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ブックメーカー;設定失格の異世界冒険記  作者: 間宮三咲
エピローグ
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エピローグ 「最後の悪足掻き」


 物語のエピローグにはなにを書けば良いのだろう。

 良いとか悪いとか、決めるのは作者だろ。

 なに言っているの? 良し悪しを決めるのは読者。なにを書くか決めるのは作者。

 それで、結局なにを書けばいいんだ?

 今まで読んでいただきありがとうございました、物語は以上で終わりです。

 いや、それ作者のあとがきだろ。登場キャラが言ってたら超メタいぞ。

 なら、「後日談。というか、今回のオチ」とか書き始めればよくないか?

 今回って……いや、全てが終わろうとしているんだが。

 案外エピローグでまとめるのは難しいものがあるな。




 なんて薄らぼけっと妄想しながらおれ、間宮三咲はパソコンに向かって一生懸命キーボードで文章を打ち込んでいる。

 まったく、まだプロローグの段階にすら入っていないのに、エピローグの妄想とか早すぎだろ。

 暗闇の中。ニート生活というのはこういった趣味を持つには最適だ。

 そう、おれは今小説を書いている。


 内容は言うまでもないな。


 異世界での冒険談だ。


 おれが経験した、奇想天外摩訶不思議な体験談だ。


 あるエッセイでは日記の延長である文章を小説とは呼ばないと記されていたので、それに則れば、今おれは小説を書いているわけではないのだが。

 しかしそんなこと言い始めれば実際ペンで原稿用紙かノートかに書き記しているわけでもないので小説を書いているとはいわない、などといった低レベルな論争になるのでよしておいて。


 夢に限らず人間は日頃物事を記憶から忘却する生き物である。

 しかしある程度記憶を保持する方法がある。これも夢について研究していた頃の実験結果なのだが。


 メモすることだ。

 物事が起きてすぐ、文章にメモとして書き表すとなかなか記憶に定着し、忘れたとしてもメモは消えないので思い出すことができなかったとしてもバックアップ代わりにはなる。


 それによっておれは今回こそは異世界での生活を忘れないでいる。


「よし。設定はこれでいいだろう。よし、さっそく本文を書き始めるぞ」


 独り言を呟いてやる気を高める。

 タイトル、ジャンル、タグ、あらすじ、作者名を決め終えた。


「しっかし、あの惨劇から抜粋してプロローグ書いて、読者は読む気になるかな……おれはならんな」


 まさかリーナの死亡シーンをプロローグに起用するとは。少し良心が痛い。

 とはいえ、あいつへの意趣返しだ。


 おれはスマホを開き、メールを確認する。


〝間宮くん。明日結愛と杏奈と一緒に買い物に行こう。……ああ、ごめん、コミュ症には少し無理があるか、女子三人と男子一人なんて……コミュ症には無理よね、コミュ症には〟


 黙れ。


 おまえが一番キャラブレしているからな?

 異世界ギャップか?

 ……ギャップという言葉の使い方、間違っているが気にしない気にしない。


 ちなみにこのメールに対するおれの返信はこうだ。


〝ははは、そんなにおれを拒絶するのなら、おれは日笠照さんを誘ってどこかドライブしてもらうことにするよ。〟


 さらにそれに対する返信はこうだった。


〝それ、誘ってるんじゃなくて、お願いしてない? とにかく、暇だったら明日の正午駅に集合して。〟


 はっ、と笑い飛ばしてパソコンの画面に向き合う。


「けれど自分のことをさぞ伝説の人物のように語るのはどうだろう」


 いや、偉人のエッセイには案外「自分こそ正しい」系があるものだし、いいだろう。


 さあ本文の書き始めも決定した。

 おれの性格を踏まえて〝どうしてこうなった。〟が良いだろう。

 キーボードに手をかざす。


 カタカタといういい音が部屋に響く。

 気づけばおれは机の端に置いてある一本のペンを見つめていた。


 そういえばやっぱりおれはおまえから勇気を貰っていたな。


 ユリア……。


 奇跡というべきか、異世界から目を覚ませば、おれは彼女から貰ったペンを握っていた。


「エゼヴィア」

 そう、おれは呟く。


 タイトルを「ブックメーカー;設定失格の異世界冒険記」。

 作者名は本名の間宮三咲。

 おれが経験した物語。

 その語り継ぐ者(ブックメーカー)はおれ。

 なら本名にすべきだろう。作者名が伏線なんて面白くないか?


 プロローグを書き終えて、いざ第一章を書き始める。


 と言って、



 おれはそろそろこの小説を書き終えようとしている。



 この小説内では今おれは猛烈に第一章を書いている最中なわけだが、おれは今この文章を書いている。

 今第一章を書いているおれはこれから小説を書き始める、と思ったら今おれは書き終えようとしている。


 おれは小説を書き始めて、おれは小説を書き終えようとしている。


 面白くないか?




 これがきっと、タイムリープ――もといループものの最後の悪足搔きと言うのだろう。













 今まで読んで頂き、ありがとうございました。

「後書きから読む派だぜ」という方は初めまして。

 どうも雪斎拓馬です。


 詳細な後書きは番外編に載せようと思うので、この場ではちょっとした〝物語〟についての説明をします。


 まず、この小説は異世界転移系の小説です。その上「テンプレートなんざさらさら乗る気はないし、予想の斜め上を目指すぜ」というぶっ飛んだ作品に仕上げたつもりです。

 そのため伏線量がえげつないことになっており、それに伴って序盤は大分面白いとはお世辞でも言えません。(ついでに、ギャグが皆無ということも加えて)


 起承転結が中々はっきりしない物語の構成になっています。

 ヴォルステックの湖編、東都編で前置き、秘境の英雄編から本編スタートです。


 アンナの正体の伏線はヴォルステックの湖編から既にしつこく登場させていて、それでも正体を明かすのは物語中盤なので「遅えよ、こちとら大分前に気づいてたよ」という方もいらっしゃるかもしてません。


 そして、その伏線であるアルルカの死体を見て、さぞ当然のようにアンナへ「アルルカを殺せ」と依頼する、また一瞬逆光の中見えた姿をユリアであったかもとさらっと言ってしまったりするガクトは、中々神経が図太い人物だと思われます。

 実は、元々ガクトはクソヘタレな主人公にする予定だったのですが、まさか、その真逆を突っ走るとは作者自身考えていませんでした。


「実は」話をすると、サテライト=サテルにするつもりも、逃避行編と逃去編を作るつもりも、支配力をコミュニティにするつもりも、古代へユリアと共にタイムスリップするつもりも、そもそもユリアに守護を渡すつもりも全くありませんでした。

 ただ、サテルの登場も、支配力は王の証ではないというオチも、ユリアと世界の終焉を迎える描写も考えていたので、成り行きで進化したのでしょう。


 最後に自己批評。

 この作品はとにかくネガティヴに執筆しました。プロローグから主人公がヒロインを殺害しているなど、私のようなもの好き以外はそっこうでブラウザバックをするでしょう。

 それと、ブルーノを倒していないことが少し気になりますね。最大の敵は全スルーなのですよ、そんなの戦闘系にあっていいのでしょうか。

 ついでに批評すれば、文章力が低いですね。普段は純文学寄りの小説を書いていて、それをそのまま投稿すると明らかに人が寄り付かないので、今作はなろう用に語彙力そのまま会話文増やして地の文わかりやすくを意識しよう――と、しすぎた結果文章力が格段に下がっていましたね。(序盤は中々それっぽかった気もするが、中盤はとても残念)


 粗方、こんなところでしょう。

 即興で書いているので支離滅裂かもしれませんが、番外編の後書きは推敲をして、詳細にこの作品の事情を駄弁れたらな、と考えています。


 これにて本編は終了です。


 今までありがとうございました。

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