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プロローグ
どうしてこうなった。
おれはただ泣きながら頭の中で鬱陶しく繰り返されるその言葉を「正義」の二文字で抑え込んだ。
今までにこの世界で幾多の死体を見てきた。残念ながら自分の死体は見ていないが、実際に何度も死んできたし、おれの前に意識を失って倒れているこの少女の死体だって何度も見てきた。
だがあくまでもおれは目撃者あるいは被害者であり、一度として殺人をしたことはない。どんなに殺されようと刃を向けられようと、何かしらを口実に逃げてはひねり潰してきた。愚者は愚者なりに強者を倒してきた、決して殺人をせずに。
だから、あえて言わせてもらおう。
どうしてこうなった。
どうしておれはついこの間まで好きだった少女にまたがり剣を突き立てているのだ。