感情を診る薬剤師 ~心の慟哭を救え~
処女作です。誤字脱字も多いかもしれませんが読んでいただけると幸いです。
最初に投稿した時よりも内容を細かく設定しています。読みにくいかもしれませんが貴方の心に響けば幸いです。(7月3日編集)
20XX年 人間界。この時代に生きている人々の心は病に冒されていた。情報端末から流れてくるものは「どこかでデモが起きました」やら「どこかの政治家が不適切な発言をして場を荒らしました」という、色なら灰色、感情なら怒りのうちに秘める私利私欲といった醜悪なもの。通り過ぎるサラリーマンの姿からは青白くどこか疲れているように見える。そんな中、家兼仕事場で情報端末を哀しげな表情を作るのは色と感情の魔女である四条理桜である。
彼女は人から発する言葉から色を出して,その色から彼女が連想する感情を溢れ出す物質を作ることができる。彼女は薬にして提供している。
ただ,そうはいっても発した人からの想いや理桜自身のコンディションなどで威力はバラバラなのだが。
理桜以外にも感情に作用する魔法を使えるものは少なからず存在するのだが、この人間界では彼女が一番の最年少なのである。
彼女の仕事場(お店)は薬局なのだが普通の薬局とは少し違う。この薬局に来る患者は皆,感情に偏りを持っている人が訪れる。それは理桜の力により通常の医薬品よりも患者のコンディションを早く高める効果がそれを求めてというのもあるが、何よりも理桜の応対が患者・医師両方から受け入れられた結果である。
ちなみにこの店に理桜以外の従業員はいない。力を他人に見られたくないからというのもあるのだが、理桜自体がちゃんと向き合って仕事がしたいという誇りを持っているからともいえる。そのため全ての作業を理桜自身が行わなくてはならないため,理桜の薬局は予約制で日に3人程がせいぜいである。
最初の患者様は20代後半の真面目そうな青年である。
男性から主治医の書いたメモを受け取る。その後理桜自身が男性から話を聞いて処置をどうするかを考える。
”今回の患者は,小さい時から何不自由のない生活を送り,大学まで何の苦労もなくこなしてきたという。
しかし,国家試験を2回受験して2回とも落ちてしまい,職探しに悩みながらもアルバイトについてみたが,うまく打ち解けられずにアルバイトを辞めて,今は就職に有利な資格を取るために奮起している。
質問にはある程度しっかり答えるが,まだ隠し事をしている所がある。”
読み終えた所で理桜が男性に質問する。
「内容拝見させていただきました。ここでは薬を処方する前に2・3質問させていただく形を取らせていただいております。よろしいでしょうか?」
男性は理桜の顔を見てコクリと頷いた。
「まずは貴方は吉田和真様本人でよろしいでしょうか?」
この質問に対して,男性はコクリと頷いた。この反応を見て理桜はいきなり核心部の質問をした。
「今,吉田様が心を砕いていることは何でしょうか?」
この質問に対して和真はびくっと身体を震わせた。和真自身、ピンポイントな内容を聞いてくるとは想わなかったのだろう、目には涙が滲み口は歪んでいる。
この反応に理桜の目には和真が深い青色を覆い、その中でも何か後ろめたいことがあるのか、中心部には灰色が見えた。理桜の推察としてはその後ろめたい内容こそ未だに一歩先へ進めない理由なのだろうと。
ともかくこの状態ではまともな会話にもならないだろうと感じ、すぐに行動に出た。
和真の震えている手に触れて。
「吉田様落ち着いてください。ゆっくり息を吸い込んで。そして吐いてください。怖くないですから。いきなり過ぎて申し訳ありません。質問を変えます。最近眠れていますか?朝何時頃に起きますか?」
和真は身体を震わせながらも「医師から出してもらっている薬でどうにか眠っています。朝は7時くらいに起きますが,食事を済ませると眠ってしまいます。」
「なるほど。薬で眠れているのですね。朝は起きれていることは良いことですね。お話は変わりますが最近楽しかったこと,嬉しかったこと,ワクワクしたことどんなことでもいいです,聞かせてもらえますか?」
和真は理桜の行動に顔を赤らめたが,周りがいつのまにか”森林に来ている”ような感覚になって彼女なら信頼して話せる気持ちになっていった。
「私の趣味は読書なのですが,最初の試験に落ちた時、何もやる気が起きなくてやろうとはしていたのですが空回りになってしまいがちでした。趣味の読書ですらうまく熟読出来なかったのですが最近は少しずつですが熟読できるようになった気がします!」
その答えを聞き,和真の周囲が緑色と黄色で覆われているのが見えた。緑は心が安定している状況である。つまり理桜には和真会話自体が嫌いではないと読み取れた。
理桜は顔を少し緩ませつつ着ている白衣の右袖をめくり、腕につけている鈴を鳴らしました。
その瞬間,和真の周囲の緑色の中心から灰色の部分が強く表れて、それと同時に和真は涙を流しながら話始めました。
「私は国家試験落ちた後,そのことから立ち直れないことを理由に怠けて親に甘えていました。親は口では働けというけれど、本心は試験に受かって欲しいと思っています。それが私を怠けさせていました。結局何の努力もせず2回目を受けて落ちました。正直死にたいと感じました。私は金喰い虫で生きてる価値もないって。親が優しく手を差し伸べてくれていることが一番自分にとって負い目になっていたのに。自分が変わらなくちゃいけないのにそのことを先延ばしにして楽な方へ楽な方へと流れようとしている。何もしないのが一番嫌だってわかっているのに!」
理桜の目や感覚からはこれがこの人の持っている闇だと感じた。ちなみに理桜の腕の鈴はマジックアイテムで理桜が定めた条件をクリアすることで相手が秘めている強い想いを引き出すことができる。
条件は相手の想いに真摯に受け止めて最終的に心を通わせるイメージに達することである。失敗することもあるがリスクが少ないためよく使っている。
その告白を聞いた理桜は和真の周囲の色が落ち着いた所で話始める。
「貴方は自分がやらなくてはならないことがわかっている。そして何が悪かったのかも今後どうしていったらよいのかもわかっている。貴方には青色(哀しみ)を持ちながら,赤と黄色の混色がある。そんな方が無理に何かに変わることはないです。辛い時には辛いというべきです。またその辛さと向き合わなくてはいけませんよ。辛いからこそ楽しくもあり悲しくもあり、感情が育っていくのです。最初は10分でもいいですから。継続こそが自分を育てる。それが今後の吉田様の運命を変える道標になると思いますよ。」
「それでは今日のお薬を処方します。少々お待ちください。」
理桜の言葉を聞いた和真は何か胸のつっかえが取れたような気がした。そして彼女に話せてよかったと心が暖まるような気がした。
調剤室に入り,理桜は和真と話した内容を思い出す。その内容と和真の主治医から渡された処方箋を照らし理桜は処方箋を変更するために主治医に連絡をした。変更の許可を得た上で理桜は調剤を始める。
処方箋に書いてあるのは,不安な気持ちから安定させる薬と眠気を促す薬の2種類である。和真の場合はそれだけでは足りず3種類目の自分を諦めない薬が必要だと思った。勿論そんな薬は現代医学において存在しない。だから理桜は最後に和真に発した言葉を思い出しながら,薬を調整した。
色と感情の魔女である理桜にとってこの調整こそが一番緊張するところである。
自分の魔力を能力に変化させて、患者に一番適する薬を調整する。今回は橙色の粉薬が出来上がった。
さらに栞を取り出して魔力を込める。栞も薬と同じように橙色になった。
橙色したその粉薬と処方箋の薬を揃え,間違えがないかを確認して,薬袋に置き再び和真の元へ向かった。
そして和真の元に着いた理桜は薬の説明を始めた。
「吉田様,今日のお薬はいつも飲まれているお薬と同じですが1つだけ増やしたお薬があります。その薬は挫けそうな気持ちになったり勇気が欲しいときにそっと支えてくれるお薬です。1日1回お飲みください。全て28日分あります。」
「それから、吉田様は読書が趣味と聞きましたので、この栞もよければお使いください。」
和真は内心、薬だけでは不安な部分があった。しかし手渡された栞を見て、挫けそうな時はこれを見て思いだそうと決心した。
その後会計を済ませ,和真は「今日はありがとうございました。今後は続けてみることから始めてみようと思います。」と発し,それに対し理桜は「はい,辛いときにはまたお話にきてください。お大事に。」
と返しました。
理桜は和真の後ろ姿を見ながら、和真の周囲が緑と青の混成であったこと。これはまだ自分の修行不足を指していた。青色は悲しみを差すが緑が混ざると不安を抱いていると解釈できる。そういう点ではまだ先輩たちには勝てない。でも中心には灰色ではなく赤と黄色が混じっていた。この点からは上出来だったと言える。
諦めないことを継続することは難しい。だからこそ、うまくストレスと共存して欲しい、栞にはそんな願いも込めていた。
今回のことで患者も私も大きくなれた気がすると思うのは私だけでしょうか。
ここまで読んでいただきありがとうございました。この物語のコメントについてありましたら頂けると嬉しいです。
投稿内容変更により内容・結末が少々違う形になってしまったことをお許しください。(7月3日編集)