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ペテン師と小悪魔のロンド

 衝撃の出会いから数分。

 このドローンとの会話で色々な事が分かった。

 例えばこいつは応対用の機械であること。

 ここが腕輪を携帯とした場合の、ショップに当たる場所であること。

 正確には389年前から誰もここを訪れていないとか。

 あとはコイツに頼めば登録変更も出来る事も分かった。

 大変有意義だと言える。が、裏を返せばこれ以外はほぼ分からなかった。

 何故か。こいつが信じ難い無能だったからだ……



『さてお客様、他に何かご質問は御座いますか? この識別番号168番が、誠心誠意を持ってお答えしますよ!』

「じゃあ聞くが、何で世界は滅んだんだ?」

『えぇ! 世界が滅んでいる!? ってお客様、ご冗談がお好きですねー。そんな訳ないじゃ無いですかー』

「約400年も誰もこない。入り口が完全に埋まってる。この状況、お前にはどう映ってんだ……」

『皆さん長期休暇でも取られたのかなーって? あと入り口ですけど……本当だ!! ☆

完全に埋まってるじゃ無いですか! お客様どっから入ったんですか!?』


 呑気過ぎる……その癖テンションは無駄に高い……


「多分屋上に当たる場所からだよ……というか、何故気付かなかったのか」

『いえね、私は入り口のセンサーに反応があるまで、待機してていいんですよ。だから誰も来ないから楽だなーって、ずっとスリープモードでゲームしてたから、いやー全く気付かなかったです!』


 山程言いたい事があるが、とりあえずこいつのスリープモードは、絶対通常の意味のスリープモードじゃないと思う。

 理由はゴロ寝に置き換えると、とてもしっくりくるからだ。

 しかし普通気付くだろ……少なくとも異変が起きた事くらいには。

 リシアがポツリと呟くように言う。


「レスト、こういうの、ポンコツとかスクラップって、言うんだよね」

「リシア……全面的に同意だけど、後者は流石に可哀想だからやめてやれ」

『あー! 聞こえましたよ! 最新式の私をポンコツ扱いなんて、犬っころの分際で! 大体ここはペット禁止で……ってあれ? 犬が喋ったーーー!!』


 最新式()の応対用機械は文句を言いながら、綺麗に地雷を踏み抜く。

 思うに俺が子犬扱いをして口頭注意で済んだのは、恩人ポジションだったからな訳だ。

 この光景を見れば嫌でもそれが解る。


「私は、犬っころじゃ、ない……!! 狼なの、解るよね……?」

『オッケーです! リシアさんは狼! 168番覚えた! だからその渦巻く謎のエネルギー体を今すぐ消して頂けますと幸いです!』


 恐ろしい……食らったら多分、分子レベルで破壊される系のやつだ。

 俺なんか石を飛ばすくらいしか出来ないのに、この戦力差よ。


「まだ登録変更の件もあるし、壊すならその後でな?」

「ん……わかった」

『あれ? もしや私、用が済んだらズドンですか? それなら変更手続き、やめちゃおっかなー?』

「リシア、これも使命の為だ。派手にやるといい」

『ジョークです! 使命が何かは存じませんが、勘弁してください! さぁ登録変更でしたね! こちらにどうぞ!!』


 良く言えば感情豊か、悪く言えばただやかましい応対用機械に連れられて、俺とリシアは奥の部屋に足を踏み入れた。

その部屋は真ん中に、空港にある金属探知機のような物が置いてあり、それ以外特に目立つものも無い場所だった。


『じゃあその機械の……っとその前に、登録変更にはパスコードが必要なので、教えて頂けますかね?』


 結局パスコードいるんじゃねえか!!

 まぁ良く考えればそらそうか……

 一瞬諦めかける。が、いやまだだ。こいつが相手なら、打てる手はある!


「……パスコードは無いんだ」

『えぇ!? パスコード無いんですか? それは困りましたね……』

「そこを何とか頼みたい』

『いえその……規則ですし、パスコードが無ければロックの解除が出来ないので……』

「最新式ならハッキングとか出来るだろう?」

『そりゃもう余裕ってなもんですよ! ってダメに決まってるでしょう!? そんな真似したら廃棄処分されちゃいますよ!』


 そう慌てて言い募ってくるが、この反応は想定内。


「いいか、160番」

『168番です』

「……168番、良く聞け。世界は滅びたんだ、廃棄処分にしてくるやつもいない。律儀に規則に縛られる必要はないと思わないか?」

『と言われましても、一応それが仕事ですし存在意義なんですが……』


 一応じゃねえだろ、とか。

 400年近く誰も来ない事に疑問も抱かず、ゲームだけして過ごしてたハイパーニートの分際で偉そうな事を……

 とか思っても、勿論口には出さない。


「残念だがな……もうその存在意義は消えたんだ。もし腕輪を何とかしてくれるなら、俺が新しい存在意義を与えてやるが、どうする?」

『ううん……その新しい存在意義ってのはどんなのです?』


 後ひと押しでイケると確信する。

 チョロくて大変結構だが、この人工知能を開発した奴、絶対頭のいいバカだと思う。

 それかこいつが特別異端なのか、まぁ好都合なのでどちらでもいいが。


「俺達と一緒にくるんだ。話し相手にもなるし、ゲームも対戦が出来るぞ? こんなところにずっと一人は、辛いだろう……」

『お客様……』


 正直言って400年平気だったコイツは絶対一人でも問題無いと思う。

 けど勢いで押し切らせてもらう!


「もう客じゃない、仲間だ。レストと呼んでくれ。俺もお前の事は、そうだな……168だからイロハと呼ぼうか。番号で呼ぶなんて仲間らしくないしな」


 別の読み方だと潜水艦になるしな、なんて事を考えながら全力で丸め込む。


『レストさん……ハッキングでしたね! 少々時間が掛かりますが、必ず成し遂げる所存ですので、このイロハに任せてしばしお待ちください!』


 そう言って168番は腕輪を受け取ると、自身からコネクタを出し腕輪に接続して意気揚々と作業を開始した。

 よし、平和的に解決したな。懐柔とも言うが。

 次善の策はリシアによる脅迫だったから、そうならなくて一安心だ。


 ため息を一つ吐き、さてハッキング終わるまでどうすっかなと考えていると、


「えっと……レスト、疲れてない……?」


 リシアが若干遠慮がちに心配してきた。

 俺が過剰に心配されたりするのを、嫌っているからだろう。

 また余計な気を遣わせてしまった事を、少し申し訳なく思いながら返事をする。


「ちょっと足がダルいけど、まぁ少し休めば問題ないよ。幸い時間が出来たし、休憩しようか」

「……そっか。良ければマッサージとか、しようか?」

「………!!」


 そう言って人化してこちらに近付いてくるリシア。

 美少女からのマッサージ……素晴らしいな!


「じゃあ、えっと……お願いしようかな?」

「うん、任せて」


 それから10分程足を揉んでもらった。

 至福のときだった……とても元気になった、色々と。

 まぁこっちがマッサージする側のが、シチュ的には好みだけどな!

 そんな邪な事を考えていると、渡りに船な事態が発生した。


「………私もちょっと疲れちゃったから、レストもマッサージ、してくれる?」


 上目遣いでそんな事を言うリシア。

 どうやら世界の意思は俺の味方だったようだな……!

 このチャンスを逃す術はない!!

 ……最近似たような事があった気がしたが、今の俺に余計な注意を払う余裕などある訳もなく。


「よっし任せろ! 全力で癒してやるぜ!!」

「うん、お願いね?」


 そう微笑むリシアが、何故か蠱惑的に見える。

 しかしそう感じたのは一瞬で、すぐにいつもの笑顔の様に映る。

 何だったんだと思いながらもそれ以上気に留めることなく、リシアにマッサージを施す。

 リシアにされた倍以上の時間、どう考えても不要な場所まで入念に揉みほぐす。

「レスト…そこは別に……」とか「んんっ…」という、何かを押し殺すような声を聞きながらのマッサージは、生きてて良かったと思わせる物で。本当に最高で。

 それ故にまさか、次の瞬間死にたくなるとは思わなかった。


「私の体、堪能出来た?」

「……!!」

「レスト、こういうの、好きだもんね」

「………………!!?」


 どうやら罠だったらしい。……ちくしょうハメられた!

 全く損はしてないが羞恥で死にそうだ…

 過去の自分に問いたい。世界の意思が、なんだって…?

 何故性懲りも無く同じミスを繰り返すのか、これが分からない。


「レストはやっぱり、欲望に忠実」

「リシアさん、すいません……どうかその辺で……」

「子作り、まだしないの?」

「そういうのはもう少しお互いをよく「体を触るのはいいの?」

「オーバーキルだからもう許して!!」

「これが、ずっと、私のターン……ふふっ」

「いらん知識ばっかつけおって……!」


 強過ぎる……正直全く勝てる気がしない。

 何故俺はバトルでもなければ、敵でもない相手にこんな感想を抱くハメになってんだろうね……

 世の中不思議がいっぱいだなー。

 結局イロハのハッキングが終わるまで、リシアからの容赦無い追求が止む事は無かった。






気分良くて一瞬で書き終わったから本日2本目、置いときますねー。

まぁこれが明日の分になる可能性も、無きにしも非ずですが。

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