ビックリ型とじわじわ型について
お化けの登場の仕方には、急に飛び出すのと、ひそかに忍び寄ってくるものとがあります。
前者はビックリ型。
後者はじわじわ型と仮定しておきましょう。
ビックリ型は例えばこんな感じです。
【深夜に勉強していると、ふと人の気配を感じた。振り返ってみたが、もちろん部屋には自分以外誰もいない。なんだ気のせいか……と机の上に視線を戻すと、そこには老婆の生首があった】
こんな感じでしょうか。
急に現れて驚きますよね。そのドキドキ感が重要です。いかに驚かせるかが肝心です
振りかえる、見上げる、などの視点移動で工夫してみてください。
次にじわじわ型です。
やり方次第では、こっちの方がビックリ型よりも恐怖度が高いです。
たとえばさっきの状況の前に、不吉な出来事がかさなっていたとします。
【今朝から天気は下り坂だった。夕方には雨が強まり、今はもう雷まで鳴っている。ときおり窓を叩きつけるような強い風が吹く。ガタガタ、ガタガタと窓が揺れるたび、俺は不安な気持ちになっていた。家族は、こんな時間になってもまだ誰も帰ってきていない。なぜか、携帯も通じなくなっている。誰とも連絡がとれない。家に一人きり。こんな状態で、勉強はあまり手につかなくなっていた。音楽を聞こうとイヤホンを耳につけるが、なぜか機械の調子もおかしい……雑音ばかりが聞こえる。そんなとき、誰かに見られているような妙な気配を感じた】
こうすると、先程のビックリ型につなげたときに、より怖くなる気がしませんか?
お化け屋敷なんかに何度か行ってみたことのある方ならわかると思います。
急に出てくるのはもちろん怖いのですが、血まみれの部屋があったり、赤ん坊の泣き声がどこからか聞こえてきたりと、ビクビクしながら進む「雰囲気」はとても重要です。
この要素がどれだけ仕掛けられているかによって、恐怖度は格段にあがるのです。
稲川淳二さんの怪談話でもそうですよね。
有名な、「なんか嫌だなー、怖いなー」って台詞。この台詞をいうまでにいろいろな不吉な予兆をしかけながら、十分に聞き手が怖くなっているところに、幽霊をどーんと出す。
するとものすごく怖くなるのです。
一番怖いものが来る前に、どれだけ不安な気持ちを読者に与えられるか、です。
雰囲気作りといってもいいですね。
そういう下準備をおろそかにしてはいけません。
そういった意味では、じわじわ型はホラーには不可欠だといってもいいでしょう。
基本的には、じわじわ型を仕掛けつつ、ビックリ型を効果的なタイミングで出す、といった感じでしょうか。
ぜひ、お試しになってみてください。
次回はホラー映画や小説における、生と死の対比について書こうと思います。