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短編(和もの)

今世は今世!

作者: 月鳴

※ライトなノリと勢いで書いたので深く考えてません。暇つぶし程度に気楽に読んでいただけると嬉しいです。


 私、東雲かんな16歳。一般的な花の女子高生というやつです。どうぞよろしく。


 どうやら逆トリップ的なものをしたようです。


 何を隠そう私にはこの現代日本ではない世界の記憶があるのです。ネット小説ではやりの乙女ゲームの世界に転生した、とか言うものの逆、乙女ゲーム的な世界から日本に転生を遂げたようです。


 昼休み、習慣になっている中庭の鯉に餌やりをして帰る途中、石に蹴躓いて転んだショックで思い出しました。


 前世の私は、ゲームでいうヒロインのライバル兼友人ポジションでした。


 ヒロインは世界の終末を救う勇者で、攻略対象というのでしょうか、向こうでは選ばれし守護者(ガーディアン)と呼ばれていた王族貴族や神官魔術師などから選りすぐりのイケメンたちと力を合わせて終末をもたらす魔王を倒すといったのが、まあゲームでいうあらすじですね。

 向こうではゲームというフィクションではなく現実に起きている問題だったのですが、転生した影響かどこかレンズ通したように前世が遠く感じ実感はあまりないので他人事みたいな説明ですみません。


 ヒロインが無事魔王を倒し、世界に平和が戻ったことまでは覚えているのですが、その後のことは靄にかかったようになっていて思い出せません…。

 たしか魔王の配下だった残党の魔物に襲われて、その後ろで元婚約者で選ばれし守護者(ガーディアン)だった彼が何か叫んでいたような気がするのですが………ま、こうして私がここにいるということはそのまま死んでしまったのですね。せっかく世界が平和になったというのに。

 とはいえ、その世界よりも遥かに文明が進み、より平和なこの国に転生できたことは至上の幸運なのではないでしょうか。


「かんな?どうしたの、そんなニヤニヤして」

「え、わたくしそんな顔してましてっ?」

「なにその話し方…頭でも打った?」

「あっいや違うよ、昨日やってたゲームのキャラの話し方うつっちゃったみたい!」

「どんだけハマったのよ。口調うつるなんて相当だね」

「いやーあははは」


 いけないいけない。どうやら前世の記憶が戻ったばかりで影響されているようだ。前世の私は貴族の娘で「〜ですわ」口調だったもんだからつい。


 しかしこうして、高校生というもっとも自由で楽しい生活を送っていると転生して良かったなぁと心の底から思う。前世じゃ自由に勉強もできなかったし恋だってできなかった。

 婚約者はいたけど、勇者の守護者(ガーディアン)に選ばれたことによって、戦いの前線に赴くため生死の保証が効かないという表向きの理由と彼自身が勇者を愛してしまったという裏向きの理由で一方的に解消されてしまったんだよね。

 政略で組まれた相手だったけど私は彼のことが好きで、戦いから帰ってくるまで待つ覚悟はあったのに待つことすら許されなかった。


 ──ああ、思い出した。


 私、あの時、彼を庇って死んだんだ。


 一年という長いような短いような時をかけて平和をもたらした勇者一行を国を挙げて出迎えた、あの日。


 祝勝パレードの中に突然現れた魔物の残党から彼を守ろうと、私は思わず飛び出した。


 今思えば彼らは勇者と国でもっとも優れた戦士たちだったのだから、私なんかが飛びさなくたってきっと平気だった。でも、私は脊髄反射的に飛び出していた。


 名実ともに、捨てられた相手だっていうのに。


 ………馬鹿だなぁ前世の私。


 当然私は無駄死だ。戦う力なんて持ち合わせていないのだから。


 私は、証明したかったのかもしれない。


 命を懸けて彼を守ることで、私の愛を。縋ることも足掻くこともしなかった私の幼い未熟な愛を。死を以って。なんて。


 ほんと、馬鹿だなぁ。




 ま、でももう全ては過去だ。終わったこと。もうどうにもできない。だからまあ、私の愛は不滅のモノになった……かもしれないね。


 前世の私のためにも、今世の私は、愛する人を見つけて、一方通行じゃない、愛し愛される関係になろう。そうしたらきっと前世の私も報われる気がするから。


 ………そんな相手、まだ影も形もないんだけどね。





「かんな!今日一緒に帰らないか」


 隣のクラスの幼馴染み翔太が声をかけてきた。スポーツ万能でイケメンの彼は爽やか男子だ。凡々女子としてはその輝きが目に痛い。


「あーごめん、今日は用事があって…」

「こないだもそう言ってたぞ、そんなに用事があんのかよ」


 用事なぞないが人気者のこの幼馴染みと一緒にいるとあらぬ誤解を受けいろんな被害を受けるのだ。小中で私は学んだ。何があったかは言いたくないので言わないが一言申せば『ジョシコワイ』に、尽きる。

 だからこうして時々ある下校のお誘いを辞退申し上げているのに幼馴染みは懲りもせず誘ってくる。正直迷惑だ。


「それより今日部活は?」

「今日はないから誘ってるんだ」


 きらきらしい幼馴染みはそのスポーツの才能を生かしてサッカー部のエースストライカーらしい。スポーツに興味のない私にはよくわからないが、大層モテる花形だというのはグラウンドに群がる女子の皆様の様子からして察した。


「遠野くーん、さっき生徒会長が聞きたいことあるって探してたよー!」


 クラスの女子が幼馴染みにそう声をかけた。彼は忙しい運動部に所属しているのにも関わらず学校の名誉職である生徒会にも所属しているのだ。こういうのをリア充というのだろう。ちなみに副会長らしい。どうでもいいか。


「ちっ…………………わかった、ありがとう」

「どういたしましてっ」


 小さく舌打ちをしたように聞こえたが、そのあと何もなかったようにいつもの目がくらむ必殺スマイルを出していたからきっと私の空耳だ。現にそのスマイルを食らったクラスメイトの彼女は目がハートになっている。うん、私は何も聞いていない。


「今日は諦めるけど、今度は一緒に帰ろうな!」


 恐ろしい捨て台詞を吐きながら幼馴染みは長い足を使って颯爽と教室を出て行った。私は小さくため息をついた。












 それから。図書委員で一学年上の儚げ美人系の先輩を好きになったり、同じ委員会というのを利用して(前世今世通じて)恋愛初心者なりにアピールしてみたり、そしたらそれを見てた幼馴染みが「実は俺、前世でお前の婚約者だったんだ」と暴露してきて「お前が命を懸けるほど俺を好きだったというのを知って俺もやっぱりお前が好きだったと気づいた」とか「向こうで死んでもお前が忘れられなかった」だとか色々言ってきたけど、私にとっては前世は前世、もう終わったことだから誠心誠意込めて「ごめんなさい」といえば「俺は諦めないぞお前に思い出させてやる」なんてしつこく迫ってきたんだけど、それを見てた先輩が幼馴染みをカッコよく追い払ってくれて、また惚れ直して、先輩も私を好きだって言ってくれて両想いになったりとか…………────なんて、今の私はまだ知らないのだった。

こういうのって逆トリップであってます…よ、ね?

間違っていたら申し訳ありません。


お読みくださりありがとうございました。

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