始まり
書いてみた。
晴天。雲の一つすらないすがすがしい青空。だがそんな中彼、灰原響夜は気だるげに屋上に居座っていた。
「たっく、何であんなクソみたいな授業受けないといけねぇーんだよ。教科書で十分だろ」
「またきょーちゃん授業を抜け出したのか」
そう嘲笑する響夜に瀬川孝太は呆れた顔をする。響夜は浮かない顔で返した。
「ああ...」
「どうしたの?」
孝太がそう返すのは無理のないことだろう。いつもなら気だるげに「うるせぇ」と返すはずだからだ。決して神妙な顔つきで「ああ...」と返すことはしない。孝太は真剣に、響夜は迷いを見せ向き合った。
風だけがビュービューと声を発している沈黙が続く中ついに響夜が理由を語りだした。
彼は昨日の夜に珍妙な夢をみたらしい。その夢とは暗闇の中光っている少女に会う。そして「世界は変えられた」といわれるというものだ。それほど気になっては居ないらしいのだがどうやら反応を見るに気にしている。
もちろん一般人なら面白い夢だったなで一笑して終了するのだが彼は思春期《中二病》の真っ只中だ。こんなことをスルーできるわけがないことは想像に容易い。
全く同じことを考えた孝太の顔が一瞬曇った後、また呆れた表情を見せた。
「気にしすぎだよ」
「気にしてない!」
「そう?」
「そうだ!」
さっきまでの気だるさが嘘のような態度に孝太は思わずニヤニヤとしてしまう。
それに気が立った響夜が抗議をしようとしたとき、遮るようにキーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン。チャイムが鳴り響いた。
「ほら、行くよ!!」
「ちょ、ちょっと待てよ」
孝太に無理矢理響夜は連れてかれて屋上をあとにした。彼らは知る由も無かったのだろう。本当に世界が変えられてしまったことを....