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薔薇の姫  作者: しのみや
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結章


 暗転。

場面変わって城の外。


シャロ「あ、エコ姉さん!」

エコ 「シャロか。城から出て以来だからもう2週間ぶりか」

シャロ「いやあ、早いもんだねえ。まだ3日くらいしか経ってない気がするよ」

エコ 「あれだけ濃い1日だったからな。まだあの日のことは鮮明に思い出せる」

シャロ「リゼ姉さんとおてん……じゃなくてプリンの葬式も終わって、エコ姉さんの王位継承式があって、大分整理もついたしね」

エコ 「そう、だな……。ドリーも回復に向かっているんだろう?」

シャロ「うん、もう普通に喋れる程度には回復してるよ。今じゃ『シャロに刺されさえしなければ私が女王になっていたのにね』なんて嫌味も言えるようになったくらいで」

エコ 「はは、あいつらしいな」

シャロ「にしてもこの国も大分変っちゃうねえ。この国の暗がりになってた裏街と路地裏、そして城の地下を完全撤廃なんてさ」

エコ 「私が作る国にそう言う見えない部分があっては困るからな。やっぱり全てをさらけ出してこその正しい国の姿だよ」

シャロ「でも……ネルは見つからなかったんだよね?」

エコ 「……ああ」

シャロ「ネルもどこに行っちゃったのかねえ。地下にもネルの手掛かりはなかったならどこにあるやら」

エコ 「だが、あの地下に人がいたのは間違いない。見つかりこそしなかったが、グリーがいたことを考えてもそれは確かだ」

シャロ「そいつらとネルが一緒にいたって言うこと? じゃあそいつらを探せば……」

エコ 「可能性は0じゃないってことだ。暗がりの無くなったこの国で私から隠れられると思うなよ」

シャロ「すっかり女王の器だねえ。謙遜していたころが既に懐かしいよ」

エコ 「じゃあお互いに何か情報を掴んだらまた連絡を取ろう。いや、なくても連絡はしてきていいぞ。会いたくなったらいつでも会いに来ればいい」

シャロ「そうだね。もう半分しかいない姉妹なんだしね……」

ハッセ「それは私も入れての半分なのかな?」


 物陰から少女の姿。


エコ 「誰だか知らないが盗み聞きとは趣味が悪いな。そもそもここは一般人は立ち入ることすらできないはずだが」

ハッセ「私だってあと1年で王位継承権を得るんだから無関係じゃないよね?」

シャロ「ああ? てことは私たちの姉妹、だとでも言うのかよ」

ハッセ「そうともさ。リゼ姉さんの妹ちゃんでーっす!」

エコ 「……そう言えばあいつも妹がいるなんて言ってたな」

シャロ「はあ!? そんなこと言ってたっけ!?」

ハッセ「リゼ姉さんのことはもうどうでもいいよ。死んだ人は帰ってこないんだしー」

ハッセ「いやあ、元々は地下を維持するために継承権1位として養女になった姉さんがそれを無くしてくれるなんて思ってもいなかったよね」

エコ 「私が地下を維持するため……?」

ハッセ「だって姉さんだけが女王候補が地下で過ごすことを知らないんだよ? それをわかってて随分鈍いなあ。それ以外に何が考えられるのさ」

シャロ「待てよ! じゃあネルの女王候補殺しはエコ姉さんだけを殺す為に……?」

ハッセ「いいや、ネルの後に私が女王になるための計画だからね。結局は全員殺すつもりだったよ」

シャロ「はは……クズすぎてあきれてものも言えないねえ……」

ハッセ「ところでシャロ姉さん。ドリー姉さんも元気そうで良かったね」

シャロ「お前らが殺し損ねたせいで私が殺すところだったよ。危ない危ない」

ハッセ「今日はカチューシャが良く似合ってて可愛いかったよ」

シャロ「まあ、そりゃあうちの姉さんは世界で一番可愛いからねえ」

ハッセ「残念なことが一つあるとすれば、その姉さんとはもう会うことが出来ないことだね!」

シャロ「……おい、お前ドリー姉さまに何をした」

ハッセ「私の当初の目的を考えればすぐにわかると思うよ?」

シャロ「お前っ!」

ハッセ「私に喧嘩売るよりも早く愛しのお姉さんの元に行った方がいいんじゃないかなあ? 手遅れになっても知らないよ?」

シャロ「チッ! エコ姉さん、ごめん」


 上手側へと走って行くシャロ。


ハッセ「これであとはエコ姉さまだけだね! ようやく二人きりだ」

エコ 「ネルも死んだってことか?」

ハッセ「死んだ? いやいや、違うよお。私が殺したの。ほら、"これ"のことでしょ?」

エコ 「……! お前どこまで人の命を粗末にすれば気が済むんだ!」

ハッセ「そんなきれいごと言ってる場合じゃないんじゃないの? エコ姉さんも今命を狙われてるってわかってる?」

エコ 「こっちのセリフだ」


 お互いに拳銃を構える。


ハッセ「まあ、こうなっちゃうよね」

エコ 「なあ、最後に一つ気になっていたことがあるんだが教えてもらっていいか」

ハッセ「まったく、どっちの最期なのかな。いいよ、聞いてよ」

エコ 「結局あの死体は誰だったんだ?」

ハッセ「あー、そんなことか。君のお母さん、元女王だよ」

エコ 「そうか……。ありがとう、逆に質問はあるか?」

ハッセ「エコ姉さんは薔薇の花言葉には詳しい?」

エコ 「まあ、人並み程度にはあるつもりだが。それがどうした?」

ハッセ「七本の薔薇の花言葉ってわかるかな?」

エコ 「……それが?」

ハッセ「少し前にリゼ姉さんに会った時に、姉さんが『私たちにちょうどいいね』、って言ってたのを思い出したの。それだけ」

エコ 「あいつがそんなこと……。馬鹿だなあ……あいつ……」

ハッセ「これでお互い思い残すことはないかな?」

エコ 「ああ。……来世では良い妹になってこいよ」

ハッセ「こんな出会い方じゃなければエコ姉さんと遊んだりする未来もあったかもね」

エコ 「次会う時は……そうだといいな」


 暗転。

その後鳴り響く銃声。

雨音。

幕。

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