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薔薇の姫  作者: しのみや
2/5

承章1

 リゼ、プリンを連れ下手へ。

残った4人の間に妙なムード。


エコ 「さて、どうしたものかな……」

ドリー「貴方がそんな弱音吐くなんて珍しいじゃない。いつもの強気の態度はどうしたのかしら」

エコ 「妹を地下牢で1日監禁させなくちゃいけない状況にショックを受けてるんだよ」

シャロ「ダメな妹を持つと大変ですねえ、エコ姉さん」

ネル 「プリン姉さまはそんなことする人じゃないです!」

シャロ「王位がかかってれば人間は変わるって言うからねえ。どうだかわかんないよ?」

ネル 「それでも! プリン姉さまはそんなことする人じゃありません……! 姉さまは、明るくて、能天気に見えるけど人のことを気遣える……そんな人です!」

エコ 「そうだ。あいつがそんなことするやつじゃないのは姉妹の私たちがよくわかってるさ」

ドリー「私もプリンがそんなことするなんて思ってないわよ」

シャロ「ま、まあ私も思ってなかったけどね」

ネル 「シャロ姉さん……」

シャロ「何か言いたいことでもあるのかー? 大体、去年継承権得たばっかの癖に生意気なんだよお前は」

ネル 「ええ……。ご、ごめんなさい」

シャロ「謝るなよ、ムカつく!!」

ネル 「ええっ、じゃあ私どうすればいいんですか」

シャロ「うっさい」

ネル 「ちょっと! シャロ姉さんやめてください!」

シャロ「お前が生意気なのが悪いんだからな」

エコ 「まったく、こんな状況なのにな」

ドリー「あれでもシャロなりに場を和ませようとしてくれてるのよ」

エコ 「そう、なのか……? どう見ても素にしか見えないんだが」

ドリー「……そうなのよ」

エコ 「ふふっ、そうか」


 電話が突如鳴り響く。

一番近くにいたドリーが取った。


ドリー「あら、そんなにあわててどうか……え、お母様が? それってどういう……。ええ、わかったわ。また電話してきて。じゃあ」

シャロ「ドリー姉さま? お母様がどうかされたんですか?」

ドリー「……今朝起きたら、屋敷の中からいなくなっていたらしいの」

シャロ「その言い方だと買い物に行かれた、なんてことじゃないみたいだね」

エコ 「朝起きてからってもう15時だぞ。何かあったのか心配になるな」

ドリー「ジレったいわね、正直に言いなさいよ。あの死体は――――」

エコ 「黙れ!! そんなわけがあるか……。そんなことが……!」

シャロ「エコ姉さん、いいんだよ。私でさえなんとなく予想はしてるから」

エコ 「なんでお前たちそんなに冷静なんだ! そんな……お前たちの母親が……!」

ドリー「そりゃあ考えるのも嫌よ。けど、それと同じくらいプリンとリゼを早く解放してあげたい気持ちもあるの」

エコ 「ドリー……」

ネル 「あ、あれ? でもあの死体がお二人のお母様と言うことは有り得ないのではないですか? ドリー姉さんのお母様はもう王位継承権がないですから薔薇のタトゥーだって消されてるはずですし」

エコ 「そうか、確かに王位継承権が無くなったドリーの母親の薔薇のタトゥーはもう反転のタトゥーで打ち消されてる!」

ドリー「それもそうね……。はあ、疲れすぎて落ち着いた思考が出来なかったみたいだわ。反省ね」

シャロ「けどこれでお母様も、リゼ姉さんのお母様もしたいじゃないってことがわかったし素直に喜ぼうよ!」

エコ 「まだ見つかってないのが不安だが……。まあ、時間の問題かな」

ドリー「ホっとしたらなんだか疲れて来たわ。ちょっと横になって来るわ」

エコ 「1人で行動して襲われたりしたらどうするつもりだ! 横になるだけならここでいいだろう」

シャロ「大丈夫だよ、私も一緒に下に行く! これなら文句ないでしょ?」

エコ 「そう、だな。お前らがそれでいいなら、それでいいよ」

ドリー「心配しすぎなのよ、エコは。長丁場になりそうだしエコとネルも休みを取っておいた方が良いわよ。じゃあね」

シャロ「まったねー!」


 ドリーとシャロ上手へ。

部屋に残された二人。


ネル 「エコ姉さまは……誰が犯人だと思ってるんです?」

エコ 「ネル、その聞き方は好きじゃないな」

ネル 「エコ姉さまならなんとなく察しはついてるんじゃないですか? エコ姉さまほど頭の良い人を私は知りませんから」

エコ 「やめろ。私はそんなに出来た人間じゃない」

ネル 「でもエコ姉さまなら!」

エコ 「やめろと言ってるだろ!」

エコ 「……急に怒鳴って悪かった。私も連日の話し合いに加えてこの事件だ。結構疲れてるんだよ」

ネル 「ごめんなさいエコ姉さま……。けど、私、怖いんです。誰が殺人犯かもわからない状況でいるのが。疑心暗鬼になるのが」

エコ 「確かに周りの人間が怖いのはわかるが、私たちは姉妹だ。私とプリンだけじゃない。ドリーやリゼ達も血は繋がっていないが言えネルの姉なんだ、頼ってくれても」

ネル 「違うんです! 私が怖いのは……。姉さまたちを疑う、自分の弱さが怖いんです……」

ネル 「私は姉さまたちを信じたい。けど、信じられない自分も確かにいるんです……。お姉さまたちを真っすぐとみられない私が、いるんです」

エコ 「ネル、大丈夫だよ」


 ネルをそっと抱き寄せるエコ。


ネル 「恥ずかしいです、エコ姉さま」

エコ 「恥ずかしいものがあるか。お前は私の妹なんだ、いつだって、いつまででもこうして甘えてくれていいんだよ」

ネル 「……この国のみんなもこんな風になれればいいのに、どうしてこうはならないんでしょうか」

エコ 「人と人とがわかりあうのは難しいんだよ。だからと言って分かり合えない人を責めるのは筋違いだ。分かり合えない人にも手を伸ばし続ければいつか届く。いつか」

ネル 「やっぱりエコ姉さまは凄いです。私なんかじゃ絶対に叶わないくらい。けど、お姉さまはお姉さまじゃ――――」

プリン「きゃああああああ!?」


 下手より悲鳴。

驚いて逃げるネルと、声とネルの間に立つエコ。

下手からドリーが現れる。


ドリー「ちょっとこの悲鳴はなに!? まさかあのおてんば姫になにかあったの!?」

ネル 「リゼ姉さま、大丈夫でしょうか……?」

エコ 「行くぞネル! プリンとリゼが心配だ!」

ドリー「待って、誰が残るか決めてか」

エコ 「妹の悲鳴が聞こえたんだぞ! そんなゆっくりしてられるか!」

ドリー「ちょっと!?」


 下手へと走って行くエコとネル。


ドリー「まったく、自分の危険よりも妹を助けに行くことを優先するなんて本当に出来た人間ね。嫉妬しちゃうわ」

シャロ「ドリー姉さんでも嫉妬なんてするんだね」

ドリー「シャロいたの? 部屋にいなかったみたいだけどどこに行ってたの?」

シャロ「んー、まあちょっとね」

ドリー「へえ、言いたくないならそれでいいけど。ねえ、シャロ。

シャロ「なに姉さま」

ドリー「ネルとプリンって仲が悪かったかしら?」

シャロ「おてんば姫とチビ? やだなあ、あの二人の仲が悪いわけないじゃん。いつでもお気楽に仲良くしてたよ」

ドリー「そう、よね……。じゃあさっきのは……?」

シャロ「どうしたんですか、ドリー姉さま。あのチビがなんかしでかした?」

ドリー「……ううん、なんでもないわ。シャロには言ってもわからないもの」

シャロ「なんだそれ酷いなあ。私だってばかじゃないんだよ!?」

ドリー「はいはい、わかってるわ」

シャロ「頭撫でられても馬鹿にされてるようにしか思えないんだけど!?」

ドリー「シャロ、私は何があってもあなたのこと信じてるから。大丈夫よ」

シャロ「なんですかそれ。私もお姉さま信じてますよーってね」

ドリー「だから……ね?」


 暗転。

エコ一人にスポット。


エコ 「悲鳴の主であるプリンの元へと駆けて行った私とネルの前にあったのは既に物言わぬ死体となってしまったリゼの姿だった。リゼの死体に怯えて部屋の隅で小さくなっていたプリンを抱きながら私は嘆いた。

    どうして私たち姉妹がこんな目に合わなくちゃいけないんだ! どうしてリゼが死ななくてはいけなかったんだ! 怯えてしまっている妹の暖かな手を握りながら、逆の手でリゼに触れると陶器の人形のように冷たかった。

   同じ暖かさを持っていた人間が一時間もしないうちにこんなに冷たくなるなんて私は信じられなかった。このときに私は、私たちは初めて知ったんだ。人が死ぬということを」

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