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67人中2人の行方

作者: 藤原咲黎

 5年に一度中指の第一関節の皮膚が割れ、そこから体中の皮膚が剥け始める。十六歳になった塩谷の中指は割れ初めて一週間経つので、三回目の脱皮を遂行することに決めた。一回目は六歳の時で、皮が異様に剥けるので泣き出してしまい、病院に行ったが検査しても異常はなく、どうしようもなかったのでそのままにしておいたら、いつの間にか肌がつるつるになっていて姉に羨ましがられたことがある。十歳になったときは、またか、と嫌な記憶が甦り、学校に行ってたので特に顔の皮膚は気になるので無理に剥がそうとして首から顎にかけて血まみれになった。

 気付いたのは塾の授業中だった。突然パキッと音がして周りの人がなんだなんだと一瞬こっちをみたが、それだけだった。だが僕の指は硬化し割れた部分から新しい柔らかい薄ピンク色の皮膚が覗いていた。9時に終わって、参考書やノートを片付けていると利沙がきて、「一緒に帰ろ」

「うん」

 いつもなら途中でコンビニやファミレスやらに寄っていくのだが、今日は時間がないとかなんとか言って駅で別れた。つり革を握っている手に力がだんだん籠もってきてそして最寄りの駅に着いた。


 一週間後。夜中、自分の部屋でピンセットで皮を抓む。ペリペリと剥がす。右手は完全に硬化していた。また五年後もこれをやるのかと思って作業していると、だんだん面倒くさくなってきて手芸用の鋏を使って切ると、右腕までスーッと切り込みを入れられた。それを徐々に開いていって皮を切り取った。腕は血管が浮いていて、肌も綺麗になった。火傷痕も消えた。

 胸も同様にして切ったが、乳首を斬り落としそうになった。ぶら下がっている。血も出ているがあまり気にしない。

 そうこうしているうちに夜が明けてきた。

 次の日も塾だった。帰りに利沙が裏道から行こうよ、と言うので薄暗い道を歩いて行った。塩谷が黙って歩いていると、利沙も黙っていて、そのうちまた大通りに出てしまった。

 突然利沙は立ち止まり、「今日は用があるからこっちから帰るわ」と駅とは反対方向へ行った。

 その日はもっと簡単にカッターナイフで腹を切っていた。しかし右から左へとしている時、地震が起こった。これは大きな地震だ、と思って部屋を走って出ようとしたら床が抜けた。そのまま、家が崩れた。


 塩谷が目を覚ました時、腹にカッターナイフが刺さっていた。血が大量に流れて周辺の瓦礫が赤黒く染まっていた。隣にリサがいて、「昨日とさ、変わったね。」「そうかな。」「全然違うよ。だって私の事ちゃんと見てくれてるじゃん。」「ガキだったんだよ。」「そうかもね。私も子供だった。暗闇を選んで帰るなんて。」

 リサはにっこり笑った。塩谷は首を伸ばしてキスをした。

「食事にでも行くか。」「そうだね。」

 そして二人は手を取り合って道を行く。

最後まで読んでくれて有難うございました。

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