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十分に発達した科学技術と、その功罪

『レストさん! ハッキング完了しましたよー! いやぁこの腕輪、異様にセキュリティが硬くてセンターのメインフレームまで利用してようやく……ってあら、誰ですその人? さっきまで居ませんでしたよね? 痴話喧嘩っぽいですが彼女さんですか? いやーレストさんも隅に置けませんねぇ!!』


 息つく間もなくマシンガントークを放つイロハ。

 まぁ機械だし、息をつく必要がないっていうのはさて置き、とても煩い。

 援軍の見込めない籠城戦のような会話を強制終了してくれた事には感謝するけども。


「まずはご苦労様。そんで少し落ち着け……このコはリシアだ。人化してこうなってるが、さっきお前を粉微塵にしかけた狼だよ」

『え!? どう見ても人間じゃないですか! 超絶美少女ですよ!』

「思ったより、見る目がある」


 普段それほど表情の変化のないリシアだが、俺には解った。

 これは微妙にドヤ顔をしている……こんなポンコツにでも褒められれば嬉しいらしい。


「よく見ろ……耳と尻尾があるだろ?」

『レストさんが趣味で付けさせているのかと』


 脳内に某ストラテジーの宣戦布告SEが木霊する。


「……リシアは人化以外に化身ってのが出来てな、俺と一つになって自身を強化する事も出来るんだ」

『ほー! ナノエフェクトの応用ですかね……? そんな事も出来るんですかー』


 何か聞き慣れない単語が出たがとりあえず無視。


「今から身を以て、その力の凄さを思い知るといい」

『大変不適切な発言をしてしまいました事、深くお詫び申し上げます!!』


 遅まきながら自身の危機を理解したイロハが、全力で謝罪してくる。

 何故コレが応対用として使われていたんだ……


「はぁ……もういいから、パスコードが解ったなら登録変更を頼む」

『了解です! じゃあ認証装置の前に、腕輪を付けて立って下さい!』


 イロハに言われるままに、腕輪をして認証装置とやらの前に立つ。


『んじゃ行きますね! システム起動!!』


 装置の起動音を聞きながら、達成感に浸る。

 これで役立つ情報が手に入ると、そう思った。

 ーー次の瞬間、頭に強烈な痛みが走る!


「アアアアアァァ……ッ!!!」

「レスト……!」『レストさん!?』


 あ、この感覚久し振りだな……と、そこまで考えた辺りで床に倒れて、思考が途切れた。





 目覚めると俺は、医務室のような場所で寝かされていた。

 リシアが俺の手を握り、ベッドにもたれかかるように眠っている。


「ん……あれ? ここは……」

『レストさん、お身体は平気ですか……?』


 隣に浮遊するイロハが気遣わしげに声をかけてくる。


「……あぁ、なんか凄い頭痛を食らって気絶してたのか」

『はい、ここにはリシアさんが運んでくれまして』

「んでずっと気を張って看病してたら、力尽きたと……」


 顔をよく見ると、微妙に涙の跡が見えた。

 献身に感謝しつつ、そっと頭を撫でながらイロハに文句を言う。


「登録変更にあんな激痛があるなら、言ってくれよ……」

『いやいや! 登録で気絶するほどの激痛がある危ないモノ、売れるはずないでしょう!?』


 はて、そう言われれば確かにそうだ。

 あの現象はイロハにとってもイレギュラーであったらしい。


「んじゃあれは何だったんだよ……」


 化身での訓練中は毎日のように食らってたから、頭痛には多少耐性がついてたが…

 最近はご無沙汰だったせいか、本気で効いた。

 割とマジで死ぬかと思うレベルで。

 

『それがですね……その腕輪、正式名称がグレイプニルって言うウチの商品なんですが……どうやら違法改造品らしくって、ブラックボックスがあちこちに……』

「パスコードみたく無理矢理ハッキング出来ない?」

『出来ない事もないですが、認証された事によって腕輪とリンクされたレストさんに、何か影響が出る可能性がですね……』

「……ハッキングする時ブラックボックスに気付かなかったのかよ」

『その、巧妙に隠蔽されてまして……それに今思えば異常なセキュリティで、もう少しちゃんと調べて置けばこんな事態にならずに済んだのですが……』


 申し訳無さそうなイロハに、俺はそれ以上糾弾するような真似は出来なかった。

 そもそもこっちが強引に頼み込んだ訳だし……


「悪い、少し感情的になった。それで結局普通のと、どう違うんだ? 解る範囲でいいから教えてくれ」

『はい……どうも登録者のナノマシン適合を強制的に書き換えて、ナノエフェクトを効率的に扱えるようにする機能がある事だけ解りました……』

「何一つわからん……さっきもナノエフェクトってのは口走ってたが、なんなんだそれは」

『えぇ……今時子供でもこれくらい理解してますよ!? 全くレストさんは無学ですねぇ。では仕方ないのでこの私が一から説明して差し上げましょう!』

「…………」


 やれやれ困ったものです。と、言わんばかりの態度なイロハ。

 急にテンション戻りやがったなコイツ……

 今時ってお前の言う今時は400年前だし、俺はこの世界の人間ですら無いし。後、殊勝な態度はどこに行った……と全力で突っ込みたい所だが、グッと堪える。


『ええとですね、まずナノマシン適合とは読んで字の如くナノマシンとの適合性でして、これが低いとナノエフェクトを使えないです。無理矢理使ったり使われたりすると、酷い頭痛がしますし、最悪死にます」


 ……こいつ今さらっと死ぬとか言ったぞ。

 さっき俺は死にかけたんじゃねえだろうな……


『それでナノエフェクトですけど、私が飛んでられるのもその力ですね。先史文明の遺産であるナノマシンを従属させて、色々な事を可能にするのがナノエフェクトって技術です』

「説明した先から疑問を増やすの、ほんとやめろ」

『無知を私のせいにされましても……』

「……先史文明って何。俺からするとお前らの時代がそれに当たるんだが」

『それに関しては殆ど解ってないですねー。ただ有史以前より世界中にナノマシンが存在してるので、それを作った文明があったのでは? ってくらいの事しか。自然発生する訳無いですし? だから異星人説なんてトンデモ説もありますけどねー」

「んなよくわからんモノ利用してんのか……」


 割ととんでもない話を聞かされてる気がする。

 大丈夫だったのかよ400年前……いやダメだったから滅びたのか。

 となると異星人説でない場合、最低二回は文明リセットが起きてる事になるが……

 これもしかしなくとも、ハードコアモードな世界ではなかろうか。


『まぁ原理や出所が不明でも、使う分には問題無いならそりゃ使いますよ、人間なら。実際大昔から利用されてましたし』


 なんとなく深いような、やっぱり浅いような事をイロハが言う。

 まぁ人間ならそうするわな……どこの世界も一緒らしい。

 使える物は何でも使う、当たり前だな!


「ふぅん……俺も飛んだり出来るようになったって事?」

『まぁ理論上可能ですが……』


 機械の言動とは思えない、奥歯に物が挟まったような言い方をされた。

 いや機械とは思えないってのは、今更だったか。


「それ、事実上不可能と同義だろ……」

『いやぁ、だって常に気圧や温度に風速等を考慮した操作とか人間には不可能でしょう? 屋内限定で無理すれば可能かもですが』

「オーケー、絶対無理ってことだな」


 人間の脳にそこまで求めるのは、どう考えても酷だろう。

 マルチタスクってレベルじゃねえぞ。

 屋内ならワンチャンらしいが、屋内で飛んで一体どうしろと言うのか……


『私は機械ですし、重量も軽いので問題無いですけどね。他には大型の機械で補助するって手もありますが、そんなの個人が所有出来るものじゃないですしねー』

「ナノマシンも万能なのかと思えばそうでもないのな…」

『万能な物なんて早々ありませんよー。…それとですね、レストさんに私からも聞きたい事があるんですよ』


どこか探るような、イロハらしくない物言い。


「ん? なんだ?」

『レストさんが倒れた時、身体を精査したんですが……』

「それで?」


 妙に言い辛そうなイロハを怪訝に思いながら続きを促す。

 まさか続く発言が、異世界に来て驚いたことのトップに躍り出るとも知らずに。


『レストさんって、遺伝子操作とかしてます……? 3割ほどですが細胞が狼のそれに置き換わってるんですよね……でも異常や拒絶反応もなく溶け込んでる感じで、だからこそかなり異常なんですけど……』







魔術とかナノマシン周りの設定は変遷の可能性があるので話半分でどうぞ。

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