖域、魔獣に好きにさせる訳にはいかないのです」


 今までの態度はなんだったんだと思えるほど、丁寧な言葉で頼まれる。

 そういう感じでずっといてくんないかなぁ……無理だろうなぁ。

 儚い願いは押し隠して、こちらも誠意を持って応える。


「わかりました。ご期待に添えるよう尽力します」

「話は纏まったみたいだね」


 俺が承諾した瞬間。図ったようなタイミングでイブキさんが、手に山ほどの本を抱えて帰ってきた。

 ……この狐なら『ような』でなく本当に図った可能性があるが。

 そこで気付く。

 イブキさんは6本の尻尾だったが、コトノハは3本……尻尾の数はやはり何か意味があるのだろうか?

 コトノハの尻尾を眺めながらそんな事を思っていると、視線に気付いたのか近寄って来る。


「レストさん、コトノハの尻尾が気になるのかしら? ……少しなら、触ってもいいけれど?」


 そう言って目の前で尻尾を揺らすコトノハ。

 人化してなくても色っぽいだと……!?

 俺が衝撃を受けていると、膝の上で魔神が生まれかけていた。


「触らないですから……!! じゃなくて、尻尾の数が違うんだなって」


 リシアからの圧力が弱まる。嫉妬自体は少し、いやかなり嬉しいが暴れられると困る。

 魔術が無ければ笑い話で済むのだが。

 コトノハは「残念ねぇ」と言って、尻尾を揺らすのをやめて教えてくれた。


「金狐族はね、魔力が溜まる程尻尾の本数が増えるの。6本もあるのは父様だけよ? 平均は3本だからコトノハが少ないんじゃなくて、父様が多いの」


 そう説明されるが尻尾の件よりも、やっぱ親子か! という事にしか意識が向かない……

 しかしこうなると、リシアは群れの長の娘、コトノハは里の長の娘。

 えらい高貴な娘さんばっかりだぁ!

 そのうちお姫様とかきそう。いやラノベの読み過ぎだな。(ここまでフラグ)


「そういうもんなんですね。あ、森にはいつ行けばいいんですかね?」

「今日は離れに泊まって貰って、明日お願い出来る? もうすぐ祭祀だから、出来るだけ早い方が助かるのだけれど……」


 そう申し訳無さそうに言うコトノハに、俺は問題ないと伝える。

 どうも人間との繋がりもあるらしいので、時間をかければ解決出来なくもないのだろうが、俺に頼んだ理由にはこれも含まれているのだろう。

 この予想はイブキさんの発言で裏付けられた。


「いやぁ助かるよレスト君! 最悪の場合、里にくる商人に頼んで冒険者を寄越して貰う手筈だったんだけど、それじゃちょっと間に合わない可能性が高くてねぇ」


 そんな事を持ってきた書物に目を通しながら言うイブキさん。

 見れば親父さんも爪で器用に本を読んでいる……


「交換条件を突き付けておいて何が、助かるよ! だ、白々しい……」

「リベちゃんそんな事言うなら、本だけ置いて僕は寝ちゃうけどいい?」

「待て! 我が文字を読むのが不得手なのは知っておろう! 一人で探すのは堪えるからそれだけはやめろ!」


 まぁ普通、獣は本なんて読まない。

 これはむしろ苦手なだけで読む事は可能な点を褒めるべき案件だろう。


「しょうがないなー。まぁこの中のどれかには多分載ってるから、気長に探すしか無いねぇ」

「他の者に助力は願えぬのか……」

「あのねぇリベちゃん。これ、一応門外不出で、リベちゃんが見てるのも本来はダメなんだよ?」

「いや、それなら我は遠慮しても「リベちゃんの魔術封印でしょ! いいから黙って探すの!」

「むぅぅ……」


 どうもこの二人の関係はとても複雑な物らしい。

 立場がいつの間にか入れ替わってるのもそうだが、親父さんがあんな情けない感じに……いや、結構そういう事もあったな。

 親父さんの残念さをしみじみ思い返していると、


「父様と叔父様は徹夜で頑張るみたいだし、今日はもう遅いから離れに案内するわね?」


 そう言ってコトノハが立ち上がったので、俺とリシアと、いつの間にか復活したイロハがそれに続く。

 しかし叔父様……まぁ血縁はあるまいが、義兄弟のような物なんだろうか。

 そんなどうでもいい疑問を浮かべながらコトノハについて行く。

 案内された先は屋敷に至る道中にも見た、外人の作った木造建築一戸建てといった趣の場所だった。

 

「じゃあ後で食事は運ばせるから、今日はゆっくり休んでね。コトノハは少し叔父様の加勢をしてくるわ」


 そう言い残し、コトノハは来た道を引き返していった。

 残された俺たちは離れに入り、居間のような場所に腰を下ろす。

 辺りを見回すと最低限の物しか置かれていないが、寝るだけなら十分過ぎる空間だった。


『レストさん、結局どうなったんですか? 私はメンテナンスで意識が無かったもので、何もわからないんですが」


 イロハが若干非難のこもった視線をリシアに向けながら尋ねてくる。

 流石にやり過ぎた自覚があったのか、微妙に気まずそうな子狼を撫でながら答える。


「明日は俺一人で森の魔獣退治って事になった。そう言うわけだから無事を祈っててくれ」

『リシアさんも連れていかないんですか?』

「臭いのきつい煙吐くらしくてなぁ……だから俺一人で行くしかないんだよ」


 そこまで言ったところで、はたと気付く。イロハは別に連れて行けるな……?


『はぁ……なるほど。じゃあレストさん頑張っ「イロハ、何かの役に立つかも知れんし、お前もこい」

「ポンコツ、いざとなったら、その身を盾にしてレストを守って」

『……私は本当に戦闘とか無理ですよ?」

「まぁ囮にするって手もあるし?」


 俺がそこまで言ったところで、イロハが逃げようとする。

 はっはっは。逃すわけにはいかんなぁ!

 いつかのように引っ掴んで逃亡を阻止する。


「いやー! だってレストさん一人とか、死にに行くようなもんじゃないですか!」


 このポンコツは……いや俺自身も多少不安なとこあるけども。

 だからこそ連れて行かねばならない。多少なりとも生存率を上げるために!


 それからイロハをリシアと二人掛かりで説得して、給仕らしき狐が運んで来た食事を食べ終わると、明日の事を考えて早々に就寝となった。

 久し振りの布団的な寝具に包まれながら考える。

 魔獣は大して強くないという話だし、問題なく片付くといいなぁ……

 絶対そう都合よくいかない事を内心で確信しつつ、俺は眠りに落ちた。



 

活動報告上げたんで目を通して下さいなー

それともう一つ。色っぽいお姉さんは出さないと言ったが、色っぽいロリを出さないとは言ってない。

因みにリシアがBでコトノハはCです。わからない人はそのままの君でいて。

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