白衣の男
わたしは写真に妻と一緒に写っていた男の職場へと訪ねた。そこは病院だった。
病院でわたしは、白衣を着ているその男を見つけた。
「あの…」
「はい」
「あなたこのあいだ、私の妻と一緒にいただろ…」
「失礼ですがあなたは…?」
「掛川だよ!掛川真世の夫の…」
「あ…あなたが…」
その男はわたしが夫と名乗ると、気まずそうな顔をした。
「申し訳ありませんでした…」
その男はいきなり私に頭をさげ、謝罪した。
「真世さんの意思に反しても、あなたにお知らせしたかった…」
「…?なにを言っているんだ?あんた…」
「どうぞこちらへ…」
その男が私を案内したのは、霊安室だった。そこには変わり果てた妻の姿があった。
「…どういうことだよ…?これは…」
「…」
「どういうことだって聞いてるんだよ!あんた、わたしの妻になにかしたのか!?」
「…いえ、なにもできませんでした…」
「…は?」
白衣を着たその男は、病院の医師だった。妻は持病があり、余命が残りわずかだった。しかしそのことはわたしに言わなかった。見つからないように家から遠い病院に通っていた。写真に一緒に写っていたこの男は、妻を最期まで見守っていた立派な医師だった。
「真世さん…最期はあなたの悲しむ姿をみたくないと…あなたの見えない場所で最後を迎えたいとおっしゃってました…」
「…そんな…」
「これを…あなたに…」
男は、わたしに便箋を手渡した。