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狂気の表現について

 人は恐怖にさらされると、狂ったような行動に出ることがあります。

 それが異常な行動であればあるほど、恐怖がそれだけ強かったのだと読者に印象付けられます。


 たとえば、主人公が「このメールを受け取ったものは一週間以内に死ぬ」という呪いのメールを受け取ったとしましょう。


 あなたなら、このあと主人公にどんな行動をさせますか?


 わたしの場合は、まず、初日は少し動揺しつつもいつも通りの行動をさせます。あえて、普段通りの行動をさせることによって、「怖いことなんて起こるわけない」「そんな馬鹿なことがあるわけないんだから忘れよう」と思い込む主人公を表現するのです。


 【俺はメールをすぐに削除した。あんなのただのいたずらだ。そうだ、冷蔵庫にビールがあったな。サッカー中継でも見ながら一杯やろう。途中、電話がかかってきて、俺はビールを片手にしばらく友人のバカ話につきあった。酔いが回るころには、俺はすっかりメールのことなど忘れて眠ってしまった】


 こんな調子です。

 次に、徐々に恐怖が侵食してくるシーンを描きます。

 忘れていたけれど、でも一度芽生えた恐怖は無意識のうちに増殖していた、というような流れです。


【ピロリンという間抜けな音とともに、またあのメールが来た。「あと3日」何のことだ。俺はまたそれをいたずらだと判断して削除する。だが、おかしなことに今度はエラーになってしまった。なぜ消えないんだ。おかしい。おかしい……ん? 「また」ってなんだ? 「今度は」ってなんだ。そうだ……俺は一度このメールを「見て」いた。夢じゃない。どうして忘れていたんだ。缶ビールを開けて一口飲む。なんの味もしない。どうしてだ? 仕事終わりのビールがうまくないなんて今まで一度も……】


 すこしずつ日常が狂気に支配されていきます。

 人間は普段通りの行動ができなくなっています。

 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚……すべての感覚がおかしくなっていくのです。


 メールの最終日ともなるとかなり追い込まれており、主人公はぶっ壊れる寸前か、はたまた正常に戻ったりします。

 なぜ正常に戻るかというと、一周まわって現実逃避という状態になるからです。


【何度も着信音が鳴る。ピロリン、ピロリン、ピロリン、ピロリン……もう百通以上届いている。そのどれもがあの、おかしなメールだ。内容は「死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死」見ているだけで、吐きそうだ。音を消そうにもエラーとなってできない。どうすればいいんだ。いったいどうすれば……】

【携帯を川に投げ捨てた。これでもう大丈夫。メールさえ届かなければ、俺はもう呪われることなんてないはずなんだ。多少不便だが、これでいい。そうこれでいいんだ】


 狂気を表す方法として「連続した文字の羅列」があります。

 この「死死死死死死……」とかもそうです。

 あと、繰り返しのことば。「これでいい」を二回繰り返すとか。

 言葉自体がおかしくなるのもいいですね。「メールってなんだっけ。メールメール……めーめーめー」とか。



 あとは、伏線として、サブリミナル効果を狙うのもいいかもしれません。

 サブリミナル効果というのは、一見意味ないと思える言葉や画像を一瞬だけ登場させることによって、のちのち大きな影響をそれを見たものに与えるというものです。


 たとえば、このメールがこのように書かれていたらどうでしょうか。


【このメール★を受け取ったものは一週間以内に死ぬ】


 この「★」マークはなんだって一瞬思いますよね。

 でも、誤字かなと思って最初は流しちゃいますよね、普通は。


 このマークが徐々に主人公の身の回りに増えていったらどうでしょうか。


 たとえば、歯ブラシの柄のところに小っちゃい黒い★マークがついていた、とか。お風呂に入っていたら、足首に★マークがついていた、とか。

 コンビニで買った弁当につけられたお箸の袋に★マークが書かれていた、とか。


 そうすると、読者はだんだん怖くなっていきませんか?

 なんだ、この★マークはって。

 そして、そういったものが見える主人公は(視覚などの感覚が)狂っていくわけです。




 ちなみに、こんな言葉をネット上で拾ってきました。


「同じ事を繰り返し行い、異なる結果を望む。それを「狂気」という」


 これはアインシュタインが言ったとされる言葉ですが、本当はアインシュタインが言った言葉ではないようです。ネット上では間違って伝えられています。


 この言葉は「狂気とは」で検索したときに見つけたものです。


 いまだにこの言葉の意味をわたしはよく解ってません。

 普通は「同じことを繰り返し行う」だけで「狂気」なはずだからです。

 異なる結果を望むかどうかはまた別の問題だと思っていました。というか、望んでいるだけまだマシ。


 たとえば、「ボールを高く投げて、下に落ちてきたらまた上へ投げる」という行動を一日中している人がいたとします。

 その人のことをみなさんはどう思いますか?

 理由があるなら納得しますか?

 「ピッチャーとしてボールをコントロールする練習をしていた」とか、「ボールの耐久性を実験していた」とか。「なんとなく投げていたら楽しくなって、だんだんそれが癒しの時間になった」とか。

 一方、理由がないならどう思いますか?

 わたしは、もし何の意味もなくしていたとしたら、その人は頭のおかしい人だと思います。

 

 「何の意味もなく同じ事を繰り返し行う。それを「狂気」という」

 こっちの方がわたしはしっくりきますね。


 最初の言葉はなんなのかと、自分なりにいろいろ考えてみた結果、「同じことを繰り返し行うことで、恐怖もしくは既存の価値観・日常から逃れようとする(異なる結果になることを望む)」ぐらいの意味に落ち着きました。




 とまあ、狂気についてはこんな感じでしょうか。

 みなさんはどんなやり方で狂気を表現されていますか。

 良ければ感想欄にて教えていただけませんでしょうか。他の方の参考にもなりますので、ぜひお願いいたします。


 次回はホラーと紙一重なものについて言及したいと思います。

 さっそく感想欄にて「狂気」のアイディアを書いてくださった方がいらっしゃいましたので、ここでご紹介したいと思います。みなさまのアイディアは、許可を取ったうえでこのあとがきに掲載していく予定です。(わかりやすいように要約、言い回しの変更などを行っています)


 ●独り言を多用します。「これで安全なんだ。安全なんだよ」と心の声で言えばいいのにわざと呟くことで内なる狂気を表現します。


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― 新着の感想 ―
[一言] 読ませていただいております。 まだ5話目ですが、引き継ぎ読ませていただこうと思います。 それで、文中の「同じ事を繰り返し行い、異なる結果を望む。それを「狂気」という」という部分の私の考えで…
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